『侮蔑』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 18:08 UTC 版)
「愛の寓意 (ヴェロネーゼ)」の記事における「『侮蔑』」の解説
『侮蔑』(Disprezzo, Scorn)は連作中、最も解釈が難しい作品である。裸の男性像が2つの彫刻で飾られた古代の建築物の上に横たわっている。男性が横たわっているのはエンタブラチュアであるが、古代の建築物は今はもう廃墟と化し、複数の柱と柱頭によって支えられていたであろうエンタブラチュアも崩落してしまっている。2つの彫刻のうちの1つは手足が欠けたサテュロスまたは牧神パーンであり、もう1つは壁龕にパンパイプを持っている立っている人物像である。古代神話ではこれらの神話的存在は女性に対する暴力的な略奪および性的関心と関連していた。男性像の胸の上ではキューピッドが立ち、手にした弓を振り上げて男性を殴っている。弓の弦は切れており、愛そのものが壊れていることを暗示している。キューピッドは男性が快楽主義的な性欲に傾倒しているために非難しているらしい。 画面右端には緑色の衣服を着てシロテンを持った女性像と、胸をはだけた女性像が立っている。後者は隣の服を着た女性に手を引かれて、連れて行かれようとしているが、キューピッドに打たれている男性を見つめている。シロテンはこの動物は妊婦を守護すると信じられていたため、純粋さや節度、妊娠、出産を象徴した。手をつないだ2人の女性像はいくつかの解釈が可能である。より性格が明らかなのはシロテンを伴った服を着た女性像であり、貞節を意味する。シロテンは万能の芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが『白貂を抱く貴婦人』で女性を表現するために描いている。 おそらく彼女たちはティツィアーノ・ヴェチェッリオがボルゲーゼ美術館の『聖愛と俗愛』でも表現しているように、愛についての同時代の新プラトン主義の考えに関連している。すなわち彼女たちは手をつなぐことで不可分に統合されると同時に、愛情と欲望との間で分裂している2つの愛、天上の愛と地上の愛を表していると考えられる。
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