サハリン、千島、北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国東北部、シベリア東部などに分布しており、温帯北部、亜寒帯に見られます。最近では非常に少なくなり、とくに大きいものを見る事は稀になりました。原木の市場に並べられているものをみても、丸太は凸凹で、細く、短いものがほとんどで、他の樹種に比較すると大変見劣がします。 イチイは、古くから宮廷で高い地位にある人々が用いる笏(衣冠束帯に着飾ったひとが手にする細長い板)の材料として良く知られています。高価なため、床柱のような用途も有りますが、むしろ、飛騨高山の一刀彫りのような小さな細工物として目に触れることが多いでしょう。 ■木材 心材と辺材の色の差は非常にはっきりしています。前者の色は濃赤褐色で、後者は狭く、淡色です。気乾比重は0.41-0.48(平均値)-0.51とされています。一般に成長が悪いので、年輪の幅は非常に狭くなっています。老齢のものは木理が通直になっています。保存性の高い木材です。切削がしやすいのも特徴の一つです。 ■用途 上述したように丸太が小さく、形も悪く、節が多いので、製材の歩留まりが悪く、板や柱として使われることは少なく、大きいものは丸太の形で床柱として使われるのが、せいぜいで、あとは細工物として使われるのが主でしょう。かっては、鉛筆の軸にされたこともあります。 |