阿波の遍路道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 04:44 UTC 版)
1番霊山寺まで現在では、JR坂東駅または鳴門西高速バス停から1番霊山寺まで歩きスタートする遍路が多い。 発心の道場(1番(霊山寺から23番薬王寺および海陽町宍喰浦まで) 1番霊山寺門前を通る徳島県道12号鳴門池田線を西進するのが近道だが、これを横断して直進し突き当たった道が撫養街道である。振り返ると「四国第一番」「霊場霊山寺」の石柱も立っている。西に1km程行くと三叉路の左側の道に「四国第二番」の石柱門があるので、そちらへ入るとまもなく2番極楽寺である。門前の駐車場西側からの細道が遍路道で、墓地の中を通って旧道へ下りる。板野ICへの取り付け道路のを潜り変電所を過ぎると3番金泉寺である。商店が並ぶ板野の市街地を通り高徳線の踏切を渡ってしばらく行くと徳島自動車道の高架を潜る。この先は丘の麓を歩く那東の遍路道で、3番奥の院の「愛染院」に出る。民家の庭先を通る細道などを行き再び自動車道の高架を潜ると黒谷の遍路道で、小高い丘を越える。舗装道に出て北進すると徳島県道・香川県道34号石井引田線に合流し、まもなく4番大日寺である。 県道を南下し自動車道を潜る手前で細道に入って少し歩くと5番地蔵寺奥の院である「羅漢堂」の前に出る。山門前から参道を南下、突き当りを西に折れ緩やかな起伏のある旧道を歩く。県道12号線も沿っていて、距離は若干短めである。県道の板野から鍛冶屋原までは旧国鉄鍛冶屋原線の線路敷が使われている。鍛冶屋原の市街地を過ぎるとやがて6番安楽寺に着く。7番十楽寺までは1km余りで近い。 7番から西進し徳島県道139号船戸切幡上板線と交差し御所大橋を渡る。3kmほどで右に自動車道の高架が近づいてきたら標識に注意して右の細道に入ると、正面に8番熊谷寺の大きな山門が見えるが本堂はまだ300m先である。山門下まで戻って県道139号線を歩き、標識に沿って左に進む。田園風景の向こうに9番法輪寺を囲む森が見えてくる。門前より南側の道を西に向かうと再び県道139号線に突き当たり、秋月を過ぎて遍路用品店の看板が見えたら右折し10番切幡寺への参道に入る。比較的平坦なここまでが「阿波の十箇所巡り」の区間である。 10番下から徳島県道237号切幡川島線で南下、約3kmで吉野川がある。堤防を越えて潜水橋を渡ると田が広がる中州の善入寺島である。もう1つ潜水橋の川島橋を通って対岸に渡る。遍路道標識に従って徳島県道240号西麻植下浦線に入り、飯尾敷地から路地を進むとまもなく11番藤井寺である。 遍路にとって焼山寺道と呼ばれる最初の難関が始まる。40mの11番藤井寺の裏から続く山道には八十八箇所の本尊を映した祠が並ぶ。登りがしばらく続き、3.2kmで標高440mの長戸庵がある。次の3.2kmは、標高500m前後の尾根道を進んで0.4kmの間に標高580mから500mまで下る。水場のある柳水庵である。この先で標高480mまで下って徳島県道245号二宮山川線と交差した後1.1kmの間に標高580mまで上り、道はさらに急になって0.9kmで標高745mの浄蓮庵(一本杉庵)に着く。ここから急な下りとなり1.6kmで一気に標高450mの左右内(そうち)集落に入る。標高400mまで下り左右内谷川を渡ると最後の上りとなって2.5kmで標高700mの12番焼山寺に着く。 下りも急な遍路道である。杖杉庵(じょうしんあん)までの1.8kmで標高差260m、鍋岩まで1.6kmでさらに200m下る。鍋岩から大きく分けて2つの経路がある。1つは徳島県道43号神山川島線、国道438号で神山町役場前を経由し徳島県道21号神山鮎喰線に入るもの。1つは玉ヶ峠遍路道に入り、山村集落を結ぶ坂道を下って徳島県道20号石井神山線に入り、鮎喰川に沿って進み広野で県道21号線に合流するものである。こちらのほうが距離は5kmほど短いが、玉ヶ峠遍路道は2km足らずで200m余り上るため11番から登ってきた足にはかなり厳しい道である。広野からは7km余りで13番大日寺である。 境内地のすぐ東側から県道を逸れて遍路道を行き、一宮橋で鮎喰川を渡る。2.3kmで14番常楽寺である。15番国分寺、16番観音寺、17番井戸寺までそれぞれの区間距離は0.8 km、1.8 km、2.8kmと、13番からは、長かった11番からの道のりとは逆に立て続けに札所がある。「阿波の五箇所巡り」と呼ばれる区間である。 17番のある徳島市国府町からこの後歩く国道55号に出るのにも2つの経路がある。1つは徳島県道30号徳島鴨島線、徳島県道・香川県道1号徳島引田線、国道192号を歩き、佐古から旧讃岐街道と国道438号で中心市街地を抜け、二軒屋駅付近から東へ折れて国道55号へ出るもの。もう1つは県道30号線の中鮎喰橋から鮎喰川に沿って南下し徳島県道203号鮎喰新浜線に入り、途中に地蔵越遍路道を歩き国道55号に出るものである。国道を5km余り歩き小松島市芝生町で西に逸れるとまもなく18番恩山寺の入り口に着く。18番からは参道を下らずに駐車場からの舗装道路を下りてくると源義経ゆかりの弦巻坂・弦張坂の遍路道がある。この先で徳島県道136号宮倉徳島線に入り、立江川に架けられた朱塗りの白鷺橋を渡ると正面に19番立江寺がある。 再び白鷺橋を渡って徳島県道28号阿南小松島線、徳島県道22号阿南勝浦線、徳島県道16号徳島上那賀線を通って勝浦町生名へ出る。ここから急な山道を2.9km上ると標高500mの20番鶴林寺に着く。下りの遍路道は山門に戻らずに本堂への石段の上り口にある手洗の右を下っていく。山道を2km余りで460m下ると那賀川沿いの大井に着く。水井橋を渡ってから若杉谷川に沿って緩やかに上っていくが標高180mの登坂口からは1.3kmで250m上る急坂を進み、上り切っても境内まで0.4kmは坂が続く。 21番太龍寺から普通は自動車駐車場からの急な舗装道を3.9km下って徳島県道28号阿南小松島線に接続し国道195号の通る阿南市阿瀬比町へ出るが、空海が修行をしたという舎心ヶ嶽に上ってから山道を下り持福院を通って国道195号の那賀町中山付近に出て阿瀬比に向かう経路もある。ただし、後者は歩く人が少なく一部危険な箇所があるということである。阿瀬比から標高約250mの大根峠(おおねとうげ)を越えると22番平等寺である。 22番平等寺から月夜の集落を過ぎて阿南市福井町鉦打で国道55号に出た後23番薬王寺までは、阿南市福井町からそのまま国道を進むか、2km程距離は伸びるが景色がよい美波町由岐市街地を通るかの2つの経路がある。 23番薬王寺から24番最御崎寺(ほつみさきじ)までは75km余り。およそ35km先の海陽町宍喰浦で阿波国は終わり土佐国に入る。すべて国道55号を歩くのが最短距離であるが、途中には峠越えの遍路道や旧道もある。 補足 昭和初期までは淡路島から現在の鳴門市にある岡崎港へ上陸した遍路が撫養街道を通って一番札所まで歩いたので、この間も阿波の遍路道に含めるべきとも考えられる。その経路は現在の徳島県道12号鳴門池田線にほぼ一致し、距離は約12kmである。この途中には1番霊山寺奥の院の東林院(種蒔大師)や一番前札と言われる番外霊場の十輪寺があるため、鳴門線の阿波大谷駅や高速バス停留所の高速鳴門からこの道を歩いてくる遍路がいる。
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