ヒメフチトリゲンゴロウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/13 21:51 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動ヒメフチトリゲンゴロウ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ヒメフチトリゲンゴロウ成虫(メス個体)の標本
| |||||||||||||||||||||||||||||||||
保全状況評価 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
絶滅危惧II類(環境省レッドリスト) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Cybister rugosus (W. S. MacLeay, 1825)[9] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ヒメフチトリゲンゴロウ |
日本国内では奄美大島以南の南西諸島[注 3]に分布する[11]。
特徴
南西諸島ではフチトリゲンゴロウに次ぐ大型種で[12]、体長27 - 33ミリメートルとコガタノゲンゴロウより大型である[13]。体形は卵型で比較的厚みがあり、背面は褐色か緑色を帯びた黒で強い光沢があるが、メスは光沢が弱い[10]。頭楯・上唇・前胸背・上翅の側縁部は黄色から淡黄褐色で、この上翅の黄色帯は肩部分を除き側縁に達せず、翅端部で釣り針の先端部のように広がる[10]。頭部は前頭両側・複眼内縁部に浅いくぼみがある[10]。前胸背はオスでは前縁部に点刻がある他は滑沢だが、メスでは中央部でやや弱くなるものの、全面に強いしわがある[10]。上翅には3条の点刻列を持ち、オスでは滑らかだが、メスでは翅端部を除き強いしわがある[10]。触角・口枝は黄褐色で、前脚・中脚は黄褐色で中跗節は暗褐色、後脚は黒色だが転節端部・腿節端部・脛節端部は黄褐色、後脚跗節にはオスでは両側に、メスでは内側のみに遊泳毛を持つ[10]。腹面は黒色で光沢が強く、後胸腹板・後基節は中央部を除き黄色となる[10]。腹部第1節から第5節の側方も黄色で、第1節の紋は内方に広がる[10]。オスの交尾器中央片は先端後方でわずかにくびれ、先端部は二又状で浅く湾入する[10]。
分布・生態
同属のフチトリゲンゴロウ・トビイロゲンゴロウと同様に南方系の種で[11]、南西諸島のほか中国(中華人民共和国)・東南アジア・インド・アッサム[10]・ミャンマー・インド・スリランカなどに分布する[11]。
水質良好で水生植物が豊富な池沼・湿地などに生息する[14]。池沼・放棄水田のみならず、水生植物が繁茂する水域であれば深いダムから浅い湿地まで多様な水域で見られる種で[11]、かなり富栄養な浅い水域でも生息していることがある[15]。フチトリゲンゴロウと同じく希少種であるが[15]、個体数はフチトリゲンゴロウと比較すればやや多く、特に面積の広い場所では比較的発見例が多い[16]。
生活史の詳細は不明で[17]、繁殖期は主に夏だが、沖縄県の八重山列島ではほぼ1年を通して幼虫が観察されるため、低緯度地域ほど繁殖期が長期にわたると考えられる[14]。
注釈
- ^ 森・北山(2002)は「ゲンゴロウ類 Dytiscoidea は鞘翅目・食肉亜目(オサムシ亜目)水生食肉亜目に属する」と述べている[1]。
- ^ ゲンゴロウ属 Cybister および同属を含むゲンゴロウ族 Cybistrini は森・北山(2002)ではゲンゴロウ亜科 Dytiscinae に分類されているが[3]、Anders N. Nilsson の論文(2015)では Dytiscinae 亜科から Cybistrinae 亜科を分離し[5]、ゲンゴロウ族 Cybistrini を Cybistrinae 亜科に分類する学説が提唱されている[6]。中島・林ら(2020)はゲンゴロウ類の分類表(307頁)にてゲンゴロウ属・ゲンゴロウモドキ属を「ゲンゴロウ科 ゲンゴロウ亜科・ゲンゴロウモドキ亜科」として紹介している[7]。
- ^ 鹿児島県では奄美大島・徳之島・沖永良部島・与論島、沖縄県では沖縄諸島(沖縄本島・伊平屋島・伊是名島・屋我地島・久米島)、池間島、八重山列島(石垣島・西表島・与那国島)・南大東島[11]。
- ^ 「奄美市希少野生動植物の保護に関する条例」に基づく[20][21]。
- ^ 島内の徳之島町・天城町・伊仙町が2012年9月1日付で施行した「希少な野生動植物保護に関する条例」第9条に基づき、2014年1月14日付で新たに指定[22][23]。
- ^ 「竹富町自然環境保護条例」に基づき「特別希少野生動植物種」に指定され[24]、同条例が施行された2017年(平成29年)4月1日以降は町長の許可なく本種個体を捕獲・採取・殺傷または損傷することが禁止されている[25]。
出典
- ^ a b c d 森 & 北山 2002, p. 33.
- ^ 森 & 北山 2002, p. 53.
- ^ a b 森 & 北山 2002, pp. 138-139.
- ^ a b c d 森 & 北山 2002, p. 139.
- ^ A.N.Nilsson 2015, p. 7.
- ^ a b c d A.N.Nilsson 2015, p. 73.
- ^ 中島 et al. 2020, p. 307.
- ^ 森 & 北山 2002, p. 152.
- ^ a b "Cybister rugosus (W. S. MacLeay, 1825)" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2020年3月14日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 森 & 北山 2002, p. 156.
- ^ a b c d e f g h 沖縄県 2017, p. 375.
- ^ 東海大学沖縄地域研究センター 2010, p. 6.
- ^ a b c d 森 et al. 2014, p. 68.
- ^ a b c d e f 環境省 2015, p. 250.
- ^ a b 森 & 北山 2002, p. 157.
- ^ 鹿児島県 2003, p. 170.
- ^ a b 中島 et al. 2020, p. 101.
- ^ 環境省 2018, p. 23.
- ^ “レッドリスト(平成26年改訂) > 昆虫類” (日本語). 鹿児島県 (2014年5月7日). 2019年3月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月19日閲覧。
- ^ “希少野生動植物/鹿児島県奄美市” (日本語). 奄美市 公式サイト. 奄美市 (2013年10月1日). 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “奄美大島自然保護ガイドブック~奄美・琉球を世界自然遺産へ~ (PDF)” (日本語). 奄美市 公式サイト. 奄美大島自然保護協議会. pp. 9-10 (2013年10月1日). 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “徳之島町/徳之島希少野生動植物(追加指定)” (日本語). 徳之島町 公式サイト. 徳之島町 (2014年1月24日). 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “徳之島希少昆虫・野生植物 徳之島版レッドリスト (PDF)” (日本語). 徳之島町 公式サイト. 徳之島地区自然保護協議会 (2012年). 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “希少野生動植物及び特別希少野生動植物の指定について” (日本語). 日本・沖縄県八重山郡竹富町: 竹富町. pp. 4,9,11. 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “竹富町自然環境保護条例” (日本語). 日本・沖縄県八重山郡竹富町: 竹富町. p. 6. 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。 “希少野生動植物保護区の区域内においては、次に掲げる行為は、町長の許可を受けなければ、してはならない。”
- ^ 都築, 谷脇 & 猪田 2003, p. 219.
- ^ 都築, 谷脇 & 猪田 2003, p. 220.
- ^ “希少種ヒメフチトリゲンゴロウの初展示” (日本語). 東京ズーネット. 東京動物園協会 (2017年1月13日). 2019年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月1日閲覧。
- 1 ヒメフチトリゲンゴロウとは
- 2 ヒメフチトリゲンゴロウの概要
- 3 保全状況
- 4 参考文献
- ヒメフチトリゲンゴロウのページへのリンク