エチレン 工業用途

エチレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/11 09:14 UTC 版)

工業用途

エチレンが石油化学コンビナートの生産力の指標にもなることからわかるように、エチレンは大多数の石油化学製品の原材料として重要である。

例として、塩化ビニルアクリルニトリル酢酸ビニルなどがエチレンを元に作られる。[5]

植物におけるエチレン

植物においてはメチオニン→S-アデノシルメチオニン(SAM)→1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)→エチレンという経路を通して合成される[6]。この過程では、SAMからACCへの合成にACC合成酵素が、ACCからエチレンの合成にACC酸化酵素が関与する。

植物ホルモンの1つでもある。一般的には生長を阻害し、花芽形成も抑制する。例えば、ジャガイモの場合、エチレンにより萌芽が抑制される性質がある。一方、パイナップルなど一部の植物では、エチレンにより花芽形成が促進される場合もある。

水が過剰に与えられたとき、エチレンにより根の細胞の一部にアポトーシスが誘発され、シュノーケルと同様の機能を持つエアチューブが形成される。

また、エチレンは果実の「色づき」「軟化」といった成熟にも関与している。これはエチレンがセルラーゼに関与し、細胞壁組織の破壊が誘導されるためと考えられている。また、バナナなどのクライマクテリック型の果実では一般に成熟直後に生成量のピークを示し、それ以後は逓減する。リンゴはエチレンガスを発生させるので、バナナの傍で保管すると、バナナの成熟が早く進む。リンゴとジャガイモを一緒に保存するとエチレンによりジャガイモの発芽が抑制され、また、リンゴとホウレンソウを一緒に保存するとホウレンソウがエチレンにより黄変してしまうといった性質がある[7]

リンゴのほかメロンセイヨウナシアボカドは特に多くエチレンを放出する[7]

さらに、エチレンは病原菌(カビ細菌など)の感染や組織が傷害を受けた時に生成され、これらに対する防御応答を誘導することが知られている。例えば、エチレンにより抗菌作用を持つタンパク質が誘導され、病原菌の感染が広がるのを防ぐといった防御機構が考えられている。また、エチレンは気体であるため、病害を受けた植物に隣接する他の植物に対しても作用し、防御応答を誘導すると考えられている。

国別の生産量

2008年における国別の生産量は以下の通りである[8]

順位 生産量
(万トン)
全世界での割合
(%)
1 アメリカ合衆国 2,355 21.3
2 中国 1,024 9.3
3 韓国 707 6.4
4 日本 688 6.2
5 カナダ 428 3.9
世界計 11,048 100.0

  1. ^ ETHYLENE”. 2023年6月20日閲覧。
  2. ^ 久郷昌夫, 栗林浩、「エチレンの水和によるエタノールの合成に関する研究 冷エチレン注入式固定床反応器」 『化学工学』 1967 年 31 巻 9 号 p. 928-929,a1, doi:10.1252/kakoronbunshu1953.31.928, 化学工学会
  3. ^ 合成アルコールの製造方法 日本合成アルコール株式会社
  4. ^ 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編
  5. ^ 高等学校の有機化学の誤りを正す アセチレンからエチレンへ”. 香川高等専門学校. 2022年12月19日閲覧。
  6. ^ 兵藤宏、「エチレン生合成の調節」『化学と生物』 1984年 22巻 5号 p.339-344, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.22.339
  7. ^ a b 管野浩編 『雑学おもしろ事典』 p.32 日東書院 1991年
  8. ^ 地理 統計要覧 2014年版 ISBN 978-4-8176-0382-1 P,100


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