W196の開発
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「モータースポーツにおけるメルセデス・ベンツ」の記事における「W196の開発」の解説
詳細は「メルセデス・ベンツ・W196」を参照 W196の開発は戦前のシルバーアローと同じく、ナリンガーとウーレンハウトの指揮の下で行われた。ダイムラー・ベンツ社内の最新技術を惜しげもなく投入した結果、1930年代と同じく、当時のライバルたちに比べて若干「過剰な」性能を持つ車両となったが、自然吸気エンジンとしたため、過給エンジンだった1930年代の車両と比べて、W196は制御のしやすい車に仕上がった。 M196エンジン 1954年シーズンから施行されるF1の新たな技術規則において、エンジンは自然吸気の場合は排気量は2,500cc以下、スーパーチャージャー付きエンジンの場合は排気量は750㏄以下と定められていた。1930年代まではメルセデス・ベンツ車両ではスーパーチャージャー搭載エンジンを使っていたが、750㏄ではトルクが細くなりすぎ、ドライバーが扱いにくくなると判断し、F1参戦にあたっては2,500ccの自然吸気エンジンを選択した。エンジン形式はW125以前と同じ直列8気筒になっているが、これも再検討の結果、そう決まったものである。2,500ccという排気量の容積効率を高める方法として、バルブ効率を上げる方向から検討され気筒数を多くすることが決まり、8気筒エンジンが採用される。さらに、1930年代末にレース用V型エンジンを開発した時の知見から、V型8気筒では構造が複雑化し重量も増えてしまうことが明らかだったため、直列8気筒のエンジンに落ち着いた、という経緯である。 ウンターテュルクハイムの技術陣は腕を振るい、バルブ効率をさらに高めるため、吸排気弁の制御に各バルブを強制的に開閉できる「デスモドロミック・バルブギア」を導入した。また、航空機エンジンの技術が応用され、M196エンジンではガソリンをシリンダーに直接噴射する「燃料直接噴射方式」(直噴)が採用された。直噴の燃料噴射装置はボッシュ製で、この直噴方式の採用により、従来のキャブレター方式と比較して、出力は10%向上した上、燃費性能も従来より向上した。 完成したM196エンジンは1954年時点で256馬力を発生し、これは当時のどのライバルより20馬力は高い出力だった。開発段階では、1958年末までに300馬力以上を達成する5か年計画が立てられていた。1954年途中からボンネット右側に特徴的な吸気用バルジが追加されるなどして、吸気効率が改善され、1955年の時点で最終的に出力は290馬力まで到達した。 ライバルのほとんどが4段のトランスミッションを使用していたのに対し、このエンジンは5段のトランスミッションと組み合わされ、その出力は加速からトップスピードまで遺憾なく引き出された。 車体 シャシーの構造はスポーツカーの300SL(英語版)」(W194)で効果を実証済みのスペースフレーム構造を採用し、軽量かつ高い剛性を持つ車体を実現した。 エンジンを右に傾けて搭載しているため、プロペラシャフトは車体の左側を通ることになり、これにより、シート位置はプロペラシャフトの位置を気にすることなく低く設置することが可能となり、重心を低くすることができた。 サスペンションは1930年代の車両ではリアをドディオン式としていたが、これは1950年代初めには一般的になっていたため、そこからさらに進めてホイールハブ側を車軸下部の一点のみで保持するシングルピボットのスイングアクスル方式を新たに採用した。 1955年は車体はホイールベースの長短が異なるものや、ブレーキの仕様が異なるものが用意され、様々な使用が生み出されサーキットに応じて使い分けられた。これらは同じ仕様であってもドライバーの好みやドライビングスタイルによって適否が異なっていたため、ドライバーの選択にも委ねられた。 ボディ W196Rストリームライナー オープンホイール仕様 高速サーキット向けに前後の車輪を覆ったストリームライナー形式のボディと、コーナーの多い中低速サーキット向けに車輪が見えて操縦のしやすいオープンホイール形式のボディが考案され、どちらも開発が行われた。開発段階で、1954年1月の開幕戦に間に合わせることは不可能で、デビューは7月初めに高速サーキットのランスで開催されるフランスグランプリになると考えられていたため、開発はストリームライナーのボディを優先して進められた。 ストリームライナー仕様は重量面の不利もあったが、オープンホイール仕様で時速158㎞しか出せないような直線で、時速175㎞を出すことができるという優位性もあり、開発段階では両者のボディには一長一短あるものの、戦力的な違いは大きくないと考えられていた。フランスグランプリは目論見通りストリームライナー仕様で圧勝したものの、次のイギリスグランプリにはオープンホイール仕様が間に合わず、表彰台にも立てずに終わる。テストの結果から、高速サーキットでも必ずしも利点ばかりではないことも明らかとなり、ストリームライナー仕様の欠点の大きさが認識され、以降はオープンホイール仕様のボディに開発の重点が置かれるようになった。
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