秦郁彦 研究

秦郁彦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 14:01 UTC 版)

研究

軍事史学会の会員でたびたび同会で論文を発表、専攻は、日本の近現代史第二次世界大戦を中心とする日本の軍事史[要出典]とする。その他、昭和史に関する著作がある。自らについて「他人からは実証的である、とよく言われる」とする[3]

日本国際政治学会太平洋戦争原因究明部による共同プロジェクトに参加し、研究の成果は後に『太平洋戦争への道』として出版された。同書は開戦に至る日本外交を描いている。

ジョン・W・ダワー『敗北を抱きしめて』、アルヴィン・D・クックス『ノモンハン』では共同研究者として、献辞で名が挙げられている。

南京事件

不法な虐殺数を十数万から数十万とする大虐殺存在派と、不法殺害をゼロ乃至殆どないものとする大虐殺否定派(まぼろし派)の間に位置する、虐殺の存在を虐殺数数千から数万のオーダーで認める中間派(矮小化派、限定派とも)の立場に立つ。南京事件については自著『南京事件』において、日本軍の不法行為による犠牲者数を「3.8万-4.2万人」とし、以後も被虐殺者数は約4万人程度と推定している[18]2007年に出した同著の増補版では、「4万の概数は最高限であること、実数はそれをかなり下まわるであろうことを付言しておきたい」と追記しており、週刊新潮2007年12月27日号では、「だいたい4万人」とコメントしている。

歴史学者の吉田裕は、秦のこの推計値に異論を唱えている。吉田の主張は「吉田裕 (歴史学者)#主張」を参照。

百人斬り競争については、行ったとされる旧日本陸軍少尉が故郷鹿児島県において地元の小学校や中学校で「投降した敵[19]」を斬ったと自ら公言していたことを、名簿を頼りに問合せ4人から回答を得て、1991年に日本大学法学会『政経研究』42巻1号・4号にて発表している。志々目彰証言は「戦意を失って投降[注釈 1]した敵を斬[20]」ったと言っている。秦自身が語る捕虜の要件は「リーダーがいて、標識を制服につけていて、公然と兵器を携帯しているのが条件で、国際法上の待遇が受けられます」[21][注釈 2]

慰安婦問題

日本軍の慰安所を、当時の国内の公娼制度が戦地へ持ち込まれたものだとする。「慰安婦の強制連行」については、長年の調査にも関わらず見つかっていない以上、これを裏づける資料(公文書)は存在しないと考えるべきだとする[23]:76。慰安婦を(性)奴隷と呼ぶ事についても否定的で[23]:93-95[24][25]、見解が対立する吉見義明らと論争した[26]

慰安婦について「狭義の強制性」を否定した安倍晋三首相の国会答弁には、批判的だった[27][注釈 3]

1999年、『慰安婦と戦場の性』を出版した。英語版は、『Comfort Women and Sex in the Battle Zone』のタイトルで、2018年にHamilton Booksより出版された[28][注釈 4]

2014年、政府による河野談話検証チームのメンバーとなる[30]

アメリカのマグロウヒル社の教科書の、慰安婦に関する記述の訂正を求める声明を発表した日本の歴史家グループの一人[31][32]

済州島での吉田証言調査

戦時中、済州島(現韓国)において慰安婦の強制連行が行われたとするいわゆる「吉田証言」について1992年に現地調査を行い、吉田証言を「信ぴょう性が極めて疑わしい」と結論づけた[33]:14[34]

秦の調査結果は産経新聞 (1992年4月30日付)に発表され、雑誌『正論』(同年6月号)にも掲載された[35][注釈 5]。これ以降、それまで吉田に好意的だった朝日新聞も、吉田証言を取り上げなくなった[33]:14[36]:53

秦の調査結果に納得していない者や吉田本人の反論については、「吉田清治 (文筆家)#慰安婦の強制連行に関する証言(吉田証言)」以下を参照。


  1. ^ 個々の兵員が武器を捨て,敵権力に服するのが投降で、司令官の間で「降伏規約」を結び,兵員等の引渡し,武装解除等を取り決めるが降伏山本七平少尉は特使として米軍との交渉に応じ、数十人規模で降伏して在フィリピン米軍に降った。
  2. ^ 北之園陽徳は中国兵が綿服を着ていたと言っている[22]
  3. ^ 2007年の安倍首相の発言にしては「安倍晋三#歴史観#慰安婦問題」を参照
  4. ^ 本書の英訳は、2013年に内閣官房で英訳プロジェクトが内定していたが、新任の内閣広報官から、日本政府の後押しが露見したらまずいとの理由で、ドイツ、英連邦、米国、韓国などの例を記述した部分を訳出の対象から外すことを提案され、秦が断った事で一旦流れていた[29]
  5. ^ この論文は「従軍慰安婦たちの春秋(上)」という章タイトルで、文芸春秋発行の雑誌『諸君!』に、やはり慰安婦をテーマに掲載された秦の論文を「従軍慰安婦たちの春秋(下)」というタイトルで、セットにして文藝春秋社が出版した『昭和史の謎を追う』(1993年3月)に収録され、菊池寛賞を受賞した。
  1. ^ a b 秦郁彦『旧制高校物語』文藝春秋文春新書)、2005年、著者紹介。
  2. ^ 著者プロフィール 秦郁彦 - 新潮社
  3. ^ a b “時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(1)大本営発表に疑問抱く”. 読売新聞朝刊. (2017年3月14日). http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20170313-118-OYTPT50417/list_JIDAINOSHOGENSHA 
  4. ^ a b c d e “時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(4)国鉄マンだった父 戦死”. 読売新聞朝刊. (2017年3月18日). http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20170317-118-OYTPT50374/list_JIDAINOSHOGENSHA%2509%25E5%25AE%259F%25E8%25A8%25BC%25E5%258F%25B2%25E5%25AD%25A6%25E3%2581%25B8%25E3%2581%25AE%25E9%2581%2593%25E3%2580%2580%25E7%25A7%25A6%25E9%2583%2581%25E5%25BD%25A6_0 
  5. ^ a b c 『慰安婦問題の決算 現代史の深淵』PHP研究所、2016年、200-202頁。ISBN 9784569830070 
  6. ^ “時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(5)あだ討ちの心情消えた”. 読売新聞朝刊. (2017年3月20日). http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20170319-118-OYTPT50286/list_JIDAINOSHOGENSHA%2509%25E5%25AE%259F%25E8%25A8%25BC%25E5%258F%25B2%25E5%25AD%25A6%25E3%2581%25B8%25E3%2581%25AE%25E9%2581%2593%25E3%2580%2580%25E7%25A7%25A6%25E9%2583%2581%25E5%25BD%25A6_0 
  7. ^ 『現代史の争点』文春文庫、2001年。ISBN 4167453061 
  8. ^ 『現代史の虚実』
  9. ^ 時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(7)白眉 丸山真男の分析力『読売新聞』朝刊2017年3月22日
  10. ^ 時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(12)公務員試験 独学で挑む『読売新聞』朝刊2017年3月29日
  11. ^ 秦郁彦編『日本官僚制総合事典 1868-2000』(東京大学出版会、2001年)巻末年度別各省キャリア官僚入省者一覧
  12. ^ 時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(13)旅館から車で初登庁『読売新聞』朝刊2017年3月30日
  13. ^ 時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(14)歴史の女神に魅入られて『読売新聞』朝刊2017年3月31日
  14. ^ 『職員録 昭和45年版 上巻』大蔵省印刷局、1969年発行、461頁
  15. ^ 時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(20)沖縄返還と財政史編纂『読売新聞』朝刊2017年4月11日
  16. ^ 時代の証言者/実証史学への道・秦郁彦(23)「天皇退位せず」の特ダネ『読売新聞』朝刊2017年4月15日
  17. ^ 奥付 『日本近現代人物履歴事典(第2版)』秦郁彦
  18. ^ 秦 郁彦/著∥∥2007.7『南京事件 :増補版 -「虐殺」の構造』中央公論新社〈中公新書 795〉、2007年7月、214頁。 
  19. ^ p.4 3月刊『中国』志々目彰 1971年 引用『政経研究』再録p.297『旧日本軍の生態学』秦郁彦 2014年
  20. ^ p.4 3月刊『中国』志々目彰 引用『政経研究』再録p.297『旧日本軍の生態学』秦郁彦
  21. ^ p.34 『南京「虐殺」研究の最前線』秦郁彦・東中野修道 展転社 2002年
  22. ^ 『政経研究』再録 p.302『旧日本軍の生態学』秦郁彦
  23. ^ a b 秦郁彦『現代史の争点』文春文庫 2001年 ISBN 9784167453060
  24. ^ 米教科書の訂正求める=慰安婦記述で日本歴史家”. 時事ドットコム. 時事通信社. 2015年7月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月3日閲覧。
  25. ^ 【詳報】「強制連行があったとするマグロウヒル社の記述は誤り」従軍慰安婦問題で、秦郁彦氏、大沼保昭氏が会見 (1/2)”. BLOGOS. LINE. 2022年5月3日閲覧。
  26. ^ 2013年06月13日(木)「歴史学の第一人者と考える『慰安婦問題』」(対局モード)”. 荻上チキ・Session-22. TBSラジオ→WaybackMachine. 2013年6月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月7日閲覧。
  27. ^ 『諸君!』2007年7月号 秦郁彦、大沼保昭荒井信一「激論 「従軍慰安婦」置き去りにされた真実」
  28. ^ “慰安婦の真実を 秦郁彦氏の著書を英訳出版”. (2018年10月31日). オリジナルの2023年2月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230219020836/https://www.sankei.com/article/20181031-QCNYXI3Y35IADNYIKNCIERNUTM/ 2023年2月19日閲覧。 
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  31. ^ 【詳報】「強制連行があったとするマグロウヒル社の記述は誤り」従軍慰安婦問題で、秦郁彦氏、大沼保昭氏が会見 (1/2)”. LINE株式会社. 2022年5月21日閲覧。
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  41. ^ (3ページ目)「陣中日記」改ざん、都合が悪い1冊を「電車で紛失」…戦時中の「伝説や史料」その“真贋””. 文春オンライン. 文藝春秋. 2022年5月4日閲覧。
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  45. ^ 産経新聞』2015年11月25日
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  59. ^ 奈良岡聰智 (2016年12月22日). “「現代の古典」を読む”. 中央公論新社. オリジナルの2017年1月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170102071812/http://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/098317.html 
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  62. ^ 秦郁彦『慰安婦と戦場の性』新潮社、1999年6月30日、383頁。 
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  64. ^ 永井和 日本軍の慰安所政策について『二十世紀研究』創刊号、2000年
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  68. ^ 「京都大学経済学研究科東アジア経済研究センター ニュースレター」2015年2月2日発行 第555号、京都大学経済学研究科教授堀和生『東アジアの歴史認識の壁』[1]
  69. ^ a b 今田真人『吉田証言は生きている』共栄書房、2015年4月10日、80-81,164-167,159-161,91,169-179,172-176頁。 
  70. ^ 南雲和夫・法政大学講師 (1999). “写真の『引用』と『盗用』 秦郁彦『慰安婦と戦場の性』の写真盗用問題について”. マスコミ市民 (10). 
  71. ^ 日本の論点』文藝春秋1999
  72. ^ 異様な肺ガンの急増ぶり/秦郁彦(現代史家)『愛煙家通信』No.2
  73. ^ 上:竹前栄治天川晃 共著
  74. ^ 文藝春秋 80周年記念出版 世界戦争犯罪事典






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