チェスター・ニミッツ 逸話

チェスター・ニミッツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/16 06:15 UTC 版)

逸話

  • アナポリスの学生だった頃スーツケースビールを隠し入れて門番を平然とした顔でやり過ごすと、ロイヤル・E・インガソル(後の大西洋艦隊司令長官)ら同級生と隠れ酒盛りをしたことがあり、単なる真面目人間ではなかったようである。
  • 趣味はクラシック音楽鑑賞、射撃蹄鉄投げ水泳。水泳は若い幕僚よりも遠泳するほど達者で、スプルーアンス参謀長が赴任するまでその記録は破られなかった。
  • 第二次世界大戦終結後も、大衆の海軍航空兵力への関心を維持するため、1946年4月24日にアクロバット飛行隊『ブルーエンジェルス』を組織した。

ニミッツと東郷平八郎

1905年(明治38年)5月、日本は日本海海戦で勝利し、戦勝祝賀会を東京で行うことになった。その際東京湾(史料によっては横須賀)に停泊していた「オハイオ」にも招待状が届けられ、ほかの候補生5名と参加したニミッツは、東郷平八郎大将を胴上げしたのち東郷を自分達のテーブルに招いて10分程会話した[5]。この時何を語ったかまでは覚えていないものの、気さくで流暢に英国英語を喋る東郷に感銘を受けたことを後に自伝にも記している。

1934年に東郷が死去すると、その国葬に参列するため「オーガスタ」の艦長として再び来日している。

ニミッツの東郷への敬愛は日米が敵対関係になった後も失われることなく在り続けた。第二次世界大戦後、東郷の乗艦であった三笠が荒れ果ててダンスホールに使われていることを知ると激怒し、海兵隊を歩哨に立たせて荒廃が進むことを阻止した。さらに1958年(昭和33年)の『文藝春秋』昭和33年2月号において「三笠と私」という題の一文を寄せ、「この一文が原稿料に価するならば、その全額を東郷元帥記念保存基金に私の名で寄付させてほしい…」と訴えた。この一文は日本人の「三笠」保存の機運上昇に繋がったのみならず、アメリカの将官といえばマッカーサーしか印象に無い戦後世代の日本人にニミッツという軍人がいたことを知らしめた。保存費用として個人的に当時の金額で二万円を寄付したほか、アメリカ海軍を動かして揚陸艦の廃艦1隻を日本に寄付させ、そのスクラップの廃材代約3千万円を充てさせた。「三笠」の復興総工費は約1億8千万円にも上り、この運動は大きな助けとなった。1961年(昭和36年)5月27日に無事「三笠」の復元完成開艦式が行われた際アメリカ海軍代表のトーリー少将は、「東郷元帥の大いなる崇敬者にして、弟子であるニミッツ」と書かれたニミッツの肖像写真を持参し、三笠公園の一角に月桂樹をニミッツの名前で植樹している。

三笠の復元に尽力したニミッツの名前と写真は現在三笠の公式サイトにも掲載されている[6]

東京原宿の東郷神社は米軍の空襲により全焼していた。1958年(昭和33年)に奉賛会が結成され、1964年(昭和39年)春の完工を目指していたが、基金は目標額に達していなかった[5]。このことが1962年(昭和37年)11月に米国のサンディエゴ・ユニオン紙で報じられると、ニミッツは自著『太平洋海戦史』に東郷を偲ぶ文を追記し、同年12月21日に東郷神社再建奉賛会へ10万円を寄付した[5]。さらに同著の印税は共著者であるポッターの快諾を得て、アメリカ海軍の名で東郷神社再建奉賛会に寄贈された。

なお1972年テキサス州に『アドミラル・ニミッツ・センター』建設が計画されたとき日本がこれに協力、1976年5月8日に同センターの日本庭園贈呈式が行われている。


  1. ^ E. B. ポッター(南郷洋一郎訳)『提督ニミッツ』(フジ出版、1979年)15頁。
  2. ^ Thomas B. Buell, Master of Seapower: A Biography of Fleet Admiral Ernest J. King (Annapolis: Naval Institute Press, 2012), p. 198. ISBN 9781591140429
  3. ^ a b 2011年6月18日 産経新聞「物来順応」米村敏朗
  4. ^ ただしキャサリンは当たり障りのない部分を除いてすべて手紙を焼却している。
  5. ^ a b c 1962年12月21日 読売新聞「ニミッツ提督が10万円寄金 東郷神社復興に」
  6. ^ 記念艦「三笠」の復元






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