ネグロイド オーストラロイドなどとの違い

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ネグロイド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/12 06:03 UTC 版)

オーストラロイドなどとの違い

南インドドラヴィダ人オーストラリアアボリジニメラネシアンなどオセアニアの先住民たちは、その肌の色の濃さ、メラネシア人などに関しては巻き毛の頭髪の形状からも黒人と思われる場合もあるが、彼らはオーストラロイドである。またポリネシアンミクロネシアンはモンゴロイドとオーストラロイドの混合人種である。同様にインド亜大陸で人口の70%を占めるアーリア人も同じく肌の色から黒人だと思われる場合があるが、彼らの場合はコーカソイドとオーストラロイドの混合人種である。いずれもアフリカ人とは遺伝的に異なる集団である。

イエズス会士による蔑称

戦国時代、日本に到来したイエズス会員などの南蛮人たち。白人の他、黒人も描かれている。

「黒人」は人種のひとつであるが、人種差別的な見方からすれば蔑称として使用されることがあった。たとえば、イエズス会宣教師フランシスコ・カブラルは、日本人韓国人を黒人とみなし、「黒人」を蔑称として使用している。

カブラルは、日本人を黒人で低級な国民と呼び、その他、侮蔑的な表現を用いた。かれはしばしば日本人にむかい、「とどのつまり、おまえたちは日本人(ジャポンイス)だ」というのがつねで、日本人に対して、日本人が誤った低級な人間であることを理解させようとした。また、イエスズ会は韓国人に対しても黒人で低級な民族であり、周辺民族で最も野蛮な人種としていた。[13]

また、同じくイエズス会巡察師アレッサンドロ・ヴァリニャーノもその著書『東インド巡察記』において、インド人を黒人とみなし、「黒人」を蔑称として使用している[14]

(インド人は)あまりに惨めであまりに卑劣なため、かれらが黒色人種とされても仕方がないのである。 — 『東インド巡察記』第2章
黒色人種はみなほとんど知力がなく性癖も悪い。 — 『東インド巡察記』第26章

ヴァリニャーノのこうした人種差別意識の根拠となったのが、アリストテレス「政治学」第1巻の先天的奴隷説であるとされる[15]

なお、日本人を黒人とみなしたカブラルと異なり、ヴァリニャーノは日本人を白人とみなした[16]

(日本人は)みな色が白く、洗練されており、しかも極めて礼儀正しい。

と、日本人を白人と設定することにより、本国からの布教の支援を受けようとしていた(白人とすると本国から金銭と人的支援が得られたのである)。

アメリカにおける状況

米国などではニグロイド(negroidの英語発音に基づくカナ表記)という言い方は差別用語とされ、政治的に正しく、丁寧な呼び方として「アフリカ系の○○ (African-○○)」を使うことがある。例えばアメリカ人であった場合、アフリカ系アメリカ人 (African-American) という。ネグロイドは元来、人種に対する呼称であり、差別的な意味合いは主に黒人奴隷を使用していた欧米諸国の社会的要因から派生したものである。ニグロと縮めて呼ぶのは前時代的な語法であり、現在では明らかな差別用語とされている。さらに「ニガー (nigger)」 とした場合、その差別的意味は強まる。

米国以外の英語圏では、ブラック・パーソン(black person、複数形はブラック・ピープル - black people)と呼ぶのが社会的、政治的に正しいとされている。これは、南アジア、カリブ、太平洋諸島などアフリカ以外の地域にも肌が黒い人種が存在し、彼らを誤って「アフリカ系」と呼んでしまうことを避けるためである。「ブラック」と縮めた場合は、非公式な意味合いが強まる。

最近の米国では「アフリカ系」がよく使われるが、米国においても、必ずしも「ブラック」という呼称が差別用語にあたるとは限らない。実際に黒人は自分達のことをブラックと呼ぶことも多く、テレビのニュース番組でも「ブラック」という言葉はしばしば用いられる。ただし、明確な差別用語であるニガーという呼称も、アフリカ系同士の間では、仲間意識を込めた呼びかけとしても使用されることからもわかるように、こうした用語をアフリカ系の人が使用する場合と他人種の人が使用する場合では意味合いや受け取られ方が異なる。白人黄色人種が用いる際は用いる文脈に考慮し慎重を期さねば差別語的意味を汲み取られる可能性もあることに注意する必要がある。すなわち「ブラック」という呼称はある意味で転換されたスティグマであり、当該の主体が用いる場合と、第三者が用いることには全く意味が違うことに留意すべきである。

さらに米国における黒人自らの文脈で「ブラック」を用いた例として、黒人公民権運動の中で用いられてきた「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル」というスローガンは象徴的である。同様に黒人コミュニティに関係した団体組織の多くが自ら名称に「ブラック」を用いている。また『Black Hair Style』という黒人専門のヘアスタイル情報誌や、『Black Enterprise』といった黒人専門のビジネス雑誌の存在もこの用例であろう。

日本では「黒人」の言い換え語として研究者は「アフリカン・アメリカン」を使うことが多いが、アフリカ人全てが黒人ではなく、またアメリカにいる黒人全てがアフリカ出身でもないため、この用語には疑問も出ている[17]。しかし、米国などにおいても、アフリカ以外の土地の出身者であっても、黒人ならば「アフリカン・アメリカン」と呼ばれてしまうことが多いのが実情である。なお、アメリカに於いては過去の奴隷政策の反省等から、州ごとに黒人に対する様々な優遇措置があり、これが州法に違反しているとして問題化したこともある。

アメリカ合衆国は1995年に、人種・民族の自称についての国勢調査を行っている。これは、彼ら自身を白人、黒人、ヒスパニックインディアン、アラスカ先住民(インディアン、エスキモーアレウト)であると特定した人々、あるいは混血に対して、それぞれの人種・民族グループの呼称で、定まった呼び名を好まない人や、特に選ぶものがなかった人も含めて、好きな呼称はどれか選んでもらったものである。黒人の場合は、以下の通りであった。混血も含め、単純に「アフリカ系」でない者も含まれて、一番好まれている呼称は「ブラック(黒人)」だった[18]

1. 黒人(Black) 44.15 %
2. アフリカ系アメリカ人(African American) 28.07 %
3. アフロ=アメリカン(Afro-American) 12.12 %
4. ニグロ(Negro) 03.28 %
5. その他の呼称 02.19 %
6. 色つき(Colored) 01.09 %
7. 無回答 09.11 %

注釈

  1. ^ 戦前の日本では英語風の「ニグロイド」の訳語として「ニグロ人」という呼称も使われていた。例えば、1921年(大正10年)11月6日付の大阪毎日新聞掲載記事「船主と船員の争議頻発」では「…米国に航して亦ニグロ人を雇傭し更にスエズでアラビヤ人を雇替え…」との記述が見られる。

出典

  1. ^ 米山俊直『アフリカ学への招待』日本放送出版協会 NHKブックス 503 1986年6月 ISBN 9784140015032
  2. ^ 寺田和夫『人種とは何か』
  3. ^ a b 『日本人の顔 小顔・美人顔は進化なのか』 埴原和郎/著 講談社 1999年1月 ISBN 978-4-06-269048-5
  4. ^ a b 『勝ちにいくスポーツ生理学』 根本勇/著 山海堂 1999年9月 ISBN 978-4-381-10346-8
  5. ^ メルクマニュアル家庭版 60章 骨粗しょう症
  6. ^ a b 『黒人はなぜ足が速いのか』 若原正己/著 新潮社 2010年6月 ISBN 978-4-10-603663-7
  7. ^ 崎谷満『DNA・考古・言語の学際研究が示す新・日本列島史』(勉誠出版 2009年)
  8. ^ a b c ロナルド・シーガル著、設楽國廣訳『イスラームの黒人奴隷』明石書店 1993年9月 ISBN 9784750325675
  9. ^ Elias, Abu Amina (2016年1月4日). “Farewell Sermon: No one is superior to another except by good deeds” (英語). Daily Hadith Online. 2019年1月15日閲覧。
  10. ^ 保坂修司 (2020年7月22日). “アラブ世界に黒人はいるか、アラブ人は「何色」か、イスラーム教徒は差別しないのか”. ニューズウィーク日本版. 2020年7月25日閲覧。
  11. ^ a b c d 佐藤次高鈴木董『都市の文明イスラーム 』講談社現代新書―新書イスラームの世界史 1993年9月 ISBN 4061491628
  12. ^ イブン・バットゥータ、家島彦一、『大旅行記8』東洋文庫、平凡社
  13. ^ カブラルと対立したヴァリニャーノの記述による。松田毅一「南蛮史料の発見 よみがえる信長時代」 中公新書 1964,95-6頁
  14. ^ 高橋裕史『イエズス会の世界戦略』(講談社選書メチエ)、講談社、2006年.p34
  15. ^ 高橋同書、p/36
  16. ^ 高橋同書、p/35
  17. ^ 藤田みどり『アフリカ「発見」』岩波書店など
  18. ^ Bureau of Labor Statistics, U.S. Census Bureau Survey, May 1995.





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