脳波 脳波判読

脳波

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/07 05:50 UTC 版)

脳波判読

正常脳波

基礎律動

ほぼ全般性、持続性に出現し、脳波の大部分を形成する特定の脳波活動を基礎律動(背景脳波)という。基礎律動は覚醒度、年齢、薬物によって変化し、基礎律動が異常を示す病態もある。基礎律動には周波数帯域ごとに以下のように名前が付けられており、それぞれ異なった生理学的な意義を有している(ギリシャ文字が周波数順になっていない点に留意が必要である)。

名称 読み 周波数帯域
δ波 デルタ波 1-3Hz
θ波 シータ波 4-7Hz
α波 アルファ波 8-13Hz
β波 ベータ波 14-Hz[注釈 2]

一般に健常者では、安静・閉眼・覚醒状態では後頭部を中心にα波が多く出現する。また睡眠の深さ(睡眠段階)は脳波の周波数などに基づいて分類されている。健常成人の安静覚醒閉眼時では、後頭部優位に出現するα波が基礎律動となる。25~65歳の正常成人では9~11Hzのαが後頭部優位に出現し、開眼、光、音刺激などで抑制される。周波数の変動は1Hz以内である。

α波を基準としてそれよりも周波数の遅い波形を徐波、周波数の早い波形を速波という。振幅は正常人は20µV - 70µVであり、これを中等電位という。20µV以下で低電位、100µV以上で高電位ということがある。30mm/secで50µV/5mmで記録されることが多い。

覚醒度
意識障害の程度を調べるのに脳波が重要であることがある。また覚醒度自体が常に脳波に影響を与える。覚醒度が低下すると後頭部のα波の連続性が乏しくなり、その周波数も遅くなり、振幅が低下する。入眠期に徐波が出現した場合は覚醒度が高い時に出現する徐波に比べて病的な意義は少ない。
年齢
出生から思春期の間は、脳波の基礎律動は概ね速波化していく。そして思春期から初老期まで基礎律動の周波数は殆ど変化がなく、初老期以降は概ね年齢とともに徐波化していく傾向がある。
薬物
フェニトイン、フェノバルビタール、ベンゾジアゼピン系の薬物により前頭部に速波が出現する。カルバマゼピンはθ帯域が混入する。フェノチアジン系は徐波と鋭波が混入する。

基礎律動をつくる波形の意義

α波

α波は頭部後方部分に覚醒時出現する8Hz - 13Hzの律動であり、精神的に比較的活動していないときに出現する。注意や精神的努力によって抑制、減衰する。加齢により徐波化する傾向がある。α波の発生説にはいくつか存在するが、Andersenらの仮説では皮質のα波は視床からの入力によるものであり、視床におけるペースメーカーが皮質リズムを形成し、視床の反回性抑制ニューロンがリズムの周波数を作っているとしている。Nunezらの説では皮質と皮質間を結ぶ長い連合線維によって生じるとされている。Andersenらの仮説では視床ニューロン群に発生する脱分極、過分極からなるシナプス後電位の律動性振動によって作られる。脳波律動の周波数は視床ニューロンの膜電位水準に依存している。開眼により覚醒度が上がると脱同期状態となりβ波が出現する。中等度の過分極状態では睡眠紡錘波、深い過分極ではδ波となる。この視床ニューロンの膜電位水準は覚醒レベルを調節する脳幹網様体ニューロンの活動性で制御されている。

β波

β波は14Hz以上の律動を示す。30Hz以上でγ波と分類することもある。もっともよく認められるものは前頭部から中心部に記録される。多くは30μV以下である。その起源は扁桃体や海馬が考えられているが明らかになっていない。

θ波

θ波は4Hz - 8Hzの律動を示す。α波が徐波化して出現する場合は後頭葉優位であり、傾眠時は側頭葉優位に出現する。

基礎律動の異常

基礎活動の異常としては周波数の異常、電位の異常、分布の異常などに分けることができる。

周波数の異常
周波数の異常には基礎律動の徐波化などがあげられる。限局性の徐波化であればどの電極近傍に腫瘍炎症、てんかん焦点といった病変が存在する可能性がある。広範な徐波化であれば脳形成障害、広範な病巣や脳症、病巣の多発、内分泌代謝異常、外来物質の影響、脳変性疾患の可能性がある。
電位の異常
分布の異常

睡眠時脳波

睡眠段階 特徴的波形
stage W α波
stage 1 α波の減少、V波(hump)
stage 2 睡眠紡錘波(spindle)、K複合波
stage 3 δ波(20% - 50%)
stage 4 δ波(50%以上)
stage REM 低振幅脳波に急速眼球運動(REMs)が出現する

中脳網様体視床―皮質の連絡によって波形の成り立ちは説明される。睡眠が深くなると中脳網様体、視床、皮質の順に求心性支配が順次減少すると考えられている。突発波と誤りやすいものに睡眠第一段階で認められるhumpが知られている。入眠時はα波がほとんど消失するためhumpの場合は後頭部にα波が認められないといった点などが鑑別の役にたつ。

覚醒段階(stageW)
閉眼覚醒ではα波のほか、高振幅の持続性筋電図、急速眼球運動(REMs)や瞬目もしばしば出現する。このα波は皮質―皮質間の神経路で発生すると考えられている。
睡眠第1段階
まどろみ期、入眠期といわれる。うとうとした状態である。覚醒時に認められたα波の連なりはリズムを失い徐々に平坦化してくる。低電位の徐波、即ちθ波が不規則に出現しβ波も混ざる。α波が覚醒期の50%以下になると睡眠第1期とする。第一段階の後半になると頭蓋頂鋭波(humpまたはV波)が出現する。頭蓋頂鋭波は左右頭頂葉優位の鈍く尖った高電位の徐波である。中脳網様体からの視床や皮質への求心性入力が減少することでα波の形成は減少すると考えられている。
睡眠第2段階
軽い寝息を立てるくらいの状態である。睡眠紡錘波(spindle)とK複合波(K complex)が出現する。睡眠紡錘波は頭頂部に出現する12Hz - 14Hz程度の波形である。K複合波は頭蓋頂鋭波に似た二相性ので高振幅の徐波とそれに続く速波で構成される複合波である。睡眠紡錘波は網様視床核がペースメーカーとなり、それが皮質に投射される、視床―皮質回路で形成されている。中脳網様体の求心性入力が減少することで視床―皮質の神経路が独立性を持ち睡眠紡錘波を形成するようになる。
睡眠第3段階
2Hz以下で頂点間振幅が75μV以上の徐波(δ波)が、20%以上50%未満を占める段階である。かなり深い睡眠であり、よほど強い刺激でないと知覚されない。通常の脳波検査ではこの段階までいくのは稀である。第3段階と第4段階を合わせて徐波睡眠という。視床からの求心性入力が減少することで皮質が独立性をもち多形性のδ波を形成する。
睡眠第4段階
2Hz以下、75μV以上の徐波(δ波)が50%以上を占める状態である。
REM睡眠
上記の睡眠段階は主にノンレム睡眠である。レム睡眠は脳波に睡眠第一段階に類似した低振幅パターンが出現すること、急速眼球運動(REMs)が出現すること、身体の姿勢を保つ抗重力筋筋緊張低下を三徴とする。脳波のみでは睡眠第一段階とレム睡眠の区別は困難である。ナルコレプシーの患者では覚醒時から急速にレム睡眠に移行する。また、レム睡眠中に刺激を与え、起こすと夢を見ていたと述べることが多い。

異常脳波

異常脳波には非突発性異常と突発性異常の2つが知られて。突発性の意味とは持続的な基礎律動の異常ではなく、突然始まり、突然終わる一過性の波形という意味である。

非突発性異常

非突発性異常は主に脳波の基礎律動と振幅の異常であるが実際問題として最も重要なのは徐波である。

α波の徐波化
基礎律動の徐波化は多くの場合は脳の機能低下を示している。前述のように分布を確認することで原因を推定できることもある。開眼や音刺激を加えてもα波の出現が悪く、徐波が出現する場合は大脳皮質の機能低下と考えられる。成人では安静時にδ波が出現すれば明らかに異常であり、θ波でもはっきり目立つ程度に出現すれば軽度の異常である。
異常速波
高振幅速波が基礎律動となる場合がある。薬剤性が多いが、内分泌疾患などでも起りえる。基礎律動として側波が異常脳波としてみなされるのは異常に高振幅であるときのみである。
α波をはじめ正常の構成成分の異常
局所性振幅の減少や消失、局所性の振幅の増加、局所性の徐波化、位相の乱れなどが認められることがある。障害部位においては覚醒時脳波(α波、徐波、速波など)の振幅が低下したり増大したりする。睡眠時脳波でも速波、紡錘波、徐波、K複合波などが患側では振幅が減少したり、欠如する。こういった現象をlazy activityという。
組織化不良

基礎律動の周波数変動は1Hz以内が正常であり、それを超えると脳波は不規則に見える。このとき組織化不良という。

局所性徐波

半球性に白質ないし皮質が障害された場合には持続性多形性δ活動(PPDA)が出現する。PPDAは局所性脳病変のマーカーである。振幅、周波数、持続性、刺激に対する反応性が障害程度の指標となる。持続性徐波は重度脳障害を、間欠的徐波は軽い脳障害を示唆する。反応性がない徐波はより障害が強い。

広汎性徐波

広汎性に出現する不規則な徐波は半球性の白質および皮質を含む大きな病変で観察される。

両側性同期性徐波

前頭部間欠性律動性δ活動(FIRDA)に代表される律動性活動がある。かつては上部脳幹、間脳、視床正中部の病変による投射性リズムと考えられていた。近年は皮質および皮質下灰白質の病変が主な原因とされている。

周期性脳波パターン

PLEDsは一側性に出現する高振幅複合波でありヘルペス脳炎や重篤な急性脳血管障害で認められる。広範な皮質興奮性の増大とそれに続く皮質下で発生する抑制が周期性パターンの原因とされている。皮質灰白質での機能異常による急激な神経発射が起こった後、長く持続する過分極が生じてニューロンが不応期に入り周期性が形成される。周期性のトリガーは皮質下と考えられている。バーストサプレッションは深麻酔時あるいは低酸素脳症や広範な頭部外傷でみられる。これは視床からの入力が皮質ニューロンの過分極により遮断されるが、内因性ペースメーカーにより視床皮質ニューロンが再活動して皮質活動が再開して周期的なパターンを呈すると考えられている。

突発波

突然始まり、急速に最大振幅に達し、突然終わるような出現様式をとる脳波を突発波という。突発波の判読で最も重要なのはてんかんであり、てんかんの診断、分類、治療効果判定に脳波は行われることがある。突発波の異常には波形の異常、出現の仕方、出現の場所などの性状が知られている。

波形の異常
棘波、鋭波、棘徐波、多棘徐波などが知られている。棘波(spike)とは持続20msec - 70msec程度の尖った波形であり、鋭波(sharp wave)とは持続70msec - 200msec程度の振幅が大きな尖った波である。棘波ひとつに徐波ひとつが組み合わさると棘徐波複合(spike-and-slow-wave complex)といい、鋭波一つとと徐波一つでは鋭徐波複合(sharp-and-slow-wave complex)という。多棘複合、棘徐波複合といったものも存在する。
出現の仕方
単発、2から3個連なって、群発(数秒続く)といった出現の仕方が知られている。持続的、頻発、散発(sporadic)、律動性(rhythmic)、多律動性、非律動性、周期性、突発性、両側同期性、非同期性といった表現も用いられる。
出現場所
焦点性、半球性、全般性などが知られている。広域性、広汎性、局在性、一側性、両側性、対称性、非対称性といった言葉も使われる。これらは左右差などに注目するのが重要である。
突発性異常

突発性脳波異常は、棘波ならびに鋭波と突発性律動波とに大別される。

棘波(spike)

棘波は突発性脳波異常の最も基本的な形であり、持続が20msec以上70msec未満すなわち1/50~1/14秒で急峻な波形をもち、背景脳波から区別される。前述のように棘波はその出現様式によって散発性と律動性にバースト(群発)を形成することがある。棘波は皮質ニューロンの過同期性発火をあらわすものである。てんかん患者の場合は棘波成分は最も特異的な発作発射と考えられている。孤立性の棘波がかなり長い間隔をおいて散発するばあいは、それはてんかん原焦点の局在を示すだけであり臨床症状は出現しないのが普通である。

棘徐波複合(spike and wave complex)

棘波に持続200~500msecの徐波が続いて現れる場合は棘徐波複合という。棘徐波複合の発生機序に関しては不明であるが徐波は抑制過程を現し、棘波に表現される強い興奮過程の発現に対して、ただちにこれを抑制しようとする生体の防御機構が働くために棘波に続いて徐波が出現するという考え方もある。棘波単独で出現するよりもてんかん原損傷が広範であることが多い。局在性棘徐波複合全般性(広汎性)棘徐波複合多棘徐波複合などが知られている。局在性棘徐波複合は焦点性を示す。全般性棘徐波複合には欠神発作の3Hz棘徐波律動などの有名な波形も含まれる。多棘徐波複合にはミオクロニー発作との関連も知られている。

鋭波(sharp wave)

棘波に似ているが、持続が70msec以上200msec未満すなわち1/14~1/5秒の波形を鋭波という。棘波との意義の大差はない。なぜ持続が棘波より長いかということにかんしては棘波に比べてニューロンの同期が不完全であるという考え方がある。同期が不完全になるには2つの機序が知られている。第1にはその部位が原発焦点であっても、空間的にてんかん原損傷部位が広い場合がある。この場合は広い領域にある多数のニューロンが同期するのに鋭波よりも時間がかかると考えられる。第2に原発焦点が対側半球、皮質深部、皮質下諸核などにあって、そこから伝播してくる神経衝撃によって当該皮質部位に鋭波が誘発される場合は、神経衝撃の時間的分散が増大し、持続が長くなると考えられる。

鋭徐波複合(sharp and slow wave complex)

鋭波に徐波が引き続いて形成される場合は鋭徐波複合という。鋭徐波複合は比較的広いてんかん原損傷が存在する部位から記録される。

突発律動波(paroxysmal rhythmic activity)

棘波や鋭波を含むが波形は、散発性、孤発性に出現する場合も律動的に反復する場合も脳波的には発作発射である。棘波や鋭波を含まない場合は振幅が大きく、背景脳波から際立った律動性群発(律動性バースト)をなして出現する場合は発作発射とみなされる場合があり突発律動波という。3Hz、6Hzの徐波の群発、10Hzの高振幅の群発、速波の群発などが知られている。

てんかん発作と脳波の対応
発作名 発作時脳波 非発作時脳波
定型欠神発作 広汎性3Hz棘徐波複合 広汎性3Hz棘徐波複合(短い)
非定型欠神発作 広汎性遅棘徐波複合 広汎性遅棘徐波複合他
ミオクロニー発作 広汎性多棘徐波複合 広汎性多棘徐波複合
強直発作 広汎性漸増律動 不定
強直間代発作 広汎性棘波、棘徐波 広汎性棘徐波複合など
部分発作 局在性棘波律動 局在性棘波、棘徐波、徐波あるいは徐波律動(出現しないこともある)

その他、有名なものとしてWest症候群のヒプスアリスミアやLennox症候群非発作期の2Hz前後の鋭・徐波複合、irregularな1.5Hz - 2.5Hzのsharp-and-slow-wave-complexなどが知られている。

病的意義の乏しい突発性活動

下記に述べるものは病的意義に乏しい。偽性てんかん発作波ともいわれる。

6&14Hz陽性棘波

陽性群発、陽性棘波ともいう。振幅は75μV以下のことが多く、側頭後部、後頭部優位に両側性、一側性ないし左右交代性に睡眠第1~2段階に出現する。年齢依存性があり4歳ころから出現し、12~14歳ころがピークであり成人になると減少する。Gibbsらは自律神経症状を示す視床あるいは視床下部てんかん患者に関連すると記載したがその後、小児、思春期を中心に健常者20~60%に認められることがわかった。正常から境界の所見と考えられる場合が多い。国際学会では病的意義は確立していないとしている。

小鋭棘波(SSS・BETS)

入眠期、軽睡眠期に単発性の小棘波が出現することがあり小鋭棘波といわれた。てんかんとの関連がはっきりしないため良性てんかん型発射(BETS)ともいう。

6Hz棘徐波複合(ファントム棘徐波)

欠神発作で認められる広汎性3Hz棘徐波複合を小型化したような波形であることからファントム棘徐波とも呼ばれる。内因性精神病、特に統合失調症との関連も提唱されている。しかしこれも健常者でも認められる。左右対称性ときに非対称性に全般性に出現するが、前頭部優位や後頭部優位を示すこともある。睡眠第1期で認められることが多いが、過呼吸や光刺激で賦活される。

律動性中側頭部放電(RMTD)

精神運動発作異型ともいう。うとうと状態の時に側頭部、とくに側頭中部を中心に出現する4~7Hzのθ波の群発である。複雑部分発作(精神運動発作)で認められる方形波に似ているため精神運動発作異型と言われたが、てんかん性異常波ではない。群発の持続は10秒以上で一側性または交代性に出現する。

成人潜在性律動性脳波発射(SREDA)

両側または一側の頭頂、側頭部優位に比較的高振幅の4~7Hzの徐波または鋭波様活動が周波数を変えながら律動的に出現し数十秒から数分間持続するパターンであり、この間臨床症状を伴わない。臨床的意義は乏しいと考えられている。

ウィケット棘波

一側(特に左)ないし両側の側頭中部から側頭前部優位に出現する比較的高振幅の律動性6Hzのアーチ型のμ律動様波形である。

頭頂部鋭波
μ律動

覚醒や傾眠時に一側または両側の中心・頭頂部に出現する9~11Hzの律動波

後頭部陽性鋭一過波(POSTs)
ブリーチリズム

骨欠損の場合にμ律動様の波形が目立って出現することがあり、ブリーチリズムといわれる。

脳波の賦活

限られた検査時間内で効率よく異常波を誘発・観察するため、主に以下の賦活法が用いられる。

開閉眼賦活法
安静閉眼時に開眼10秒後に閉眼させる。主にαブロック(α attenuationまたはα blocking)をみるための賦活法である。αブロックは視床と皮質反響回路の脱同期によるものと考えられている。一側で開眼によるαブロックが欠如した場合はBancaud現象といい半球の機能異常が示唆される。入眠期に開眼させると覚醒度があがり逆にα波が出現する。徐波があったり、反応性が低い場合は病的意義も高くなる。
過呼吸賦活法(HV)
1分間に20回 - 30回の速さで3分 - 4分間連続して過呼吸を行わせる方法である。過呼吸によって呼吸性アルカローシスになり脳血管が収縮し[5]、安静時に見られなかった徐波が出現したり、振幅が大きくなることがある。このような変化をbuild-upという。10歳以下ではbuild-up自体に病的な意義がないことも多い。過呼吸を中止し1分以内にbuild-upが消失しなかったらそれも所見である。過呼吸を中止すると徐波が一度減少、消失して再び徐波化する場合をre-build upという。build-up、re-build upともにもやもや病などウィリスの大動脈輪障害における所見と考えられている。
光刺激賦活法(PS)
反復光刺激にて後頭葉の突発波を誘発させる方法である。後頭葉に光刺激の周波数に一致した、あるいは調和した脳波が出現し光駆動といわれる。一側性に出現しないときはその部の半球が異常[5]
睡眠賦活法
睡眠によって突発波誘発させる方法である。自然睡眠で行う場合と薬物により睡眠を導入する場合もある。棘波が賦活されやすい[5]
音刺激
背景脳波の変化などを見る。脳死判定の時に行う(右耳、左耳、それぞれに、3回以上、大声で耳元に近接して名前を呼ぶ)。
痛み刺激
意識障害、脳死判定の時に行う(顔面への疼痛刺激)。

注釈

  1. ^ 国際10-20法の電極配置位置は以下のように決められる。まず鼻根(N)と後頭極(I)を結ぶ線を10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割し、前頭部から順にFpz,Fz,Cz,Pz,Ozとする。外耳孔または耳介前点(耳珠のすぐ前方で頬骨根部に触れる陥凹部)をA1(左)、A2(右)としN、I、Aを結ぶ線をつくる。Aから10%だけCzに向かう点がT3とT4である。T3,T4とFpz、Ozを結ぶ線を作り、左右にNから10%、20%、20%、20%、20%、10%と分割する。左ならば、N側から順にFpz,Fp1,F7,T3,T5,O1,Ozとなる。T3、T4から20%Czに向かうとC3、C4となる。この点は中心溝直上と考えられている。F7,Fz,F8を結ぶ線でFzとF7の中点がF3、FzとF8の中点がF4である。T5,Pz,T6を結ぶ線でPzとT5の中点がP3、PzとT6の中点がP4である。Fpz、Ozに探査電極は張らないので、基準電極をA1,A2に張る場合は21個の電極を張ることになる。正中を示すzはzeroであり、奇数ならば左側、偶数ならば右側というルールになっている。各電極は以下のようにも呼ばれる。
    Fpz 前頭極正中部 F3 左前頭部 O2 右後頭部
    Fz 正中前頭部 F4 右前頭部 F7 左側頭前部
    Cz 正中中心部 C3 左中心部 F8 右側頭前部
    Pz 正中頭頂部 C4 右中心部 T3 左側頭中央部
    Oz 後頭中央部 P3 左頭頂部 T4 右側頭中央部
    Fp1 左前頭極部 P4 右頭頂部 T5 左側頭後部
    Fp2 右前頭極部 O1 左後頭部 T6 右側頭後部
  2. ^ βとγ帯域の境界の周波数は28Hzとするものなど諸説ある。

出典

  1. ^ Condorelli D.F.Trovato-Salinaro A.Mudo G.Mirone M.B.Belluardo N.fCellular expression of connexins in the rat brain neuronal localization, effects of kainate-induced seizures and expression in apoptotic neuronal cells.Eur. J. Neurosci. 2003; 18: 1807-1827
  2. ^ Adrian ED, Yamagiwa K. (1935). The origin of the berger rhythm. Brain. 58:323-351. DOI: 10.1093/brain/58.3.323
  3. ^ JIS T 1203日本産業標準調査会経済産業省
  4. ^ Nunez (1981). The electric fields of the brain. Oxford University Press. ISBN 978-0195027969
  5. ^ a b c 脳波を楽しく読むためのミニガイド (PDF) 九州大学大学院医学研究院臨床神経生理学教室(2001年2月1日)
  6. ^ "二つの周期的な振動現象(振動子)が相互作用しあう結果,元来は異なった周波数で振動をしているのに,ある条件下で自発的に振動のリズムが一致する場合がある.この現象は振動の同期 (synchronization),あるいは引き込み (entrainment)と呼ばれる." 北城, 山口 (2007). 脳波位相同期解析による視知覚の研究.
  7. ^ 【Disruption 断絶の先に】第8部 となりのロボ(3)あなたの一念、ロボを動かす日本経済新聞』朝刊2019年11月20日(11面)2021年1月2日閲覧
  8. ^ 辰岡 鉄郎「特集:「生体センシング入門」」『インターフェース (雑誌)』、CQ出版、2015年4月、ASIN B00S5TLDKY 
  9. ^ 辰岡 鉄郎「脳波計測」『トランジスタ技術』、CQ出版、2013年10月。 






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