東武バス 沿革

東武バス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 06:16 UTC 版)

沿革

東武鉄道グループのバス事業者(東武ダイヤルバスは2008年に日光交通に統合、東武バスイーストは2021年に東武バスセントラルに統合)

東武バスの生い立ち

東武バスの歴史は、昭和初期に東武鉄道が2本建ての経営形態によりバス事業を開始したことに始まる。その一つは、1933年10月17日に傍系会社として毛武自動車を設立し東武本社内で創立総会を開催し、群馬県内や太田 - 熊谷間などでのバス事業を同年10月27日に開始した[4]。もう一つは、翌1934年4月1日に東武鉄道本体が埼玉県川越地区において直営の路線バス事業を開始したものである。以後、おおむね東武本線沿線は毛武自動車、東武東上線沿線は直営によってバス路線の拡張が進められることとなるが、関東地方では他の大手私鉄と比べるとバス事業開始の時期が遅かったため、既に沿線には多数の中小バス事業者が乱立しており、事業の拡張は主にそれらの買収・合併により進められた。

毛武自動車は当初、本社を東武本社内、営業所を群馬県太田市にを置き、太田や桐生、埼玉県の熊谷周辺に路線を有していたが、創業から1年が経った1934年には早くも両毛回進社、東毛自動車、毛武遊覧自動車の3社を合併し、事業規模を拡大した。さらに周辺事業者の買収を行い、1935年6月1日には群馬県北部における営業を本格化するため前橋営業所を設置。翌1936年に騎西自動車、野州自動車等を買収し、加須(埼玉県)や栃木渋川(群馬県)に営業所を新設した(前橋は渋川の出張所となる)。これらの買収により事業区域が毛武地方外にも拡大したことから、1936年9月に社名を東武自動車と改めた[4]

東武自動車は1937年、奥日光自動車、赤城山自動車、坂東自動車を合併し、利根地方に路線を拡大するとともに沼田営業所を設置した。また同年には、桐生市内線等を運営する桐生市街自動車も合併し、両毛地方の桐生、伊勢崎館林にも営業所を開設した。

一方、川越地区において開業した東武鉄道の直営バスも、その後徐々に周辺事業者の買収を繰り返し、成増や埼玉県の越生松山草加周辺等へと路線網を拡大していた。1939年に東武鉄道の直営バス事業を東武自動車が引き継ぐことでバス事業の一元化が図られることとなり、旧:東武直営バスの車庫は川越営業所、草加営業所となった。さらに同年、傍系会社の京水モーターバス、埼玉自動車、英自動車の3社を合併、それぞれの事業を南千住、熊谷下館の各営業所を設置して継承した。

戦時統合

日中戦争以降の戦争拡大に伴う物資不足によりバス事業の継続が困難となる中で、鉄道省は交通統制の必要から陸上交通事業調整法を施行し、1941年より地域ごとにバス事業者の統合を命じていった。これに従い、東武自動車は埼玉・群馬・茨城・栃木各県における統合主体となって多数の事業者を買収。さらに太平洋戦争下の1943年に傍系の茨城急行自動車(現存する同名の茨城急行自動車とは異なる)、群馬自動車、上武自動車の3社を合併し、中之条本庄に営業所または出張所を置いて事業を継承した。また1944年には、東武鉄道が総武鉄道(東武野田線の前身)を合併したことにより引き継いだバス事業を東武自動車が譲受し、大宮野田両営業所を設置した。

都内においては、常磐線東南部の路線が京成電鉄に併合されることになったため、南千住営業所の路線のうち、千住大橋 - 堀切間を同社に譲渡した。さらに1942年に南千住営業所に対して疎開命令が下ったため、これを西新井に移転して西新井営業所とした。また1945年には花畑乗合自動車を合併し、草加 - 北千住間などの路線を継承している。

戦後の発展

第二次世界大戦後の1947年には、東武鉄道が東武自動車および日光軌道を再度合併し、以後2002年に分社化されるまでの東武鉄道のバス事業の基礎が確立された。その後も千葉、埼玉、群馬で路線の拡大を図っていく。また他の事業者の買収やグループ化なども行っており、1958年には阪東自動車を傘下に入れている。

路線撤退と移管

1970年代の路線バス(旧塗装、日野・RE120

しかし1970年代に入ると、群馬県を始めとする北関東地域での急速なモータリゼーションとそれによる道路渋滞の発生、鉄道網の発達による利便性の向上、山間部における過疎化など、日本全国の各地で見られた問題が影響し、徐々に東武鉄道のバス事業は縮小していくこととなった。

1980年代には輸送人員が1970年前後の約2割程度まで激減(8割減)した結果、特に関東地方北部の栃木県・群馬県および埼玉県北部において、路線の廃止や東武グループの貸切バス事業者への移管が進められていくようになった。この地域は東武鉄道による独占営業地帯であったことと、他に例を見ない急速な路線撤退であったため、その過程において1986年には館林市が全国初の「バスの走らない市」にまで至る事態につながった。

地域分社化

しかしこの急速な路線撤退にもかかわらず、東武鉄道のバス事業は赤字へと転落することとなった。このため1990年以降は、さらなる路線の縮小や東武グループ以外の事業者への移管を推し進めた。2000年以降には従来東京のベッドタウンとして団地線を中心に収益を生み出していた埼玉県南部の地域の路線も移管されはじめた。そうした厳しい状況下で、東武鉄道は経営改善を目指すために社内分社など様々な方策を検討することとなった。

その結果、東武鉄道本体の労働コストのままバス事業を続けていくことは困難であるとして、2001年9月にバス事業の分社化を決定した。バス事業を資産管理会社東武バス、運行会社をエリアごとに東武バスイースト東武バスセントラル東武バスウエスト東武バス日光の4社に地域分社化し、2002年1月30日に各子会社を設立して移管が実施された。だが移管後もつくばエクスプレスの開業などにより大きな影響を受けることとなった。

2020年以降は新型コロナウイルス感染症による乗客減に見舞われ、税負担が軽減される1億円への減資を2021年6月22日の株主総会で決めた(実施は同年9月1日予定)[5]。翌年にも首都圏における緊急事態宣言の発出による外出自粛や企業のリモートワーク推進により乗客減が続く中で[3]、将来的な少子高齢化も見据えたバス事業の安定的継続と収益力強化を図るためとして[3]、東武バスは2021年7月1日付のニュースリリースで、運行エリアの近い東武バスセントラルと東武バスイーストの統合を発表[3][6]。東武バスセントラルを存続会社として東武バスイーストを吸収合併した[3]。これにより東武バスイーストの営業所は東武バスセントラルの営業所となり[3]、東武バスイースト株式会社は消滅した。


注釈

  1. ^ 積水化学工業東京工場。朝霞市根岸台3丁目。1953年開設、2015年閉鎖[19]。跡地は同社によって再開発され、セキスイハイムの分譲住宅とショッピングセンター「くみまちモールあさか」が建設され、カインズイトーヨーカドーが出店した[20]
  2. ^ 立教高等学校が1960年に西池袋から新座市へ移転したことに伴う路線新設。
  3. ^ 現在の筑西市中舘、国道50号下館バイパス付近にあった。

出典

  1. ^ a b c d 東武バス株式会社 第20期決算公告
  2. ^ a b 東武バス株式会社 第22期決算公告
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 東武バスセントラル株式会社と東武バスイースト株式会社の合併について 東武バスグループ、2021年7月1日] (PDF)
  4. ^ a b c d e f g 大島 2002, p. 12.
  5. ^ 東武バス、1億円に減資 税制上「中小企業」に 日本経済新聞ニュースサイト(2021年7月16日)2021年7月18日閲覧
  6. ^ 東武バス、グループ会社2社を10月1日付で合併 日刊自動車新聞電子版、2021年8月2日
  7. ^ a b 佐藤信之『房総の乗合自動車 戦時統合までの事業規制の変遷と企業統合整理のプロセス』崙書房、1988年2月。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo 「交通網の展開と地域社会」柏市史編さん委員会 編『柏市史 近代編』柏市教育委員会、2000年3月
  9. ^ a b 『八潮市史 史料編 別巻 潮止月報・八潮だより』八潮市役所、1979年3月30日。
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw bx by bz ca cb cc cd ce cf cg ch ci cj ck cl cm cn 東武鉄道年史編纂事務局 編『東武鉄道六十五年史』東武鉄道、1964年(昭和39年)
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw bx by bz ca cb cc cd ce cf cg ch ci cj ck cl cm cn co cp cq cr cs ct cu cv cw cx cy cz da db dc dd de df dg dh di dj dk dl dm dn do dp dq dr ds dt du dv dw dx dy dz ea eb ec ed ee ef eg eh ei ej ek el em en eo ep eq er es et eu ev ew ex ey ez fa fb fc fd fe ff fg fh fi fj fk fl fm fn fo fp fq fr fs ft fu fv fw fx fy fz ga gb gc gd ge gf gg gh gi gj gk gl gm gn go gp gq gr gs gt gu gv gw gx gy gz ha hb hc hd he hf hg hh hi hj hk hl hm hn ho hp hq hr hs ht hu hv hw hx hy hz ia ib ic id ie if ig ih ii ij ik il im in io ip iq ir is it iu iv iw ix iy iz ja jb jc jd je jf jg jh ji jj jk jl jm jn jo jp jq jr js jt ju jv jw jx jy jz ka kb kc kd ke kf kg kh ki kj kk kl km kn ko kp kq kr ks kt ku kv kw kx 東武鉄道社史編纂室編『東武鉄道百年史 沿線とともに歩んだ百年』東武鉄道、1998年(平成10年)9月
  12. ^ a b c 大島 2002, p. 23.
  13. ^ 日外アソシエーツ編集部 編『日本災害史事典 1868-2009』日外アソシエーツ、2010年9月27日、80頁。ISBN 9784816922749 
  14. ^ a b 『広報まつど』松戸市役所。
  15. ^ a b 『有価証券報告書総覧』大蔵省印刷局
  16. ^ a b c d e f 三郷市史編さん委員会 編『三郷市史 第7巻(通史編 II 近代・現代編)』三郷市役所
  17. ^ 大島 2002, p. 25.
  18. ^ a b 『沼南町史 第1巻』沼南町役場、1979年。
  19. ^ 積水化学グループのまちづくり「SEKISUI Safe&Sound Project」について 2018年5月21日、積水化学工業株式会社
  20. ^ くみまちモールあさか
  21. ^ a b c 柏市長公室広報公聴課 編『柏市政要覧』柏市役所
  22. ^ a b c d 『広報流山』流山市役所。
  23. ^ a b 大島 2002, p. 27.
  24. ^ 『全国バス路線要覧』全国旅客自動車要覧編集室
  25. ^ 大島 2002, p. 26.
  26. ^ 大島 2002, p. 29.
  27. ^ 会社概要 川越観光自動車株式会社
  28. ^ a b 『広報あびこ』我孫子市役所。
  29. ^ 大島 2002, p. 56,61.
  30. ^ a b c 大島 2002, p. 62.
  31. ^ 大島 2002, p. 52.
  32. ^ 会社概要”. 東武ダイヤルバス. 2008年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月3日閲覧。
  33. ^ 『三郷市統計』三郷市役所。
  34. ^ 『草加市統計』草加市役所。
  35. ^ a b c d e 『広報かしわ』柏市役所。
  36. ^ a b c d e f g h i j k l m 『都市交通年報』運輸省。
  37. ^ a b c d e f 『足利市統計』足利市役所。
  38. ^ a b c 鉄道ジャーナル』1987年4月号、通巻245号(第21巻第5号)、p.140。鉄道ジャーナル社
  39. ^ a b c d e f g 『八潮市統計』八潮市役所。
  40. ^ 大島 2002, p. 90.
  41. ^ a b c バスジャパン ハンドブックシリーズ S89 東武バス 東野バス』BJエディターズ/星雲社、2015年9月1日。 
  42. ^ 大島 2002, p. 99.
  43. ^ 大島 2002, p. 100.
  44. ^ 大島 2002, p. 101.
  45. ^ a b 大島 2002, p. 102.
  46. ^ a b c 大島 2002, p. 103.
  47. ^ 大島 2002, p. 112.
  48. ^ 会社概要 東武バスOn-Line、東武バス株式会社、2021年11月19日閲覧。
  49. ^ 現在の柏53系統。
  50. ^ a b 「柏市でコミュニティバスが運行開始」『バスラマ・インターナショナル No.105』 2008年1月号 Vol.10 No.1、ぽると出版、2007年12月25日、92頁。ISBN 978-4-89980-105-4 
  51. ^ かしわコミュニティバス”. 柏市役所 (2017年8月18日). 2019年5月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月16日閲覧。
  52. ^ a b 天沼営業所と岩槻営業所の統合について|新着情報|東武バスOn-Line”. www.tobu-bus.com. 2022年7月27日閲覧。
  53. ^ 東武バスセントラル・ウエストの運賃改定について|新着情報|東武バスOn-Line”. www.tobu-bus.com. 2023年7月24日閲覧。
  54. ^ a b 東武バスセントラル株式会社 第21期決算公告
  55. ^ a b 東武バスウエスト株式会社 第21期決算公告
  56. ^ a b 東武バス日光株式会社 第21期決算公告
  57. ^ a b 東武バスイースト株式会社 第19期決算公告
  58. ^ 東武交通広告 東武鉄道[リンク切れ]
  59. ^ 関東自動車株式会社と東野交通株式会社の経営統合(合併)に関するお知らせ” (PDF). みちのりホールディングス (2018年5月25日). 2022年8月13日閲覧。
  60. ^ 小江戸川越一日乗車券|路線バス|東武バスOn-Line”. www.tobu-bus.com. 2022年9月28日閲覧。
  61. ^ 8/31圏央ライナー川越湘南線系統廃止について”. 東武バス (2022年8月2日). 2022年8月5日閲覧。
  62. ^ 【高速バス】圏央ライナー川越湘南線の運行再開について』(PDF)(プレスリリース)神奈川中央交通西、2022年8月2日https://www.kanachu.co.jp/news/pdf01/eigyo2/new_folder2/HP_1.pdf2022年8月5日閲覧 
  63. ^ ミッドナイトアロー伊奈・内宿”. 東武バス. 2021年5月8日閲覧。
  64. ^ ミッドナイトアロー岩槻・春日部”. 東武バス. 2021年5月8日閲覧。
  65. ^ ミッドナイトアロー岩槻”. 東武バス. 2021年5月8日閲覧。
  66. ^ ッドナイトアロー久喜・東鷲宮”. 東武バス. 2021年5月8日閲覧。
  67. ^ ミッドナイトアロー東松山・森林公園”. 東武バス. 2021年5月8日閲覧。
  68. ^ 【運行情報】深夜急行バス(ミッドナイトアロー)の運休および一部系統廃止について”. 東武バス. 2020年10月12日閲覧。
  69. ^ ノンステップバス導入率が高い事業者ベスト30 平成27年3月31日現在 (PDF, 国土交通省)
  70. ^ ノンステップバス導入率が高い事業者ベスト30 平成30年3月31日現在 (PDF, 国土交通省)
  71. ^ 埼玉県初!(※)人と環境にやさしい「燃料電池バス」を導入いたします! (東武バス 2020年11月19日)
  72. ^ 10/21 第3回東武バスフェスティバル開催および復刻デザイン車両の導入について 東武バスOn-Line、2017年10月17日、2020年6月2日閲覧






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「東武バス」の関連用語

東武バスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



東武バスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの東武バス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS