母さがし
『クオーレ』(アミーチス)5月「母をたずねて三千里」 イタリアから、遠く南米アルゼンチンへ働きに出た母の消息が、途絶える。父と18歳の長男は、生計を立てるため働かねばならない。そこで13歳の次男マルコが、母を捜して単身アルゼンチンへ渡る。マルコは方々を尋ね歩き、病床にある母と2年ぶりに再会する。
『少将滋幹の母』(谷崎潤一郎) 滋幹が5歳の頃に、母は父国経大納言のもとを去った。左大臣藤原時平によって連れ去られたのだった。それから数年のうちに国経も時平も没し、やがて母は出家した。成人後も母を忘れることができず、いつまでも面影を恋い慕う滋幹は、春の宵、母の住む西坂本を訪ね、尼姿の母と40年ぶりに再会した。
『母を恋ふる記』(谷崎潤一郎) 7~8歳の潤一は、夜更けに田舎の一本道を歩き、百姓家の老婆を「母か」と思って慕い寄るが、「お前は私の子供ではない」と言って追い出される。道は浜辺に続き、月が海上に出る。若く美しい鳥追い女が三味線を弾きつつ歩くのに出会い呼びかけると、その女が、潤一の捜し求める母だった。
『芦屋道満大内鑑』4段目 白狐が、安倍保名の妻・葛の葉に化身して、数年を過ごす。しかし本物の葛の葉が訪れたため、白狐は夫保名や5歳の童子(=後の安倍晴明)と別れねばならない。障子に「恋しくはたづね来て見よ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」の歌を書き残し、白狐は去って行く。保名と葛の葉は、童子を連れて信太の森を尋ね、白狐と対面して、最後の別れをする〔*別れの場面は、→〔目〕3bの『蛇の玉』(昔話)を連想させるところがある〕。
『続・男はつらいよ』(山田洋次) 車寅次郎は、38年前に彼を産んで捨てた母お菊が、今は京都のホテルで働いているとの噂を聞き、会いに行く。ところがお菊はラブホテルの、欲深そうな女将になっており、「銭の話ならお断りや」と言う。寅次郎は、心に描いた母親像と現実のお菊との落差に愕然とし、お菊を罵ってホテルを飛び出る→〔言忌み〕1a。
『瞼の母』(長谷川伸) 江州番場出身の忠太郎は、5歳の時生き別れになった母を尋ね、江戸柳橋の料理茶屋の女将をしている母を捜し当てる。しかし、母は博徒姿の忠太郎に「人違いだ」と言って、冷淡な態度をとる。
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