N末端のアセチル化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/08 05:53 UTC 版)
真核生物のタンパク質のN末端にあるαアミノ酸はアセチル化されることが多い。実に酵母のタンパク質の40-50%、ヒトのタンパク質の80-90%がアセチル化されており、これは進化を通じて保存されている性質のようである。N末端のアセチル化は、N-α-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)の触媒作用によってアセチルCoAからアセチル基を転移させる。N-α-アセチルトランスフェラーゼは酵母で最も研究が進んでいるが、酵母では3つの複合体NatA/B/Cが存在する。これらは基質に特異的で、リボソームと協調してタンパク質の翻訳と同時にアセチル化を行っていると考えられている。 ヒトでは複合体はNatAの1つだけで、既に同定されている。NatA複合体のサブユニットは、β-カテニン経路など癌に関連したプロセスとも共役している。また甲状腺乳頭癌や神経芽細胞腫の患者ではこの酵素が過剰発現していることも発見された。 このように、進化の過程で保存され、生物間に広く分布した修飾様式ではあるが、タンパク質のN末端のアセチル化の生物学的な役割はまだ良く分かっていない。しかしトロポミオシンやアクチンには、その機能の発現にアセチル化は不可欠で、アクチンはNatBのアセチル化を受けないとアクチンフィラメントを形成できないということなどが分かってきた。
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