サムの息子法
別名:サンオブサム法
英語:Son Of Sam law、New York's "Son of Sam" law
米国ニューヨーク州で制定された州法(New York State Executive Law)§ 632-aの通称。犯罪者が自身の犯罪歴を披瀝することによって(ビジネス化して)利益を得ることを禁じるもの。
「サムの息子」という名は、同法成立の契機となったニューヨークの連続(猟奇)殺人事件の犯人が名乗った通り名に由来する。この男は1970年代後半に複数名を殺害して逮捕された。程なく、とある出版社がその犯行経緯を手記として出版しないかと男に持ちかけ、その対価として多額の報酬を提示した。このことが明るみに出たことで大きな議論がわき起こった。サムの息子法はこの騒動に対応するかのようにして制定されている。
日本にはサムの息子法に該当する法律は特にない。しかしながら、2015年半ば現在、いわゆる神戸連続児童殺傷事件を1997年に起こして服役していた男の手記が刊行されたことで「犯罪歴のビジネス化」の是非を問う議論が一躍盛んとなり、サムの息子法にも注目が集まっている。
関連サイト:
Relates to preventing defendants from making any profit from their crimes - New York State Senate
サムのむすこ‐ほう〔‐ハフ〕【サムの息子法】
サムの息子法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/23 20:02 UTC 版)
サムの息子法(サムのむすこほう、Son of Sam law)は、犯罪者が自らの事件の暴露で得た収入は被害者救済に充てなければならないとする法律。
犯罪加害者が自らの犯罪物語を出版・販売して利益を得ることを阻止する目的で、1977年にアメリカ合衆国ニューヨーク州で制定された。
概要
この法は、犯罪活動の結果として直接取得した金銭を押収することを意図している。犯罪者が自らの事件を商業的に利用して得た金銭を奪うことにより、犯罪の収益性を除去するため、また、犯罪者が自分の罪の悪評を活用できないように作られている。多くの場合、書籍出版や映画化などから得た収入は犯罪被害者への補償となる。この法が制定されたきっかけは、出版社が「サムの息子」ことデビッド・バーコウィッツに多額の報酬を提示して手記のオファーを出したことが問題視されたためである。以降、数多くの改定を重ねて、ニューヨーク州は2001年に再び採択した。同様の法律は他の多数の州で制定されている[1]。
1978年の法は連邦最高裁でアメリカ合衆国憲法修正第1条に反すると違憲判決を受けた。そこで1992年に判決にそった改正を行っている[2]。
犯罪者による罪のビジネス化を防ぐ目的と同時に被害者・遺族救済のための法である。被害者への補償に関する法では、州法のほかにアメリカ連邦法にVOCAがある。
日本でも同様の法を望む声が出ている[3]。日本政府はサムの息子法をモデルとした法律の制定について「憲法の保障する表現の自由等の観点から、慎重な検討が必要」としている[4]。弁護士の間でも賛否が分かれている[5]。
日本で犯罪加害者が自らの犯行を本として出版した主な例
- 中保喜代春『ヒットマン―獄中の父からいとしいわが子へ』(講談社、2001年) - 著者は宅見若頭射殺事件の実行犯。犯行の計画から実行、逃亡時のことまで詳細に綴っている。
- 武まゆみ『完全自白 愛の地獄』(講談社、2002年) - 著者は本庄保険金殺人事件の実行犯。自白した犯行の顛末を詳細に綴って出版している。
- 元少年A『絶歌』(太田出版、2015年) - 神戸連続児童殺傷事件の犯人である元少年Aの著書。日本でサムの息子法と同様の法の制定を望む声が上がるきっかけになった。
- 市橋達也『逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録』(幻冬舎、2011年) - 著者はリンゼイ・アン・ホーカー殺害事件の実行犯。
脚注
- ^ “Court Revisits 'Son of Sam' Law”. ABC News. June 11, 2015閲覧。
- ^ “酒鬼薔薇事件、元少年Aの出版 サムの息子法の過去と現在を考える”. wedge. p. 2
- ^ “「元少年A」の印税、差し押さえろ 日本にも「『サムの息子』法」制定望む声”. J-CASTニュース (June 12, 2015). June 12, 2015閲覧。
- ^ 衆議院議員初鹿明博君提出日本版「サムの息子法」制定に関する質問に対する答弁書
- ^ “「絶歌」出版で注目の「サムの息子法」日本でも制定すべき? 弁護士たちの賛否両論”. 弁護士ドットコム
関連項目
- デビッド・バーコウィッツ - 連続殺人者。ニューヨーク州で有罪判決を受けた。
- サムの息子法のページへのリンク