魚類の赤点病菌 [Pseudomonas anguilliseptica]
その症状の特徴がウナギの皮膚、とくに下顎(あご)、腹部または肛門周囲に多数のはっきりした点状の出血がでることでこの病名となった。また、鰭(ひれ)や肝臓、脾臓、消化管にも発赤、出血、貧血などがおこる。皮膚、循環器や結合組織で病原菌が増殖するが、実質細胞や組織にはその増殖がほとんどみられないことも特徴で、ウナギのシュードモナス敗血症とされている。ただし、ヨーロッパ・ウナギでは点状出血は少なく体色が白くなる程度である。その対策としてはやや高水温化(26-27℃以上)、養殖水の淡水化、魚種の代替え(ヨーロッパ・ウナギ)などが挙げられるが、予防法としては実験的にワクチンが検討されている。また、治療には抗生物質(クロラムフェニコール)や合成化学療法剤(オキソリン酸)が有効であるが、この病気の発生時期と摂餌との関係で治療が困難である。
赤点病菌は偏性病原菌とされ、グラム陰性、好気性菌で、1本の鞭毛で運動する短桿菌(0.5×1-3μm)である。細胞の最外部に厚い被膜(莢膜)をもつことが特徴である。発育は15-20℃,pH7-9,塩分0.5-1%でよく発育するが、かなり遅く淡水中では長期間は生きられない。菌株によってはタンパク質を分解するが、デンプンを分解せず蛍光色素をもたない。
なお、別項(シュードモナス病菌)で記載するが、ブリやタイのシュードモナス病やコイの"細菌性白雲症"やアマゴの類似感染症の原因菌は赤点病菌とは別のシュードモナス属の細菌である。
シュードモナス・アンギリセプチカ
(Pseudomonas_anguilliseptica から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/27 22:45 UTC 版)
Pseudomonas anguilliseptica(シュードモナス・アンギリセプチカ)とは魚類に病原性を示すグラム陰性の真正細菌[2]。P. anguillisepticaはニホンウナギ(Anguilla japonica)から最初に分離された。16S rRNAに基づく解析ではP. anguillisepticaは緑膿菌の群に属することが示された[3]。
- ^ 若林 久嗣(東京大学農学部); 江草 周三(東京大学農学部) (1972). “養殖ウナギの赤点病原因菌Pseudomonas sp.の性状(英:Characteristics of a Pseudomonas sp. from an Epizootic of Pond-Cultured Eels (Anguilla japonica))”. 日本水産学会誌 38 (6 pages=577-587). doi:10.2331/suisan.38.577.
- ^ Daly, J.G. (1999) Other bacterial pathogens. In: Woo, P.T.K., Bruno, D.W. (Eds.), Fish Diseases and Disorders: Viral, Bacterial and Fungal Infections. CAB International, New York, pp. 577–598.
- ^ Anzai, et al. (2000, Jul). “Phylogenetic affiliation of the pseudomonads based on 16S rRNA sequence”. Int J Syst Evol Microbiol 50 (Pt 4): 1563–89. PMID 10939664.
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