サイクルを含み得る選好に対する中村の定理の変種
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/24 05:33 UTC 版)
「中村ナンバー」の記事における「サイクルを含み得る選好に対する中村の定理の変種」の解説
このセクションでは「非循環的な選好」という通常の仮定を捨てることにする。そのかわり与えられた「アジェンダ」(agenda, 個人のグループが当面直面している「機会集合」) 上で極大要素を持つような選好をここでは考える。単純な考察にするため、ここでは集合 X {\displaystyle X} 自体をアジェンダとみなすことにする。選択肢 x ∈ X {\displaystyle x\in X} が選好 ≻ i p {\displaystyle \succ _{i}^{p}} に関して「極大 (要素) である」(あるいは ≻ i p {\displaystyle \succ _{i}^{p}} が「極大要素 x {\displaystyle x} を持つ」) とは、 y ≻ i p x {\displaystyle y\succ _{i}^{p}x} となるような y ∈ X {\displaystyle y\in X} が存在しないことである。もし選好が選択肢全体の集合上で非循環的であれば、その選好は任意の「有限」部分集合 X {\displaystyle X} 上で極大値を持つ。 中村の定理の変種 (variant) を述べる前に、「コア」を強めた解概念を導入しておく。たとえある提携が存在してそれに属するすべての個人 i {\displaystyle i} が選択肢 x {\displaystyle x} に「不満を持っている」(各 i {\displaystyle i} がなんらかのべつの選択肢 y i {\displaystyle y_{i}} を x {\displaystyle x} より好むの意) としても、選択肢 x {\displaystyle x} がコア C ( W , p ) {\displaystyle C(W,p)} には属してしまうことがある。次の解概念はそのような選択肢 x {\displaystyle x} を除外するものである: 選択肢 x ∈ X {\displaystyle x\in X} が「多数不満なきコア」(core without majority dissatisfaction) C + ( W , p ) {\displaystyle C^{+}(W,p)} に属するとは、任意の i ∈ S {\displaystyle i\in S} にとって x {\displaystyle x} が極大でない ( y i ∈ X {\displaystyle y_{i}\in X} が存在して y i ≻ i p x {\displaystyle y_{i}\succ _{i}^{p}x} となる) ような勝利提携 S ∈ W {\displaystyle S\in W} が存在しないことである。 以下の結果は容易に示すことができる: C + ( W , p ) {\displaystyle C^{+}(W,p)} は各人の選好の極大要素集合だけに依存し、それらの集合のユニオンにふくまれる。また、任意の選好プロファイル p {\displaystyle p} について、 C + ( W , p ) ⊆ C ( W , p ) {\displaystyle C^{+}(W,p)\subseteq C(W,p)} となる。 中村定理の変種 (Kumabe and Mihara, 2011, Theorem 2). W {\displaystyle W} をシンプルゲームとする。以下の3つのステートメントは同値である: # X < ν ( W ) {\displaystyle \#X<\nu (W)} ; 極大要素を持つ選好からなる任意のプロファイル p {\displaystyle p} に対して多数不満なきコア C + ( W , p ) {\displaystyle C^{+}(W,p)} が非空となる; 極大要素を持つ選好からなる任意のプロファイル p {\displaystyle p} に対してコア C ( W , p ) {\displaystyle C(W,p)} が非空となる。 注意 もとの中村の定理と異なり、この変種定理において X {\displaystyle X} が有限であることは、任意のプロファイル p {\displaystyle p} にたいして C + ( W , p ) {\displaystyle C^{+}(W,p)} あるいは C ( W , p ) {\displaystyle C(W,p)} が非空となるための必要条件ではないことに注意。すなわち無限個の選択肢を持つアジェンダ X {\displaystyle X} 上でも、不等式 # X < ν ( W ) {\displaystyle \#X<\nu (W)} さえみたせば、それらコアに属する要素が存在する。 定理の 2, 3 中で「極大要素を持つ選好からなる任意のプロファイル p {\displaystyle p} にたいして」を「極大要素をひとつだけ持つ選好からなる任意のプロファイル p {\displaystyle p} にたいして」あるいは「極大要素を持ち線形順序である選好からなる任意のプロファイル p {\displaystyle p} にたいして」と言い換えても、得られたステートメントは正しい (Kumabe and Mihara, 2011, Proposition 1)。 もとの中村の定理と同様、この変種定理は B {\displaystyle {\mathcal {B}}} -シンプルゲームに拡張できる。さらにこの定理は「中村ナンバー」の概念を拡張することにより「勝利提携の族」 W ′ ⊆ B ′ {\displaystyle W'\subseteq {\mathcal {B}}'} にも拡張できる (ステートメント 1, 2 が同値で、それらから 3 が導ける)。
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