イデアルと指標
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/10 01:11 UTC 版)
A を C 上の単位的「可換」バナッハ環とする。A は単位元を持つ可換環であるため、A の各非可逆元は A の適当な極大イデアルに属す。A 内の極大イデアル m {\displaystyle {\mathfrak {m}}} は閉であるため、 A / m {\displaystyle A/{\mathfrak {m}}} は体であるようなバナッハ環であり、ゲルファント=マズールの定理から、A のすべての極大イデアルの集合と A から C へのすべての非ゼロな準同型の集合 Δ(A) の間には全単射が存在することが分かる。集合 Δ(A) は A の構造空間(英語版)あるいは指標空間(character space)と呼ばれ、その元は指標(character)と呼ばれる。 指標 χ は A 上の線型汎関数で、乗法的 χ(ab) = χ(a)⋅χ(b) かつ χ(1) = 1 を満たす。指標の核は閉であるような極大イデアルであるため、すべての指標は自動的に A から C への連続写像となる。さらに、指標のノルム(すなわち作用素ノルム)は 1 である。A 上の各点収束の位相(すなわち、A* の弱-∗ 位相より導かれる位相)が備えられることで、指標空間 Δ(A) はコンパクトなハウスドルフ空間となる。 任意の x ∈ A に対し σ ( x ) = σ ( x ^ ) {\displaystyle \sigma (x)=\sigma ({\hat {x}})} が成立する。ここで ^x は x のゲルファント表現(英語版)、すなわち ^x(χ) = χ(x) で与えられる Δ(A) から C への連続関数である。上述の式において、^x のスペクトルは、コンパクト空間 Δ(A) 上の複素連続関数の環 C(Δ(A)) の元としてのスペクトルである。明らかに σ ( x ^ ) = { χ ( x ) : χ ∈ Δ ( A ) } {\displaystyle \sigma ({\hat {x}})=\{\chi (x):\chi \in \Delta (A)\}} が成立する。環として、単位的可換バナッハ環が半単純(すなわち、ジャコブソン根基がゼロ)であるための必要十分条件は、そのゲルファント表現が自明な核を持つことである。そのような環の重要な一例は、可換な C*-環である。実際、A が可換な単位的 C*-環であるなら、ゲルファント表現 A と C(Δ(A)) の間の等長 ∗-同型となる。
※この「イデアルと指標」の解説は、「バナッハ環」の解説の一部です。
「イデアルと指標」を含む「バナッハ環」の記事については、「バナッハ環」の概要を参照ください。
Weblioに収録されているすべての辞書からイデアルと指標を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
全ての辞書からイデアルと指標 を検索
- イデアルと指標のページへのリンク