オピオイドアゴニスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/19 16:01 UTC 版)
「β-エンドルフィン」の記事における「オピオイドアゴニスト」の解説
β-エンドルフィンはオピオイド受容体のアゴニストであり、μ-オピオイド受容体に選択的に結合する。μ-オピオイド受容体の主要な内因性リガンドであることが示唆されており、アヘンから抽出された化学物質(モルヒネなど)が鎮痛作用を発揮するのもこの受容体を介してである。β-エンドルフィンはμ-オピオイド受容体に対する内因性オピオイドの中で最も高い結合親和性を示す。オピオイド受容体はGタンパク質共役受容体の一種であり、β-エンドルフィンや他のオピオイドが結合すると細胞内のシグナル伝達カスケードが誘導される。しかし、β-エンドルフィンのN末端のアセチル化は神経ペプチドを不活性化し、受容体への結合を妨げる。オピオイド受容体は中枢神経系全体と神経、非神経由来の末梢組織に分布している。水道周囲灰白質(英語版)、青斑核、吻側延髄腹内側部(英語版)に高濃度で存在する。 電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)は神経細胞の脱分極(英語版)を媒介する重要な膜タンパク質であり、神経伝達物質の放出に大きな役割を果たす。エンドルフィン分子がオピオイド受容体に結合すると、Gタンパク質は活性化されてGαとGβγサブユニットへと解離する。GβγサブユニットはVDCCの2つの膜貫通ヘリックスの間の細胞内ループに結合し、チャネルを阻害して神経細胞へのカルシウムイオンの流入を妨げる。細胞膜にはGタンパク質共役内向き整流カリウムチャネル(英語版)(GIRK)も埋め込まれており、チャネルのC末端にGβγまたはGα-GTPが結合することで活性化されて神経細胞からカリウムイオンが排出される。カリウムチャネルの活性化とその後のカルシウムチャネルの不活性化によって、細胞膜の過分極(英語版)が引き起こされる。神経伝達物質の放出が起こるためにはカルシウムイオンの必要不可欠であるため、カルシウムイオンの減少は神経伝達物質の低下を引き起こす。このことは、グルタミン酸やサブスタンスPなどの神経伝達物質を神経細胞のシナプス前終末から放出することができなくなることを意味している。これらの神経伝達物質は痛覚の伝達に重要であり、β-エンドルフィンはこうした物質の放出を減少させることで強い鎮痛作用を示す。
※この「オピオイドアゴニスト」の解説は、「β-エンドルフィン」の解説の一部です。
「オピオイドアゴニスト」を含む「β-エンドルフィン」の記事については、「β-エンドルフィン」の概要を参照ください。
- オピオイドアゴニストのページへのリンク