M196エンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 14:45 UTC 版)
「モータースポーツにおけるメルセデス・ベンツ」の記事における「M196エンジン」の解説
1954年シーズンから施行されるF1の新たな技術規則において、エンジンは自然吸気の場合は排気量は2,500cc以下、スーパーチャージャー付きエンジンの場合は排気量は750㏄以下と定められていた。1930年代まではメルセデス・ベンツ車両ではスーパーチャージャー搭載エンジンを使っていたが、750㏄ではトルクが細くなりすぎ、ドライバーが扱いにくくなると判断し、F1参戦にあたっては2,500ccの自然吸気エンジンを選択した。エンジン形式はW125以前と同じ直列8気筒になっているが、これも再検討の結果、そう決まったものである。2,500ccという排気量の容積効率を高める方法として、バルブ効率を上げる方向から検討され気筒数を多くすることが決まり、8気筒エンジンが採用される。さらに、1930年代末にレース用V型エンジンを開発した時の知見から、V型8気筒では構造が複雑化し重量も増えてしまうことが明らかだったため、直列8気筒のエンジンに落ち着いた、という経緯である。 ウンターテュルクハイムの技術陣は腕を振るい、バルブ効率をさらに高めるため、吸排気弁の制御に各バルブを強制的に開閉できる「デスモドロミック・バルブギア」を導入した。また、航空機エンジンの技術が応用され、M196エンジンではガソリンをシリンダーに直接噴射する「燃料直接噴射方式」(直噴)が採用された。直噴の燃料噴射装置はボッシュ製で、この直噴方式の採用により、従来のキャブレター方式と比較して、出力は10%向上した上、燃費性能も従来より向上した。 完成したM196エンジンは1954年時点で256馬力を発生し、これは当時のどのライバルより20馬力は高い出力だった。開発段階では、1958年末までに300馬力以上を達成する5か年計画が立てられていた。1954年途中からボンネット右側に特徴的な吸気用バルジが追加されるなどして、吸気効率が改善され、1955年の時点で最終的に出力は290馬力まで到達した。 ライバルのほとんどが4段のトランスミッションを使用していたのに対し、このエンジンは5段のトランスミッションと組み合わされ、その出力は加速からトップスピードまで遺憾なく引き出された。
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