ヒメフチトリゲンゴロウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/13 21:51 UTC 版)
保全状況
過去に記録された島で絶滅した島こそないが、生息地消失・個体数減少が進行しており[14]、2018年現在は絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)に指定されている[14][18]。1995年ごろまでは沖縄本島・西表島で多くの個体が見られ[11]、西表島北部の水田地帯では容易に採集できた種だったが、近年は特に八重山列島(石垣島・西表島)で急速に開発が進行し、水田の圃場整備が行われたことで生息地が激減した[13]。鹿児島県レッドリストで絶滅危惧種1類[19]・沖縄県レッドリストでも絶滅危惧II類(VU)に指定されている[11]。
奄美大島(2013年10月1日以降)[注 4]・徳之島(2014年1月24日以降)[注 5][14]・竹富町[注 6]などでは条例で採集が禁止されており[17]、湿地環境保全により本種の生息地が守られている事例もある[14]。沖縄本島では良好な産地が複数確認されているほか、伊是名島・屋我地島・久米島・池間島および南大東島では少数個体が確認されている[11]。
人間との関係
飼育下では繁殖させやすく、採卵・幼虫育成・大型個体羽化も容易な種類である[13]。飼育方法は基本的にフチトリゲンゴロウと同一だが、本種はフチトリゲンゴロウよりさらに泳ぎが鈍いため[26]足場の水草・流木を多めに入れるほか水深を浅めにすることが望ましい[27]。成虫飼育も寿命が2年 - 3年と長く泳ぎ・捕食動作もゆったりしているため、過密飼育になっても触角・脚先跗節の欠損・共食いなどは出にくい[13]。
多摩動物公園昆虫園(東京都日野市)では2015年より沖縄県・八重山列島石垣島産の本種を飼育・繁殖する活動に取り組んでおり、2017年1月2日からは昆虫園本館1階「水生昆虫コーナー」で従来より展示しているゲンゴロウ・クロゲンゴロウ・コガタノゲンゴロウの3種とともに一般公開を開始している[28]。
注釈
- ^ 森・北山(2002)は「ゲンゴロウ類 Dytiscoidea は鞘翅目・食肉亜目(オサムシ亜目)水生食肉亜目に属する」と述べている[1]。
- ^ ゲンゴロウ属 Cybister および同属を含むゲンゴロウ族 Cybistrini は森・北山(2002)ではゲンゴロウ亜科 Dytiscinae に分類されているが[3]、Anders N. Nilsson の論文(2015)では Dytiscinae 亜科から Cybistrinae 亜科を分離し[5]、ゲンゴロウ族 Cybistrini を Cybistrinae 亜科に分類する学説が提唱されている[6]。中島・林ら(2020)はゲンゴロウ類の分類表(307頁)にてゲンゴロウ属・ゲンゴロウモドキ属を「ゲンゴロウ科 ゲンゴロウ亜科・ゲンゴロウモドキ亜科」として紹介している[7]。
- ^ 鹿児島県では奄美大島・徳之島・沖永良部島・与論島、沖縄県では沖縄諸島(沖縄本島・伊平屋島・伊是名島・屋我地島・久米島)、池間島、八重山列島(石垣島・西表島・与那国島)・南大東島[11]。
- ^ 「奄美市希少野生動植物の保護に関する条例」に基づく[20][21]。
- ^ 島内の徳之島町・天城町・伊仙町が2012年9月1日付で施行した「希少な野生動植物保護に関する条例」第9条に基づき、2014年1月14日付で新たに指定[22][23]。
- ^ 「竹富町自然環境保護条例」に基づき「特別希少野生動植物種」に指定され[24]、同条例が施行された2017年(平成29年)4月1日以降は町長の許可なく本種個体を捕獲・採取・殺傷または損傷することが禁止されている[25]。
出典
- ^ a b c d 森 & 北山 2002, p. 33.
- ^ 森 & 北山 2002, p. 53.
- ^ a b 森 & 北山 2002, pp. 138-139.
- ^ a b c d 森 & 北山 2002, p. 139.
- ^ A.N.Nilsson 2015, p. 7.
- ^ a b c d A.N.Nilsson 2015, p. 73.
- ^ 中島 et al. 2020, p. 307.
- ^ 森 & 北山 2002, p. 152.
- ^ a b "Cybister rugosus (W. S. MacLeay, 1825)" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2020年3月14日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 森 & 北山 2002, p. 156.
- ^ a b c d e f g h 沖縄県 2017, p. 375.
- ^ 東海大学沖縄地域研究センター 2010, p. 6.
- ^ a b c d 森 et al. 2014, p. 68.
- ^ a b c d e f 環境省 2015, p. 250.
- ^ a b 森 & 北山 2002, p. 157.
- ^ 鹿児島県 2003, p. 170.
- ^ a b 中島 et al. 2020, p. 101.
- ^ 環境省 2018, p. 23.
- ^ “レッドリスト(平成26年改訂) > 昆虫類” (日本語). 鹿児島県 (2014年5月7日). 2019年3月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月19日閲覧。
- ^ “希少野生動植物/鹿児島県奄美市” (日本語). 奄美市 公式サイト. 奄美市 (2013年10月1日). 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “奄美大島自然保護ガイドブック~奄美・琉球を世界自然遺産へ~ (PDF)” (日本語). 奄美市 公式サイト. 奄美大島自然保護協議会. pp. 9-10 (2013年10月1日). 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “徳之島町/徳之島希少野生動植物(追加指定)” (日本語). 徳之島町 公式サイト. 徳之島町 (2014年1月24日). 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “徳之島希少昆虫・野生植物 徳之島版レッドリスト (PDF)” (日本語). 徳之島町 公式サイト. 徳之島地区自然保護協議会 (2012年). 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “希少野生動植物及び特別希少野生動植物の指定について” (日本語). 日本・沖縄県八重山郡竹富町: 竹富町. pp. 4,9,11. 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。
- ^ “竹富町自然環境保護条例” (日本語). 日本・沖縄県八重山郡竹富町: 竹富町. p. 6. 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月22日閲覧。 “希少野生動植物保護区の区域内においては、次に掲げる行為は、町長の許可を受けなければ、してはならない。”
- ^ 都築, 谷脇 & 猪田 2003, p. 219.
- ^ 都築, 谷脇 & 猪田 2003, p. 220.
- ^ “希少種ヒメフチトリゲンゴロウの初展示” (日本語). 東京ズーネット. 東京動物園協会 (2017年1月13日). 2019年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月1日閲覧。
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