三井家 財閥解体と三井家

三井家

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/15 18:59 UTC 版)

財閥解体と三井家

1947年3月14日、内閣総理大臣吉田茂持株会社整理委員会の上申に基づき、三井十一家の当主をいわゆる「財閥家族」に指定した。対象は次のとおりであった。

  • 八郎右衛門高公(北家(惣領家)当主)
  • 高長(たかひさ、伊皿子家)
  • 高遂(たかなる、新町家)
  • 高大(たかひろ、室町家)
  • 高陽(たかはる、南家)
  • 高修(たかなが、小石川家)
  • 高周(たかかね、松阪家)
  • 高篤(たかあつ、永坂町家)
  • 高昶(たかあきら、五丁目家)
  • 高義(一本松町家)
  • 高孟(たかおさ、本村町家)

三井家の親族・姻戚関係

三井家は十一の家が共同で事業を所有・運営していたため、その親族・姻戚関係は著しく広範囲である。ここでは、明治に入ってからの三井十一家の主要な親族・姻戚関係について述べる。

  • 北家では、10代目高棟の次女(11代目高公の妹)が、五摂家の一つ・鷹司家に嫁いでいる[13]。高公は4男1女を儲けたが、一人娘は浅野財閥浅野八郎総一郎の弟)の次男に嫁いでいる[14]。三井物産に勤務していた三井之乗は高公の四男[15]
  • 伊皿子家高長は北家10代目高棟の三女と結婚し2男3女を儲けた[13][16]。三女(博子)の夫はトヨタ自動車元社長の豊田章一郎である[16]
  • 高長の弟・高勅は泉姓を名乗って分家したが、旧出羽国久保田藩主・佐竹家の分家である佐竹東家・佐竹義準男爵の長女を娶った[17]。義準の次女は岩崎彦弥太に嫁いでおり、佐竹家を通じて三菱と縁続きになったことになる[17]。なお義準の長男・義利の妻は天文学者平山信の三女である[17] が、平山の弟子・萩原雄祐[18]深井家・小坂家を通じて本村町家と姻戚関係にある[19][20] ため、平山・萩原の師弟はともに三井家と姻戚関係にあるといえる。
  • 室町家高大の父高従(高大養父で室町家11代目高精の兄)は徳大寺実則の娘を妻に迎えている[13]。徳大寺は西園寺公望、15代目住友吉左衛門の兄である。また高従の姉(室町家10代目高保の長女)は鴻池家に嫁いだ。
  • 南家高陽の妻・正子は五摂家・公爵一条実孝の娘[13] だが、実孝の義姉(実孝は養子)は伏見宮家閑院宮家南部氏鍋島氏、宇和島伊達氏などに嫁いでおり、南家はもっとも名家との繋がりの深い一族となった。
  • 本村町家高孟の父で本村町家2代目の弁蔵は5男1女を儲けたが、長女は小坂徳三郎に嫁いだ[19][21][22]。小坂家は長野県の地方財閥で、泉家(伊皿子家分家)の項で既述のように深井家及び萩原家と姻戚関係をもつ名家である[19][23]。弁蔵の弟(本村町家初代高明の次男)高親は井原姓を名乗って分家したが、その子は日本テレビのディレクター・プロデューサーとして、「光子の窓』『シャボン玉ホリデー』『巨泉・前武のゲバゲバ90分!!』『11PM』など、テレビ史に名を残すヒット番組を手がけた井原高忠である。
  • 永坂町家高篤の父・高泰(一般に幼名の「守之助」で知られる)は、12代目住友吉左衛門友親の娘・楢光を妻に迎えている。高篤には弟と3人の妹がいたが、一番下の妹は益田孝の孫と結婚した。
  • 小石川家では、6代目当主・高益は実の男子が夭折したことから南家5代目当主・高英の八男・高喜を養嗣子として迎えた。高益の四女で高喜の義妹がNHK連続テレビ小説あさが来た』の主人公のモデルとなった広岡浅子である[24]。同じく小石川家の10代目当主・三井高進は日本リーダーズ・ダイジェスト社の漫画誌「ディズニーの国」編集長を務め、当時部下だった今江祥智に、三井家をモデルとする『大きな魚の食べっぷり』執筆のインスピレーションを与えた。高進は参議院議員植竹春彦の娘と結婚したが、のち離婚した。
  • 松坂家の三井高周は三井石油開発監査役[25]。妻は愛媛大学長の娘で、義兄は大阪大学総長。高周の娘・三井史子は聖心女子大学英文科在学中に浩宮の妃候補として名が上がったが、弘世現の孫の弘世晃嗣郎(ニッセイアセットマネジメント専務取締役)に嫁ぎ、二男一女をもうけた。

系譜

実線は実子、点線(縦)は養子、点線(横)は婚姻関係。
藤原基忠
 
 
 
 
信忠[注釈 1]
 
 
 
 
信生
 
 
 
 
信政
 
 
 
 
目賀田信俊
 
 
 
 
定信
 
 
 
 
信文
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
定義三井信堯1
 
 
 
 
信良2
 
 
 
 
定良3
 
 
 
 
定道4
 
 
 
 
定乗[注釈 2]5
 
 
 
 
乗定6六角満綱
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
定条
 
 
鯰江(三井)高久7
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
定仍鯰江尚昌三井実忠8
 
 
 
 
 
 
 
 
乗綱鯰江氏安隆9
 
 
 
 
 
 
藤堂虎高高安10
 
 
 
 
 
 
藤堂氏高俊11
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
高次高利12
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
高平13高富高治高伴高久高春高賢高古
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
惣領家伊皿子家新町家室町家南家小石川家松坂家永坂町家

  1. ^ 源信宗の実子(『尊卑分脈』)。
  2. ^ 定道の孫、義堯の子。
  1. ^ a b “三井家発祥の地・松阪”. 三井広報委員会. https://www.mitsuipr.com/history/edo/01/ 2023年8月19日閲覧。 
  2. ^ 華族大鑑刊行会 1990, p. 578/618/641.
  3. ^ 『日本の上流社会と閨閥』 52頁。
  4. ^ 『成熟する江戸 日本の歴史 17』 93-94頁。
  5. ^ 賀川隆行「近世商人の同族組織」(初出:『日本の社会史』第6巻(岩波書店、1988年)/改題所収:賀川「三井家の同族組織」『近世江戸商業史の研究』(大阪大学出版会、2012年) ISBN 978-4-87259-392-1 P331-363)
  6. ^ 上野勝久「関東地方内陸部の産業施設についての近代建築技術史を軸とする調査研究 : 内務省勧業寮屑糸紡績所(現カネボウ食品工業新町工場)の建築について清水慶一・中島久男・山口義弘 : [国立科学博物館研究報告E類ol.12"8912"pp.29~46図版15](建築歴史・意匠)(文献抄録)」『建築雑誌』第1301号、日本建築学会、1990年7月、158頁、ISSN 00038555NAID 110003793559  (要購読契約)
  7. ^ 官報
  8. ^ 官報
  9. ^ a b 第1節 三井家の邸宅とその特徴/p73『明治・大正昭和戦前期における和風大邸宅の変容と展開に関する史的研究 : 近代和風建築史確立のための基礎的研究』大川三雄、2000、国立国会図書館
  10. ^ 「越後屋」は世界トップ級の小売店…三井家史料に見つけた「別腹」の文字 産経新聞、2015.5.8
  11. ^ a b 『門閥』 252-253頁。
  12. ^ a b 神『閨閥』 388-389頁。
  13. ^ a b c d 『門閥』 252頁。
  14. ^ 『門閥』 253頁。
  15. ^ 神『閨閥』 388-389頁、392-393頁。
  16. ^ a b 『門閥』 254頁。
  17. ^ a b c 『昭和人名辞典 第1巻 東京編』
  18. ^ 『現代天文学講座 別巻 天文学人名事典』 284頁。
  19. ^ a b c 『財界家系譜大観』 第6版 - 第8版
  20. ^ 佐藤『閨閥』 320-321頁、324-326頁。
  21. ^ 『門閥』 255頁。
  22. ^ 佐藤『閨閥』 320-321頁、324頁。
  23. ^ 佐藤『閨閥』 320-321頁、325-326頁。
  24. ^ 京都に生まれ、大坂の豪商・加島屋に嫁ぐ - 大同生命の源流(大同生命制作の特設サイト) 内のページ。
  25. ^ 三井高周氏死去/元三井石油開発監査役 四国新聞、2010/01/20


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