サイイドの役割、特権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/21 01:21 UTC 版)
各地に分散するサイイドの公的な長であるナキーブはサイイドの系譜を管理し、サイイドを詐称する者を排除する役割を担っていた。ナキーブにはサイイドたちの行動を監督する役割があり、独自の法廷を有していた。サイイドの血統の認定にあたっては、当のサイイドが所有する系譜、系譜学者の見解、同行者の証言が証拠として使用され、中でも口頭の証言が重要視されていた。血統の審査の過程でサイイド偽称者と見なされた人間は頭を剃られてサイイドの印である髪の房を切り落とされ、額に焼きごてを当てられて処罰された。 一般の人々にはサイイドに敬意を表すことが求められ、サイイドには血統にふさわしい謙虚な振る舞い、血統を汚さない行為が義務付けられている。ムハンマドの子孫であるサイイドは他のムスリムから尊敬を受けるだけでなく、免税、刑罰の軽減などの様々な特権にあやかることができた。時には貧しいサイイドの救済が、ワクフ(寄進財産)の用途に設定されることもあった。ティムール朝に確立されたサドル職はイスラーム指導者の最上位層に置かれ、サイイドのみが就任する資格を有していた。しかし、サイイドに給付される年金の額は通常少額であり、免税特権も常に認められているわけではなかった。また、年金や免税による国家財政の負担を軽減するため、ナキーブなどを中心とした国家的な偽称者の摘発がしばしば行われた。 サイイドの特殊性、優越性は常に受け入れられていたわけではなく、サイイドと政治的に対立する人間、ムスリムの平等を主張する人間からは否定されることもあった。
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