アブラハム・ナタンの思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 00:49 UTC 版)
「シャブタイ派」の記事における「アブラハム・ナタンの思想」の解説
シャブタイ・ツヴィは、当時もてはやされていたラビ・イツハク・ルリアのカバラではなく、それ以前に成立していた古典的なカバラを愛好し、『ゾハル』など古い書物から多大なインスピレーションを受けている。にもかかわらず、シャブタイ派の教義はおおむねルリアのカバラ理論に立脚している。その理由は簡単で、シャブタイ派の理論を形成したのは同派の預言者、兼スポークスマンで、ルリアのカバラに造詣が深いアブラハム・ナタンだったからである。ルリアのカバラには救世主待望の緊張感、切迫感がみなぎっており、救済に関する叙述は詳細でありながら難解を極めているのだが、それはナタンのカバラの特徴でもある。 ナタンは他にも、ラビ・モーセ・コルドベロ(1522年〜1570年)の著作からも多くを学んでおり、彼のカバラ理論は先人たちの思想、方法論を再構築したものである。なかでも明確にしている点は、シャブタイ・ツヴィこそが、ユダヤ人が待望した真の救世主であるということに他ならない。その真偽はともかく、カバリストの多くは、シャブタイ派の教義がすべてのカバラの世代を通じて見ても重要な教義のひとつであったことを認めている。 ナタンは大勢の弟子と共にガザの海岸を散歩するのを日課としており、そこで救世主の観念を中心としたカバラの仔細を弟子に教えていた。彼の著作には、『セフェル・ハ=ベリアー』、『シャアレー・ハ=ダアト』、『デルシュ・ハ=タンニニーム』(『ゾハル』の注釈書)などがあるのだが、それらの書物において、ルリアのカバラを継承しつつも独創性を失わない彼の思想が見て取れる。ナタンの教義で比較的大部を占めているのは、救世主たるツヴィと預言者たる彼自身の魂の遍歴である。それによると、両者の魂は天地創造の日より転生を繰り返しているのだが、救済の日の到来まで続けられるその運動のなかにこそ、全宇宙的な意義が秘められているという。
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