「鈴弁事件」および「未来の淫女」について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:50 UTC 版)
「武田百合子」の記事における「「鈴弁事件」および「未来の淫女」について」の解説
百合子の祖父は、大正期の米騒動時代に「鈴弁事件」という事件で殺害された「悪名高い」人物だった。外米の輸入業者だった祖父は、農商務省の役人に金品を与えて情報を得ていたが、金銭トラブルで彼に殺害された。だが、殺害犯が「米価をつりあげた悪人を、義憤にかられて殺した」と裁判で証言したため、祖父は「悪人」として有名になってしまった。そのため、鈴木家では「鈴弁事件」はタブーとなっており、また百合子も「鈴弁の孫」と呼ばれるのを嫌っていた。 ただし、百合子の父・精次は祖父の娘と結婚して婿養子になり、妻が死去したため、百合子の母・あさと再婚した。そのため、百合子と祖父には血縁関係はない。 百合子が武田泰淳と交際中に、「自分は鈴弁の孫だ」と伝えたところ、泰淳はそれに非常に興味を抱き、百合子をモデルとした短編「未来の淫女」「続未来の淫女」を1949年に発表した。ちなみにこの作品の中では、百合子(にあたる人物)は祖父と血縁関係があるように書かれている。この小説は、「鈴弁事件」をタブーとしていた鈴木家の中で大問題となり、百合子は泰淳にその旨を伝えた。また、まだ学生だった百合子の弟・修も泰淳に会い、「あなたには人民の苦労はわからない」と抗議した。そのため、この作品は泰淳の全集などには収録されず、幻の作品となっている。 単行本『未来の淫女』は古書値も高く、入手困難な本となっている。ただし、旧版河出文庫の『異形の者』に続編とともに収録されており、この本の入手は比較的容易である。 他の武田泰淳作品「もの食う女」(1948年)「メサの使徒」(1950年)などにも、百合子をモデルとした女性が登場する。
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