躑躅
つつじ(躑躅)とは、ツツジ科ツツジ属の植物である。枝分かれが多く、枝や葉にねばねばした毛があるのが特徴である。春から夏にかけて、枝先に白色や紅色、紫色の花を咲かせる。花の形は漏斗状で、先は五つに分かれている。おしべは十本程度。
古くは「万葉集」に、「水伝ふ磯の浦みの岩つつじもく咲く道をまたも見むかも」(巻二・185番)などと詠まれている。ヤマツツジ・ミツバツツジなど野生種も数十種存在しているが、江戸時代、庭園に植える植物として人気を博したことにより、園芸用の品種改良が進み、キリシマツツジなど多数の種が生まれた。常緑の種も落葉の種もある。サツキもツツジの一種で、正式にはサツキツツジと呼ばれる植物種である。
躑躅を「てきちょく」と読んだ場合には、足踏みをしたり立ち止まったりするなど、躊躇しながら進む様子を意味する熟語である。ただし、この読み方をしている場合にも、まれに漢語的な用法で植物のつつじを指すこともある。一説には、つつじの余りの美しさに道行く人が足を止めることから、つつじに躑躅の字を当てたと言われている。
平安時代の襲(かさね)の色目(いろめ)にも、「躑躅」の名がある。当時の着物に用いられる絹は透過性が高く表地と裏地の色の組み合わせで美しい効果が生まれたのであるが、例えば、表地を赤、裏地を緑にすることで、つつじを連想させたのである。いわゆる十二単と呼ばれる女性たちの重ね着においても、袖口などで、紅・淡紅・より淡い紅・青(緑)・淡青(淡緑)・白という連なりを見せる「躑躅」と呼ばれる襲色目が存在した。
てき‐ちょく【×躑×躅】
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