福神漬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 22:16 UTC 版)
カレーとの関係
日本では、カレーライスに添えられる定番の漬物である[9]。新進は、2009年(平成21年)より毎年テーマを設定して、福神漬を使ったアイディアレシピを募集している[25][29]。
1902年(明治35年)から1903年(明治36年)頃[3][9]日本郵船の[6]欧州航路客船で、一等船客にカレーライスを供する際に添えられたのが最初であり、それが日本中に広まったとされる[30](なお、二・三等客にはたくあんが添え物として提供されていた[5][6])。当初、カレーライスにはインドカレーの添え物であるチャツネが添えられていたが、ある時チャツネを切らしてしまい、コック用の福神漬で代用したのだとされる[3][16]。
しかし実際は、福神漬は洋食のライスに添えられていたものであって、カレーライスにだけ添えられていたわけではない。昔から日本人にはご飯と漬物という組み合わせが当たり前であって、日清戦争のときには色々な漬物が米と一緒に戦地に送られていた[31]。ただし発酵食品である漬物は悪くなりやすく、非発酵食品である福神漬が脚光を浴びることになった。日露戦争のときに陸軍省は缶詰製造所を建設して、福神漬の缶詰を製造し戦地に送った[32]。戦地で毎日福神漬とご飯を食べていた兵隊が帰国してから、日本中で福神漬のブームが起こった[33][34][35]。明治時代の終わり頃になると洋食店が庶民化してきて、主食をパンからご飯に替えるお店が増えた。そのときにお供となる漬物を、流行っていて悪くなりにくい福神漬にするお店が多かった[36][37][38]。
本来の福神漬は無着色であったが、第二次世界大戦後、チャツネに倣って赤くなったという説がある[39]。カーツさとうは、赤いチャツネが珍しいことからこの説に疑問を呈し、ご飯に映える色として赤が選ばれた、という自説を披露した[40]。
庶民にカレーと福神漬の組み合わせを広めたのは、帝国ホテル、資生堂パーラー、梅田阪急百貨店などが有力な説となっている[41]。
市販品では、人工着色料などを使って真っ赤な色をつけられたものが多かったが、その後開発された「自己主張し過ぎない」オレンジ色をしたカレー用製品が好評を博し[39]、色をつけない茶色の福神漬も支持を得るようになった。「カレー専用」として初めて売り出したのは、やまう株式会社で、1969年(昭和44年)のことである[39]。新進では、従来からの赤く着色した福神漬と、カレー用福神漬を併売しており、関東地方ではカレー用の方が売れるが、北海道・東北地方では赤い福神漬の方が売り上げが良いという[25]。メーカー側からすれば、JAS規格の変更により合成着色料の使用が禁止されたため、コストのかかる天然着色料で赤くするよりも、黄色系の方が安く済むという事情がある[42]。
海軍カレーなどのように、福神漬の汁を隠し味に使うこともある[43]。鳥取県立倉吉農業高等学校は2021年(令和3年)に「カレー味の福神漬」を開発し、瓶詰にして200個限定で販売した[44]。福神漬の入ったカレーパンを生産するメーカーもある[45][46]。
- ^ 編:文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会 編「6 野菜類」『日本食品標準成分表』(2015年版(七訂))、2015年12月25日。ISBN 978-4-86458-118-9 。2022年6月20日閲覧。
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