脳油(鯨蝋)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 02:15 UTC 版)
鯨蝋(げいろう)とは頭部から採取される白濁色の脳油の別名である。脳油は精液に似ているため、精液と誤解されていたことがあり、英語では spermaceti (原義:「鯨-精液」)と呼ばれている。英名の sperm whale はこのことに由来する。 脳油はイルカやシャチなどのハクジラ類にみられる反響定位(エコーロケーション)の際に音波を集中するレンズの機能を持つメロンと呼ばれる頭部器官を満たすワックスエステルである。なお、一部で脳漿油と呼ぶ向きもあるが、脳漿は脳の髄液を指す為、全く無関係である。反響定位による音波は他のハクジラ類同様に、遊泳時の障害物の探知や獲物の捜索に使われるが、マッコウクジラの脳油であれば、獲物に対して高い指向性を持った強力な音波を放つことで失神あるいは麻痺に陥らせ、捕らえる事が可能であるという説もある。実際には確認されていない。 脳油は他のハクジラ類のメロンと異なり、マッコウクジラの体温下では液状であるが、約25℃で凝固することが知られている。鯨類学者クラークはこの性質に着目し、潜水の際には鼻から海水を吸い込んで脳油を冷やすことで固化させて比重を高め、浮上の際には海水を吐き出し血液を流し温めることで液化させて比重を小さくすることで、急速な潜水および浮上を可能にしているという説を唱えている。潜水・浮上はほぼ垂直に、かつ、急速に行われることが確認されているが、潜水病に陥らないことも確認されている。
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