イデアルの生成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 08:06 UTC 版)
「イデアル (環論)」の記事における「イデアルの生成」の解説
R を(必ずしも単位的でない)環とする。R の空でない左イデアルの族の交わりはまた左イデアルになる。R の任意の部分集合 X に対し、R の X を含む任意のイデアル全ての交わり I はやはり X を含む左イデアルであって、また明らかにそのようなイデアルの中で最小である。このイデアル I を X によって生成された左イデアルと呼ぶ。左イデアルの代わりに右イデアルもしくは両側イデアルをそれぞれ考えることにより、それぞれ同様の概念が定義される。 R が単位的ならば、R の部分集合 X が生成する左、右、両側イデアルは内部的な演算によって記述することができる。即ち、X の生成する左イデアルは { r 1 x 1 + ⋯ + r n x n ∣ n ∈ N , r i ∈ R , x i ∈ X } {\displaystyle \{r_{1}x_{1}+\dots +r_{n}x_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,r_{i}\in R,x_{i}\in X\}} によって与えられる。実際これが左イデアルを成し、これらの元が X を含む任意のイデアルに属することは明らかであるから、確かにこれは X の生成する左イデアルである。同様に X の生成する右、両側イデアルはそれぞれ { x 1 r 1 + ⋯ + x n r n ∣ n ∈ N , r i ∈ R , x i ∈ X } , {\displaystyle \{x_{1}r_{1}+\dots +x_{n}r_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,r_{i}\in R,x_{i}\in X\},} { r 1 x 1 s 1 + ⋯ + r n x n s n ∣ n ∈ N , r i ∈ R , s i ∈ R , x i ∈ X } {\displaystyle \{r_{1}x_{1}s_{1}+\dots +r_{n}x_{n}s_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,r_{i}\in R,s_{i}\in R,x_{i}\in X\}} によって与えられる。 規約として、0 は0 項からなる和と見做すことにより、イデアル {0} は空集合 ∅ の生成する R のイデアルと考える。 R の左イデアル I が R の有限集合 F によって生成されるならば、イデアル I は有限生成であるという。有限集合で生成される右イデアル、両側イデアルについても同様である。 生成系 X が R の適当な元 a のみからなる単元集合 {a} とすると、X = {a} の生成する各イデアルは簡単に R a = { r a ∣ r ∈ R } , {\displaystyle Ra=\{ra\mid r\in R\},} a R = { a r ∣ r ∈ R } , {\displaystyle aR=\{ar\mid r\in R\},} R a R = { r 1 a s 1 + ⋯ + r n a s n ∣ n ∈ N , r i ∈ R , s i ∈ R } {\displaystyle RaR=\{r_{1}as_{1}+\dots +r_{n}as_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,r_{i}\in R,s_{i}\in R\}} と言う形に書くことができる。これらは a によって生成される左、右、両側の主イデアル(単項イデアル)と呼ばれる。a の生成する両側イデアルを簡単に (a ) と書くことも広く行われている。 上で述べたことは、単位的でない環 R に対しては少しく変更が必要である。X の元の有限積和に加えて、任意の自然数 n と X の元 x に対して、x の n-重和 x + x + … + x および (−x) + (−x) + … + (−x) を考えるのである。単位的環 R に対してはこの余分な仮定は過剰な条件になる。 整数環 Z はその任意のイデアルがただ一つの数で生成され(したがって Z は主イデアル整域)、主イデアル nZ の生成元は n または −n のちょうど二つである(その意味ではイデアルと整数との差異はこの環ではほぼ分からない)。任意の整域において aR = bR は、適当な単元 u が存在して au = b を満たすことを意味し、逆に任意の単元 u に対して aR = auu−1R = auR が満たされる。故に可換主イデアル整域において、主イデアル aR を任意の単元 u に対する au が生成することができる。Z の単元は 1 と −1 の二つのみであるから、これは Z の場合をも含んでいる。
※この「イデアルの生成」の解説は、「イデアル (環論)」の解説の一部です。
「イデアルの生成」を含む「イデアル (環論)」の記事については、「イデアル (環論)」の概要を参照ください。
- イデアルの生成のページへのリンク