難聴 難聴の概要

難聴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 17:30 UTC 版)

難聴
概要
診療科 耳鼻咽喉科学
分類および外部参照情報
ICD-10 H90-H91
ICD-9-CM 389
MeSH D034381
世界の疾病負荷(WHO, 2019年)[1]
順位 疾病 DALYs (万) DALYs(%) DALYs
(10万人当たり)
1 新生児疾患 20,182.1 8.0 2,618
2 虚血性心疾患 18,084.7 7.1 2,346
3 脳卒中 13,942.9 5.5 1,809
4 下気道感染症 10,565.2 4.2 1,371
5 下痢性疾患 7,931.1 3.1 1,029
6 交通事故 7,911.6 3.1 1,026
7 COPD 7,398.1 2.9 960
8 糖尿病 7,041.1 2.8 913
9 結核 6,602.4 2.6 857
10 先天異常 5,179.7 2.0 672
11 背中と首の痛み 4,653.2 1.8 604
12 うつ病性障害 4,635.9 1.8 601
13 肝硬変 4,279.8 1.7 555
14 気管、気管支、肺がん 4,137.8 1.6 537
15 腎臓病 4,057.1 1.6 526
16 HIV / AIDS 4,014.7 1.6 521
17 その他の難聴 3,947.7 1.6 512
18 墜死 3,821.6 1.5 496
19 マラリア 3,339.8 1.3 433
20 裸眼の屈折異常 3,198.1 1.3 415


0dB HL(標準聴力閾値)

難聴の程度を決めるにはオージオメータ(audiometer、聴力計)によって純音聴力検査をしなければならない。

オージオメータとは、被検者に電気的に発生した検査音を減衰器を通して与え、被検者自身の認知、応答により、聴覚機能を検査する装置であり、JIS T 1201(オージオメータ)に規定されている。検査音を与える方法も指定された気導受話器(イヤホン)で被検耳の外耳に適切に圧着されなければならない。最初に 0dB を決めたのは、1951年に米国で徴兵検査の折に18歳の若者で行なわれた。この値がしばらくの間 0dBとして採用されていたが、その後英国でも検討されたが10dBほど小さい値になり混乱していたので、0dB の再検討が世界的に行なわれるようになった。日本オージオロジー学会でも 0dB 委員会が作られ検討された。最終的に ISO 規格に世界が合わせる事になった。当時は暫定的にそれぞれの周波数で10dBを加える事で対応した。JIS T 1201-1982 には財団法人機械電子検査協会が保有しているイヤホンをISO NBS 9-Aカプラ (6cc) で規定されている基準最小可聴値をもたらすカプラ内音圧レベルが4種類の国産受話器に対して示されている。ここで注意する点は何れも工業規格であり、オージオメータの製造、販売の規格である。従って、一人一人違ったヒトの外耳に気導受話器を使用して聴力検査をすると言う現実とは無関係である。例えば、圧着の程度が少ないと僅かな隙間から低音域の低下が発生するし、防音室の程度により閾値に 10 - 15dB の測定誤差を生ずる。これは全ての聴覚検査で生ずる現実である。

難聴とコミュニケーション

難聴をコミュニケーション障害の立場より考える事も重要な問題である。小寺によれば、純音聴力検査で求める平均聴力レベルを基準にした平均聴力、500Hz、1kHz、2kHzの各閾値の平均聴力値(3分法)で正常聴力は25dB以内であるとしている。平均聴力レベルが26dBから39dBは軽度難聴で、40dBから69dBは中等度難聴で、70dB以上であれば高度難聴と分類すると記している。この場合は良聴耳のレベルである。このように軽度難聴のレベルは文献により一定値ではないのが現状である。ここでも会話の了解度と組み合わせて記載されている。

平均聴力レベルとコミュニケーション障害の関係。

  • 26dB - 39dB: 小さい声での会話のみ聞き取りにくい。
  • 40dB - 54dB: 普通の会話に不自由。正面から大きい声で会話する。
  • 55dB - 69dB: 大きい声での会話が理解できないことがある。
  • 70dB 以上。 非常に大きい声のみ理解できるが、理解できないことがある。

(日医雑誌 第123巻・第6号/P-788.2000-3-16)


注釈

  1. ^ 聴覚の困難さを表す用語として、英語圏では、"hearing impairment"、 "hearing disability"、"hard of hearing"、"hearingloss"、"deaf"などがある[2]。"hearing impairment"は、聴覚器官の構造や機能の損失や異常を意味するのに対し、"hearing disability"は、聞こえの障害に伴う能力障害や制限に言及した用語として用いられ、日本語の「聴力障害・聴覚障害」にあたる[2]。また、"hard of hearing" は 「難聴」、"deaf" は 「聾」 にほぼ対応する[2]
  2. ^ 聴覚の困難さを表す用語として、「聴力障害」「聴覚障害」 「難聴」 「聾」 などが使われる[2]。それぞれに定義がなされているが、厳密に使い分けられているわけではなく、時代や国、障害に対する認識、立場によってさまざまである[2]
  3. ^ 聴覚の諸機能の感度や精度 [3]
  4. ^ 耳科学的に正常な18歳から30歳までの多数の評定者の聴覚閾値の最頻値 [4]
  5. ^ "sensorineural hearingloss"は内耳性難聴の意味で使用されることがある。[10]
  6. ^ ヒトの音の感度は周波数によって異なっているので、例えば、250 [Hz] の断続音の結果と、4000 [Hz] の連続音の結果を比べても何の意味もない。あくまで、250 [Hz] の断続音と250 [Hz] の連続音といったように、周波数を揃える必要がある。なお、周波数とヒトの音の感度の相関については、「等ラウドネス曲線」の記事を参照のこと。

出典

  1. ^ Global health estimates: Leading causes of DALYs (Excel) (Report). 世界保健機関. 2020年12月. Download the data > GLOBAL AND BY REGION > DALY estimates, 2000–2019 > WHO regions. 2021年3月27日閲覧
  2. ^ a b c d e f 城間将江ら編集 2021, p. 7.
  3. ^ 日本聴覚医学会(編)「日本聴覚医学会用語集(2022.10.5改訂)」、2022年。 
  4. ^ 日本聴覚医学会(編)「日本聴覚医学会用語集(2022.10.5改訂)」、2022年。 
  5. ^ a b 洲崎春海ら 監修 2017, p. 43.
  6. ^ 聴覚・平衡機能障害 さいたま市 (PDF)
  7. ^ a b 城間将江ら編集 2021, p. 8.
  8. ^ a b 城間将江ら編集 2021, p. 58.
  9. ^ 日本聴覚医学会(編)「日本聴覚医学会用語集(2022.10.5改訂)」、2022年。 
  10. ^ 日本聴覚医学会(編)「日本聴覚医学会用語集(2022.10.5改訂)」、2022年。 
  11. ^ 日本聴覚医学会(編)「日本聴覚医学会用語集(2022.10.5改訂)」、2022年。 
  12. ^ ブロモバレリル尿素 KEGG
  13. ^ ロモバレリル尿素 大正製薬製品カタログ
  14. ^ 橋田英俊, 本田俊雄, 森本尚孝, 相原泰, 「市販鎮痛剤常用量の服用による慢性ブロム中毒の1例」『日本老年医学会雑誌』 38巻 5号 2001年 p.700-703, doi:10.3143/geriatrics.38.700
  15. ^ 上田英雄, 山本英雄, 権平達二郎 ほか, 「ブロム酸カリウム(コールドパーマ第2液)中毒による急性腎不全の1例」『日本内科学会雑誌』 54巻 12号 1965-1966年 p.1408-1414, doi:10.2169/naika.54.1408
  16. ^ 本庄巌, 松井博史, 牛呂公一 ほか, 「ティンパノグラムによる中耳疾患の鑑別」『耳鼻と臨床』 1980年 26巻 3号 p.557-562, 耳鼻と臨床会, doi:10.11334/jibi1954.26.3_557
  17. ^ Bilodeau, Kelly (2022年1月1日). “Turning up the volume on brain health” (英語). Harvard Health. 2021年12月23日閲覧。
  18. ^ a b c World Health Organization (2021), The World Report on Hearing, World Health Organization, p. 40, ISBN 978-92-4-002048-1, https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/339913/9789240020481-eng.pdf?sequence=1 
  19. ^ a b c World Health Organization (2021), The World Report on Hearing, World Health Organization, p. 41, ISBN 978-92-4-002048-1, https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/339913/9789240020481-eng.pdf?sequence=1 
  20. ^ a b c d World Health Organization (2021), The World Report on Hearing, World Health Organization, p. 42, ISBN 978-92-4-002048-1, https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/339913/9789240020481-eng.pdf?sequence=1 
  21. ^ 加藤榮司, 東野哲也、「【原著】剣道による聴覚障害 -高等学校剣道部員に対する18年間にわたる聴覚健診の成果-」『日本耳鼻咽喉科学会会報』 2012年 115巻 9号 p.842-848, doi:10.3950/jibiinkoka.115.842






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