穀物
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生産
国連食糧農業機関(FAO)の穀物の世界需給予測によると、2021年度の生産量は30億0663万トンと初めて30億トン台に乗り、貿易量は5億7959万トン、13.6憶トンが食用、9.9憶トンが飼料であった[21][22]。以下に1961年(FAO統計が利用可能な最初の年)以降の穀物生産量とその推移を示す[23]。2003年にはトウモロコシ、コメ、コムギの3大穀物で世界の穀物生産の87%、世界の食物カロリーの43%を占めていた[23]。緑の革命の影響を受けた3大穀物の生産量が爆発的に増加しているのに対し、ライムギとエンバクの生産量は1960年代に比べて大幅に減少している。
1961 | 1981 | 2001 | 2020 | 2021 | 2001年比 | 備考 | |
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トウモロコシ | 205.03 | 446.77 | 615.14 | 1,163.00 | 1,210.24 | 1.97 | 総生産の58%飼料、食用13%[25] |
米 | 215.65 | 410.08 | 600.25 | 769.23 | 787.29 | 1.31 | 大半81%食用[26] |
小麦 | 222.36 | 449.63 | 588.24 | 756.95 | 770.88 | 1.31 | 68%が食用、飼料16%[27] |
オオムギ | 72.41 | 149.60 | 140.59 | 157.71 | 145.62 | 1.04 | 58%が飼料、加工19%(麦酒など)[28] |
モロコシ | 40.93 | 73.28 | 59.79 | 58.92 | 61.36 | 1.03 | 50%が食用、飼料34% |
キビ亜科 | 25.71 | 26.96 | 28.90 | 30.83 | 30.09 | 1.04 | 77%が食用、飼料12% |
エンバク | 49.59 | 40.29 | 26.94 | 25.32 | 22.57 | 0.84 | 58%飼料、食用24% |
ライコムギ | 0.00 | 0.10 | 10.83 | 15.34 | 14.85 | 1.37 | |
ライ | 35.11 | 24.85 | 23.38 | 15.04 | 13.22 | 0.57 | |
ソバ | 2.48 | 3.40 | 2.59 | 1.81 | 1.88 | 0.72 | |
フォニオ | 0.18 | 0.17 | 0.31 | 0.66 | 0.66 | 2.13 | |
カナリーシード | 0.06 | 0.09 | 0.15 | 0.26 | 0.22 | 1.45 | |
キノア | 0.03 | 0.03 | 0.05 | 0.18 | 0.15 | 3.20 | |
その他 | 1.35 | 1.56 | 2.49 | 8.34 | 8.36 | 3.35 | |
複合 | 5.98 | 5.58 | 5.18 | 3.07 | 3.26 | 0.63 | |
大豆 | 26.88 | 88.53 | 177.02 | 355.37 | 371.69 | 2.10 | 88%が脱脂/搾油加工、飼料9.5%、食用3.4%[29] |
雑穀とみなされる穀物は全般に需要が低調であり、換金性もそれに伴って低いために栽培が減少する傾向が目立つが、雑穀のなかでも例えばエチオピア高原におけるテフのように地元のアムハラ人などによって強く嗜好され、主食の座を保っている穀物も存在する[30]。このためテフの換金性は高く高価で取引されている[31]。
穀物は世界の人口のかなりを支えており、その生産様式は多岐にわたる。東アジアから東南アジア、南アジアにかけては集約型の穀物生産が行われ、ヨーロッパにおいては年単位で耕地を移動させ輪作を行い、地力の消耗を防ぎながら食用となる穀物と飼料作物を栽培する混合農業が主流である[32]。こうした土地生産性の高い諸国に対し、アメリカのグレートプレーンズやオーストラリア、アルゼンチンのパンパなどでは、広大な土地で穀物を大規模に栽培する企業的穀物農業が行われている[33]。こうした企業的穀物農業においては土地生産性が低く、例えばコムギにおいてはアメリカでは290㎏、オーストラリアでは190㎏と反収が低くなっている[34]かわりに、少ない労働力で大規模に生産できるために労働生産性が非常に高くなっていることが特徴である。またこうしたことから、穀物の反収は先進国と発展途上国の間には必ずしも明確な差はなく、また穀物の種類によっても大きく左右される。例えばコムギの反収においてはもっとも高いのは西ヨーロッパ諸国であるが、ナイル川沿いの肥沃な土地を擁するエジプトや、ロバート・ムガベ政権によって穀物生産が崩壊する以前のジンバブエなどもそれに劣らない反収を誇っていた[35]。また、日本においてはコメの反収は世界最高レベルにあるが、コムギの反収は384㎏[34]と世界中位レベルであり、労働集約型農業としては低いレベルにとどまっている。
農業革命や緑の革命によって品種改良や農法の改善が進んだコメ、コムギ、トウモロコシの三大穀物の収量は激増したが、雑穀などはそれらが進んでおらず、収量も低いレベルにとどまっているものがほとんどである。また、品種改良の進んだ穀物においても、たとえばトウモロコシやソルガムのように世界中で需要の多い飼料用としての改良は大幅に進んだものの、主食用としての改良が進んでいない穀物もあり、これらの穀物を飼料用として栽培するアメリカなどの企業的穀物農業の諸国と、アフリカや中南米などの自給用としてトウモロコシやソルガムの生産を行う諸国との反収の差の一因となっている[36]。
穀物農業は、一年生植物である小麦栽培による表土流出など自然環境に負荷をかける面もあり、アメリカ合衆国のランド研究所が小麦代替穀物として開発した多年草「カーンザ」のように、品種改良で新たに作出される穀物もある[37]。
穀物は、人類の多種ある主食のひとつとして使われてもいるが、実際には人類全体に穀物は届いておらず、世界で生産される穀物の3分の1は主に食肉用の家畜の餌として使われている[38]。
穀物は必需品であり、古くから重要な交易品の一つだった。現代においても穀物交易の重要性は変わらず、北アメリカ・南アメリカ・オーストラリアなどから大量の穀物が輸出され、世界各国に販売されている[39]。なかでも世界最大の穀物輸出国はアメリカであり、主にコムギやトウモロコシの輸出を行っている[40]。逆に穀物輸入額が多いのは、日本をはじめとする東アジア諸国や、アフリカ諸国である[41]。この穀物流通においては、カーギルやアーチャー・ダニエルズ・ミッドランドといった穀物メジャーと呼ばれる商社群が大きな割合を占めている[42]。
穀物の国際価格は変動しやすく、経済や人々の生活にに大きな影響をもたらす。2007年から2008年にかけては飼料用需要の増加や人口増加、穀物在庫の減少、バイオエタノール需要の増加、そして当年の主要産地での不作によって穀物価格が暴騰し[43]、2007年-2008年の世界食料価格危機が発生して、特に発展途上国において都市部貧困層の生活水準悪化と、それにともなう暴動を引き起こした[44]。
注釈
- ^ 強勢雑草として忌み嫌われるものもあり、日本では、イネの水田におけるヒエはその例として知られる。
出典
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