NASCAR NASCARの概要

NASCAR

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/14 00:20 UTC 版)

National Association for Stock Car Auto Racing, Inc.
2015 デイトナ 500 スタート
スポーツ ストックカー
管轄地域 アメリカ合衆国
カナダ
メキシコ
ヨーロッパ
略称 NASCAR
創立 1948年
本部所在地 ノースカロライナ州シャーロット
フロリダ州デイトナビーチ
ニューヨーク州ニューヨーク
会長 マイク・ヘルトン
チェアマン ブライアン・フランス
公式サイト
nascar.com
シボレー・SS(2013年)
フォード・フュージョン(2013年)
トヨタ・カムリ(2015年)

統括団体としてのNASCARは、1948年ビル・フランス・シニアとエド・オットーによって設立された。

概要

NASCARは、かつては四輪市販車(ストックカー)をベースに改造を施した車両で行われたが、現在は市販車に似せた純レーシングカーを使用するレースであり、主に北米大陸で行われる独自のレースカテゴリーである。

カテゴリーはNASCARカップ・シリーズ[注 1]を頂点とするピラミッド構造となっている。NASCARカップ、そしてNASCARカップの年式落ちの車を使用するエクスフィニティ・シリーズ(Xfinity Series[注 2])、ピックアップトラックベースの車で争われるガンダー・アウトドアーズ・トラック・シリーズ[注 3]の3カテゴリーは“三大シリーズ(Three Largest Series)”で全米のレース場を転戦し、全てのレースでテレビ中継がある。「三大カップ戦」という呼び方がファン・ジャーナリストの間で定着しているが、本来「カップ戦」というのは頂点の現モンスターエナジーカップのみに与えられる称号であり、英語でもそのような表現は存在しないので誤りである。

その下にはRegional Series(リージョナル シリーズ)として、昔のBuschシリーズマシンを使用するレギュレーションから始まったNASCAR K&N PRO SERIESがEastシリーズ(東海岸エリア)とWestシリーズ(西海岸エリア)の2つの地域に分かれて開催されており、7月のアイオワ・スピードウェイと8月のGateway Motorsports Park でEastシリーズとWestシリーズの合同レースが年に2度 開催される。Whelen Modified Tour(ウェレン モディファイド ツアー)も北シリーズと南シリーズとして開催されている。またインターナショナルシリーズとして、Pinty's Series(ピンティーズ)、PEAK MEXICO Series(ピーク・メキシコ)そしてWhelen Euro Series(ウェレン・ユーロ)までが、NASCAR Regional Seriesとして北米外で開催されている。

「Whelen All-American Series」と呼ばれるカテゴリー[注 4]、Local Racing と総称される2005年現在は地域ごとの8カテゴリーが存在する。使用される車の細かいレギュレーションはカテゴリーによって異なることが多い。またARCA等NASCAR以外の競技団体が主催するストックカーレースも、その多くが実質的に3大シリーズ戦へのステップアップカテゴリーとして機能している。

通常NASCARに参戦するドライバーは各地域カテゴリーから徐々にステップアップするのが通例だが、中にはIRLチャンプカー(旧CART)など、フォーミュラカーレースからの転身組も存在する。F1ドライバーではファン・パブロ・モントーヤジャック・ヴィルヌーヴキミ・ライコネンナレイン・カーティケヤンネルソン・ピケJr.、インディカーからはダリオ・フランキッティダニカ・パトリックが有名である。このうちモントーヤはネクステルカップ、ピケJr.はトラックシリーズのロードコースで勝利を挙げる成功を収めている。

歴史

NASCARの誕生

NASCARのルーツは20世紀前半、主に広大な平地を有するアメリカ中部以南で行われていたアマチュアの自動車レースであり、さらにルーツを辿れば禁酒法時代に取り締まる警察車両から逃れるため、速い車を必要とした当時の "ならず者" に行き着くという説もある[注 5]。直接の発祥となったのはフロリダ州デイトナ・ビーチにて互いの腕とマシンを競い合うため、各地の実力者達が集って催されたストックカー・レースであった。やがて競技ルールの平定が求められるようになり、1947年に同地で全米自動車競争協会(NASCAR)が発足。翌年には早速公式レースが開催され、数日後には同協会の法人化への手続きも完了して、その後は同地域を中心に競技が行われ続けた。

シーズンの形成と車体の進化

1959年デイトナ500初開催に多数の観客が詰め掛け、続く1960年代にはきわめて局所的ではあるがライブ中継が試みられていた。そして1969年 - 1970年にかけて競技車両はストックボディ(市販車)からパイプフレームへと移った。これによって軽量・高剛性になったことはもちろん、大きな安全性も得られた。1970年代初頭には煙草ブランドのウィンストンがNASCARの冠スポンサーへ付き、シリーズも近代的な形へと改編され、レース数の縮小、ショートトラックレースの排除などが行なわれた[1]。レギュレーションの範囲内で車体も進化を重ね、よりパワフルなマシンが登場している。そして、そのモンスターマシンを駆るリチャード・ペティ達にいつしかアメリカ南部の若者は夢中となった。

デイトナ・ビーチからお茶の間へ

1980年代へ入ってもNASCARは "カントリー" なイメージを払拭できずにいたが、それでも惹かれたファン達はデイル・アーンハートらのレースを観客席、あるいはリビングで固唾を呑み見守った。その後1979年にはウィンストン・カップ全戦のテレビ放映が開始、完全に興業の主体がテレビ放映へと移行する。それに伴って以後は都市部での視聴者拡大に対して運営側の強い意識が向けられた。ドライバー達にも幾度目かの世代交代が起こり、"都会っ子" ドライバーは伝統的な開催地にて度々熱心な親子のファンからブーイングを浴びつつも、テレビカメラを通して視聴する者達の応援を期待しながら走行を続けた。

エンターテイメント性の追求

近年は同シリーズにとって目下のライバルであったオープンホイール競技団体の分裂もあり、最高峰シリーズの看板スポンサーが通信企業(スプリント)に変わった現代でもNASCARの人気は増加傾向である。そして南部を沸かせた英雄の息子はメディアの発達もあり全米の子供達のアイドルとなって、さらには3世代のファンとドライバー達も登場した。しかし今日では数千万人の視聴者を満足させ続けるレギュレーションが必要不可欠となり、2004年からはファンの納得できるチャンピオンの誕生と、シーズン後半の消化試合をなくす目的でチェイス(2017年からプレーオフに名称変更)が導入されている。また安全面では2001年デイトナ500以後、対策が積極的に思案されるようになった。


注釈

  1. ^ 2003年まではウィンストンカップ、2004年 - 2007年はネクステルカップ、2008年 - 2016年はスプリントカップ、2017-2019年はモンスターエナジーNASCARカップと年のタイトルスポンサーによって名称が異なる。
  2. ^ 2008年-2014年はネイションワイド・シリーズ、2007年まではブッシュシリーズ。
  3. ^ 2009年から2018年まではキャンピング・ワールド・トラック・シリーズ、2008年まではクラフツマン・トラック・シリーズ。
  4. ^ 2005年現在はDivision I - IVの4つに分かれているが、各Divisionは同等のものという扱いであり、最もシリーズポイントを稼いだ者が全体のシリーズチャンピオンとなる
  5. ^ イギリスの自動車番組トップ・ギアのシーズン15エピソード7にて、取材で発祥の地とされるノースカロライナ州のウィルケスボロにあるアメリカ初のオーバルコースを訪れたジェレミー・クラークソンが、市長らからそのような説明を受けている。
  6. ^ 参考として、F1では最低728 kg(ドライバーの体重を含む)、SUPER GTでは最低1,020 kg(ドライバーを含まない)となっている。
  7. ^ インディカーでも同様に採用されるルールだが、レース展開に応じてコーションが出されるのはNASCAR独自のものである。

出典

  1. ^ Venerable old tracks endure after NASCAR Cup Series' departureUSA Today, 2017.8.30
  2. ^ 『SUPER GT file ver.8 技術こそ、生命線。』75ページ 三栄書房刊行 2021年9月20日閲覧
  3. ^ EFI opens a wealth of possibilities to competitors - NASCAR・2012年2月7日
  4. ^ NASCAR勢力図に異変。ダッジが今季限りの撤退 - オートスポーツ・2012年8月8日
  5. ^ ワNASCAR、2021年からの次世代カップカーでセンターロックホイールを採用”. as-web.jp (2020年3月3日). 2021年9月2日閲覧。
  6. ^ FAST FACTS FOR NASCAR'S 2016 PROCEDURAL CHANGES”. NASCAR.com (2016年2月11日). 2017年6月8日閲覧。
  7. ^ NASCARタラデガ:ゴール目前に“ビッグワン”発生 - オートスポーツ・2012年10月9日
  8. ^ NASCAR第24戦:カイル・ブッシュがシリーズ初の偉業達成。トヨタはトップ4独占
  9. ^ [1]
  10. ^ National Guard extends sponsorship of No. 88 - NASCAR・2012年8月17日
  11. ^ Navy Cancels as a NASCAR Sponsor; With This Economy, Who's Next? - HuffingtonPost・2008年7月9日
  12. ^ Navy puts brakes on NASCAR sponsorship - NavyTimes・2008年7月11日
  13. ^ U.S. Army to discontinue NASCAR sponsorship in 2013 - USA Today・2012年7月10日
  14. ^ 反バイデン「レッツゴー、ブランドン」-右派の間で大流行”. ワシントンポスト日本語版 (2021年10月15日). 2021年11月9日閲覧。
  15. ^ 反バイデン大統領の俗語を機内放送か、内部調査開始”. CNN (2021年11月4日). 2021年11月9日閲覧。
  16. ^ NASCAR第24戦:カイル・ブッシュがシリーズ初の偉業達成。トヨタはトップ4独占
  17. ^ 2016 Coca-Cola 600”. Racing-Reference. USA Today Sports Media Group. 2017年5月20日閲覧。
  18. ^ NASCAR Race Results at Suzuka East - Nov 24, 1996NASCAR Race Results at Suzuka East - Nov 23, 1997
  19. ^ Result 1999 NASCAR Winston West Series Coca-Cola 500 1998 NASCAR THUNDER SPECIAL MOTEGI Coca-Cola 500
  20. ^ 【3つの原因】NASCARやインディ なぜアメリカでモータースポーツが地盤沈下しているのか”. AUTOCAR JAPAN(2020年1月1日作成). 2020年2月17日閲覧。
  21. ^ 【小林可夢偉 電撃参戦】NASCARカップ・シリーズ2023”. 株式会社GAORA. 2023年7月3日閲覧。
  22. ^ “From F1 TV to WRC+: Assessing the leading OTT platforms in motorsport”. SportsPro Media. (2022年11月28日). https://www.sportspromedia.com/analysis/f1-tv-wrc-motorsport-tv-indycar-live-motogp-videopass-nascar-trackpass-ott/?zephr_sso_ott=WExD93 2023年3月9日閲覧。 





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