阿佐海岸鉄道による実用化
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「デュアル・モード・ビークル」の記事における「阿佐海岸鉄道による実用化」の解説
「阿佐海岸鉄道DMV93形気動車」も参照 かねてからDMVの導入を検討していた阿佐海岸鉄道(徳島県)が、2020年までにDMVを導入することを決定した。DMVの本格的な営業運行は世界初となる。2017年2月3日に、徳島県、高知県など関連自治体でつくる「阿佐東線DMV導入協議会」の会合が徳島市で開催され、その結果、DMV導入計画が承認された。 計画によると、線路を走行するのはJR四国牟岐線阿波海南駅 - 海部駅 - 阿佐海岸鉄道阿佐東線甲浦駅間で、その両駅に道路とレールを繋ぐモードインターチェンジを設置して、甲浦駅より先は道路を走り室戸岬方面を結ぶとしている。DMVの運行の起点が阿波海南駅となっているのは、DMVが片運転台であり方向転換が必要であること、また海部駅は高架駅であるため同駅で方向転換させるためには大規模な改造工事が必要である一方、阿波海南駅は地上駅であり海部駅ほどの設備投資が不要であることが挙げられている。甲浦駅では高架線の終点から地上の道路に下りるスロープを新設し、そこから一般道路を通って室戸岬を目指す、としている。また、DMV導入後は、牟岐線の運行上の終点は阿波海南駅とし、阿波海南駅 - 海部駅間はDMVのみの運行とする予定である。 なお、DMV導入の正式決定に先立ち、2011年9月より牟岐駅と宍喰駅でモードインターチェンジ設置工事に着手し、また苗穂工場にてJR四国と徳島バスが訓練を行った。2011年11月から実証実験を開始し、2012年2月に宍喰駅・牟岐駅間を往路は道路、復路は鉄道を利用してデモンストレーション走行を行った。2016年2月には、徳島県交通戦略課が、今後10年以内に牟岐線阿波海南駅から阿佐海岸鉄道甲浦駅までの約10kmの区間に営業運行を実現させることを目指す方針を発表した。DMVを観光資源として活用し、将来的には甲浦駅から道路を用いて高知県室戸岬方面への観光ルート路線の設定も検討するとしていた。 2019年3月9日、阿佐海岸鉄道阿佐東線宍喰駅にて、当線で運用予定のDMV新製車両落成のお披露目イベントが開催された。車両はJR北海道が開発した試験用のDMVと同じくマイクロバスをベースとしており、道路走行から軌道走行への鉄道モードの切替や軌道走行から道路走行へのバスモードの切替も同じ方式を採用している。従来の鉄道の軌道回路を使用した位置検知による閉塞やそれを介して制御される鉄道信号機、踏切警報機、自動列車停止装置が使用出来なくなり、それらに代わる保安装置としてDMV運転保安システムを採用した為、自車位置を検知する車軸パルスセンサーとGPSアンテナ、赤外線を利用して地上のモードインターチェンジ(MIC)に設置された自車の軌道区間への進入出の確認を行う進入出通信装置と駅に設置された駅停車時の位置補正を行う赤外線応答装置との通信や自車位置情報をFOMA携帯電話網からNTTの専用回線を介してセンター装置に送り管理または使用することで、踏切制御装置による踏切制御や軌道区間の閉塞制御を行うことと共に自車の駅停車時の自動停止を行う車上装置が採用された。運転席には、普通のマイクロバスと同様のアクセル・ブレーキペダル、AT用のセレクトレバーのほか、車体の前部と後部に装備されたガイド用の鉄車輪を上下させる制御装置、前述の車上装置、ワンマン運転用機器などが設置されており、車体左側の中央にある出入口には開く際に車体下部からせり出す方式の乗降用のステップと車内脇に整理券発行機が設置されている。車体のカラーリングは阿佐海岸鉄道で使用されているASA-100形の塗色を取り入れており、青いDMV-1号「未来への波乗り」、緑色のDMV-2号「すだちの風」、赤いDMV-3号「阿佐海岸維新」の3台が登場している。 2020年12月25日のDMV導入協議会において、スケジュールの見直しが行われ、2021年7月に開催予定の2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの導入を目指すこととしていたが、強度不足のため「2021年内開業」に再延期となった。 その後2021年12月、世界初となるDMVの本格運用が始まった。
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