刺史とは? わかりやすく解説

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し‐し【刺史】

読み方:しし

古代中国官名漢代は郡国の監察官隋・唐代では州の長官宋代以後廃止された。

国守(こくしゅ)の唐名


刺史

読み方:シシshishi

古代官職国守別称


刺史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/06 02:18 UTC 版)

刺史(しし)は、中国前漢から五代十国時代まで存在した官職名。当初は監察官であったが、後にの長官となった。州牧(あるいは単に牧)とも。日本では国守唐名として使われた[1]

歴史

前漢武帝元封五年(紀元前106年)に設置される[2][3]。当時は何度も繰り返された外征や塩鉄専売制の施行による民衆の負担増加などにより急速に社会不安が醸成されており、武帝はこれに対して酷吏と呼ばれる厳しい態度で当たる官僚を登用することで対処していた[4][5]。州と刺史の設置もその一環で行われたことで、当時の地方の最高行政区画であるの長官の郡太守がその当地の有力者(豪族)たちと結託することが多かったので、これを監察・監督するために刺史が置かれたのである[6][3]。全国に13州を置き、その管内の郡太守の行動を刺史が監察した(首都周辺の三輔・三河(河内郡河東郡河南郡)・弘農郡には刺史が置かれなかったが、その後の征和四年に司隷校尉を置いて刺史と同様の職務に当たらせた[6]。)。ただその俸禄は監察される側の郡守長官)が二千石なのに対して六百石と低かった[2]

のちにこれは不都合であると[7][8]綏和元年(紀元前8年)に刺史を州牧(あるいは単に牧)と改称されて俸禄は郡守と同格の二千石になり、州内各郡県の行政に介入できるようになった。この時に州の監察は御史中丞に移ったようであるから牧は監察官から行政官に変わったようである[9]。官名は建平2年(紀元前5年)に刺史に戻り、元寿2年(紀元前1年)に再度州牧に改められるなど、たびたび変更された[9]

建武18年(42年)、後漢光武帝は再び州牧を刺史へ改めて俸禄も以前の六百石に戻した[8]。またそれまでは特定の治所を持たず領内を巡察していた前漢の制度を改めて州内に治所を設置し、毎年8月に諸郡を巡察することとした。さらに治所周辺の行政権を完全に握るようになった[10]中平5年(188年)、各地で反乱が起きるようになると刺史は州牧に改められると共にそれまで保持していなかった兵権を与えられた[11]。ただし州によって牧ではなく刺史がいる場合もあり、刺史の名前が牧に変わったというよりは新たに牧の職が置かれて、刺史が随時廃止されたと見るべきであろう[12]

では刺史となった。この時代には、刺史が将軍位を与えられて兵権を行使することがほとんどとなる(将軍号の無い刺史を単車刺史と呼ぶ)。その後将軍号は名目化していき、代わって都督の役割が大きくなる[13]

南北朝時代には、南朝はおおむね魏晋の制度にならったが、北朝では都を管轄する州の刺史を「州牧」(北魏北斉は司州牧、北周は雍州牧を置いた)とし、その他の州を上州・中州・下州と格付けして刺史の官品を区別した。この頃には行政区画としての州は細分化されてゆき、さらに天賜2年(405年)、北魏で各州に皇族1人臣籍2人の計3人の刺史を配置することになるなど、刺史の地位は相対的に低下していった。

開皇3年(583年)、文帝は従来の州・郡・県の三段階の地方制度を州・県の二段階とし、増えすぎた行政区画を300州・1500県に整理した。さらに刺史の兵権を都督府へ移し、刺史はかつての郡守と変わらない立場になった[14][15]。その後、大業年間(605年 - 618年)初に州は廃され郡となり、地方官としての刺史は消滅した。一方で司隷台という地方監察の部署を設け、14人の刺史が各地を巡回し監察する制度を設けた[16]が成立すると武徳元年(618年)に再び州に戻った。

五代十国時代には刺史が兵を握って自立することもあったが、北宋では知州が州の長官となり、刺史は寄禄官に名称のみを残されて実態は消滅した[17]

脚注

注釈

出典

  1. ^ 大辞泉より「刺史」 (アーカイブ版)
  2. ^ a b 西嶋 1997, p. 268.
  3. ^ a b 太田 2003, p. 417.
  4. ^ 西嶋 1997, pp. 266–267.
  5. ^ 太田 2003, pp. 416–417.
  6. ^ a b 西嶋 1997, p. 269.
  7. ^ 桜井 1936b, p. 130.
  8. ^ a b 植松 2008, p. 2.
  9. ^ a b 西嶋 1997, p. 270.
  10. ^ 桜井 1936b, p. 448.
  11. ^ 桜井 1936b, p. 133.
  12. ^ 桜井 1936b, p. 134.
  13. ^ 関尾 & 中村 1996, p. 289.
  14. ^ 愛宕 1996, p. 289.
  15. ^ 布目 1997, p. 40.
  16. ^ 辻 1991.
  17. ^ 梅原 1997, pp. 99–100.

参考文献

研究論文

研究書

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