クレヨンの青が熊野へはみだせり
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伊勢神宮(内宮)から熊野速玉大社を結ぶ参詣道、熊野古道は、2005年に世界遺産に登録された。美しい日本の原型がここにある。作者の大西健司は、その大きな自然に育まれた伊勢出身在住の俳人である。 馴染み親しんだ土地だから書ける俳句もある。この句はそんな力強さに満ちている。熊野にはみ出す程の「青」は、澄みきった空の青さだろうか、それとも作者の気持ちであろうか。いや、これはそのどちらも含んでいて心地良い。熊野という大地に包まれている感慨だろう。 この句は無季の句。熊野古道という「世界遺産」を楯にしての自然保護のスローガンは決して無い。しかし、失いかけた自然との共存を一心に計るのも俳句の一つの使命かも知れない、と思わせてくれる一句。特に異常気象の昨今を想う時、その気持ちは大きい。日本は四季のある美しい国なのだ。改めて私は思う。 それとは別に、多分初めて「お絵描き」の時間に持ったクレヨンは、暖かで柔らか。無垢なイメージがある。そして、その「青」が大きくはみ出してしまった作者の熊野への想いは豊かである。何も言わない、何も問わない、何も請わない。その土地に住む者にしか実感出来ない作品が、その土地以外に住む者へ伝える作品は、伝統や季語を超えて普遍であろう。 一度、熊野古道を歩いてみたい。この句に出合った私はそう思った。 |
評 者 |
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備 考 |
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