福神漬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 22:16 UTC 版)
起源
起源については、いくつか説がある。一般には山田屋(現・酒悦)が開発し、梅亭金鵞が命名したとする説が支持されている[4]。
- 寛文12年(1672年)、出羽国雄勝郡八幡村(現・秋田県湯沢市)出身の了翁道覚が、上野寛永寺に勧学寮を建立した[5]。勧学寮では寮生に食事が出され、おかずとして了翁が考案したといわれる漬物が出された[5]。ダイコン、ナス、キュウリなど野菜の切れ端の残り物をよく干して漬物にしたもので、輪王寺宮がこれを美味とし「福神漬」と命名し、巷間に広まったとされる[5]。
- 1877年(明治10年)頃[3]もしくは1885年(明治18年)に[4]、江戸から東京に変わった上野の漬物店「山田屋」(現在の酒悦)の店主・第15代野田清右衛門が開発した[6][7]。ダイコン、カブ、ナス、ウリ、ナタマメ、レンコン、ゴボウ、シソなどをみりん醤油で煮たものだったという[4]。自分の経営する茶店で売り出したところ評判となり、日本全国に広まった。日暮里の浄光寺に、清右衛門の表彰碑が存在する[8]。名づけ親は、これを大いに気に入った当時の流行作家である梅亭金鵞[4][9][10][11][12]で、「ご飯のお供にこれさえあれば他におかずは要らず、食費が抑えられ金が貯まる(=家に七福神がやってきたかのような幸福感)」という解釈で、7種類の野菜を使用し店が上野不忍池の弁才天近くにあったことから「福神漬」と命名したとされる[4][13][7]。(清右衛門が梅亭金鵞に命名を依頼したとする説もある[4]。)また、この名称が広がることを願った清右衛門は、商標登録をしなかった[12]。
- 1886年(明治19年)に上野公園で開かれた品評会にこの漬物が出品されたが、名前がなかった[4]。7種類の素材で作った漬物だったことから、七福神になぞらえて福神漬と命名された[4]。
なお、白土三平の漫画『カムイ伝』では、登場する架空の商人・夢屋がお盆が済んだ後に捨てられた供え物のナスやキュウリを刻んで漬け、「やたら漬」の名で売り出し評判を呼んだものとあるが、あくまで創作と推測される。「やたら漬」自体は、「いろいろな野菜を刻み、取り混ぜて漬けたもの」(『岩波国語辞典』第6版)として各地に存在している。
福神漬は日清戦争・日露戦争で日本軍兵士の携帯食として支給されたことで、日本人の間で認知度が向上した[6]。日本軍では野外演習の際に、缶詰入りの福神漬に湯または水をかけ、硬めに炊いたご飯に混ぜて食べていた[14]。また、植物学者の大渡忠太郎は、1896年(明治29年)に牧野富太郎とともに台湾へ植物採集に出かけた際に福神漬を持っていったと述べている[15]。
- ^ 編:文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会 編「6 野菜類」『日本食品標準成分表』(2015年版(七訂))、2015年12月25日。ISBN 978-4-86458-118-9 。2022年6月20日閲覧。
- ^ 野瀬泰申「「漬物を煮る」北陸・甲信 「ありえない」九州・四国 漬物(8)」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2017年3月24日。2023年11月17日閲覧。
- ^ a b c d 【なるほど!ルーツ調査隊】カレーに福神漬、もとは代用?チャツネ切らし、好評で定着『日本経済新聞』夕刊2022年7月25日くらしナビ面(2022年7月28日閲覧)
- ^ a b c d e f g h i j k l 河野 編 1991, p. 150.
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- ^ “浄光寺にある福神漬の碑”. 東京中央漬物. 2022年2月26日閲覧。
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- ^ 東京ガス『福神漬け』
- ^ 江戸美学研究会
- ^ a b 神社と神道 参考文献『図説 七福神』戎光祥出版
- ^ クリナップ
- ^ “福神漬混ぜ飯のつくりかた”. 再現! 大正・昭和の味. 栃木県護国神社. 2022年3月4日閲覧。
- ^ 大渡 1899, p. 355, 357.
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- ^ a b c d megaya (2018年7月10日). “「カレー以外に合わない」は間違い!老舗の漬物メーカーに福神漬レシピを聞いたら潜在能力ハンパなかった”. ノオト. ぐるなび. 2022年3月4日閲覧。
- ^ a b 前田 1994, pp. 257–258.
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- ^ “福神漬を使ったレシピコンテスト”. 新進. 2022年3月4日閲覧。
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- ^ 平出鏗二郎『東京風俗志』1902年
- ^ 『時事新報』1912年7月7日
- ^ 水上瀧太郎『出張日記』1940年
- ^ 阪田寛夫『わが小林一三 清く正しく美しく』P211
- ^ 『時事新報』1928年6月20日、6月29日
- ^ a b c “「カレー用」と名の付く福神漬はなぜ赤くないのか?”. Excite Bit コネタ. エキサイト (2006年11月9日). 2022年2月27日閲覧。
- ^ カーツさとう (2021年9月13日). “福神漬けはなぜ赤い?本当は何色?”. おとなの週末Web. 講談社ビーシー. 2022年3月4日閲覧。
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- ^ 石川和彦 (2021年7月15日). “脇役じゃないよ カレー味の福神漬 鳥取の高校生開発”. 朝日新聞. 2022年3月4日閲覧。
- ^ “福神漬けカレーパン”. たいようパン. 2022年3月4日閲覧。
- ^ “2019 よこすか海軍カレー”. カレーの街よこすか推進委員会 (2019年5月). 2022年3月4日閲覧。
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