模造宝石
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 09:59 UTC 版)
ガラス・プラスチック・陶器・骨・植物などを使用して天然宝石を模したもの。ラインストーンやタチウオの皮を貼った模造真珠、プラスチックパールなど。
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模造宝石
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 14:35 UTC 版)
ガラス、磁器、アクリル、木、貝、骨などを加工してできた装飾用の素材。鑑別が不要なほど明らかな偽物もこれに含まれる。 模造宝石が大きく発展したのは19世紀初頭の産業革命の勃興により資本家階級が出現してからである。本物の宝石を用いたジュエリーは、それまで王侯・貴族など支配者層の所有物であったが、経済的、時間的に余裕を持て余した新興富裕層が、こうした上流階級の暮らしぶりに目をむけ、それを模倣するのにさほど時間はかからなかった。しかし当時の宝石産出量は現在よりずっと少なく、本物の宝石でこうした人々の需要が満たされることはなかった。結果、比較的入手しやすい代替素材でそれらが模造され、こうした模造宝石が広く認識されるに至る。 模造宝石というと本物の宝石に比較して劣ったと云った印象を受けるが、現在ではアンティークとしてしか目にできず、故に本物顔負けの高値で取引されているものも多くある。なぜなら、こうした模造宝石に使用された素材は、本物の宝石に比べはるかに耐久性に乏しく、素材の劣化・老朽化により急速に滅失して作品そのものが微塵と消えたり、また素材の加工技術も全盛時は精緻を極めたものの、その後のずっと質の良い素材の登場などにより廃れてしまい、現在では再現不可能な作品も数多くあったりするからである。 しかしその一方で、高価な天然石を安価な素材で代替した、専門家の鑑識眼をも欺く模造宝石があることもまた事実である。 カットスチール Cut steel 鋼鉄製のリベットの頭にファセット・カットを施し、台座につけたり、つなぎ合わせてネックレスに仕立てたりしたもの。裏面からリベットをかしめる形でジュエリーに装着する 。元々、ダイヤモンドの見た目のみ真似たものとして登場したが、すぐに独自の発展を遂げるようになり、資本家階級から遡って逆に王族にまで愛用される広がりを見せた。素材が素材だけに錆による劣化がひどく、全盛期だった19世紀の作品群は今日ではアンティークとしてもほとんど残っていない。 マルカジット/マーカサイト Marcasite 黄鉄鉱を加工して6面のカットを施し、宝石同様に台座に爪で固定したもの。技術的には古代ギリシャから存在したが、18世紀中頃からこれもダイヤモンド類似石として登場し、20世紀初頭には極限に至るまで精緻なレベルに発展したが今日ではすっかり廃れてしまっている。これも素材が素材だけに、長い時間の経過により空中の湿気と反応して硫酸が滲み出す欠点がある。なお Marcasite とは本来は白鉄鉱を指す言葉だが、これがなぜ黄鉄鉱を素材とする模造ジュエリーを指す言葉になったのかというと、18世紀当時は黄鉄鉱と白鉄鉱が厳密に区別されていなかったことによる。 ラインストーン Rhinestone / ペースト Paste / ストラス Strass / フォイルバック Foil back 素材はクリスタル・ガラスで、これで宝石を形作り、カットを施したもの。あるいは、液体のガラスをカットした宝石の型枠に流し込んで固め、仕上げに磨いたもの。ガラス中の鉛の含有量が多く、柔らかいのをペースト、少なく硬質のものをストラスと呼ぶ。ペーストは1670年代、ストラスは1720年代より存在するが、やはりダイヤモンド類似石として登場し、やがてそこから離れて18世紀には独自の発展を遂げる。フォイルバックはこれらの石の裏面に金属箔や色の着いた薄膜を差込んだり、膜を蒸着させたりして、光の反射(ダイヤモンドのファイア)の増幅や、カラーストーンを真似る技法で、この技法を用いて模造された石そのものもこう呼ぶ。 上二つと異なり製品として今日まで存続しており、素材もずっと安価なアクリル樹脂や屈折率の高いキュービックジルコニアを採用するなど、現在に至るも技術的発展が見られる(もっとも、キュービックジルコニアを用いたラインストーンは、模造宝石でなく人造宝石に分類される)。現在は素材の別なども含め一括りにラインストーンで呼ばれることが多い。従来からのクリスタル・ガラス製品はスワロフスキー社のそれが有名。 コスチューム・ジュエリー Costume jewelry / ミリアム・ハスケル Miriam Haskell 宝石や貴石をほとんど用いずに製作されるジュエリーで、20世紀初頭にアメリカ合衆国のジュエリーデザイナー、ミリアム・ハスケルが創始し、彼女の名前がこの分野のブランドとして残っている。 1940年代からグレタ・ガルボなど、当時のハリウッド女優に愛用され今日に至る。資産価値に重きを置かない、あくまで身を飾るためのジュエリーで、もともとは安価な素材を用いることで傷などついても気にならず、気楽に装着できて外出できるジュエリーにすると云う意図があった。その当時新しく人工的に開発された新素材の採用に積極的で、当初はタチウオの皮を使った模造真珠やセルロイドなど、工夫を凝らした素材が使用されたりもしたが、現在では使われる素材のほとんどは樹脂やプラスティックである。 張り合わせ石 Composite Stone / ダブレット Doublet / トリプレット Triplet 複数の素材を組みあわせ、あたかも一つの独立した石のように見せかけた模造石。異なる素材(同じ素材の場合も稀にあるが)を組み合わせることによって、色を濃くしたり、あるいは屈折率や稀には石のサイズ自体を大きく見せたりするなど、外観改善の効果を得ることを目的とするが、それ以上に人工素材の上に天然素材を被せることで、あたかも石全てが天然素材であるかの如く装うことを目的とする場合が多いため、上述した他の模造宝石のような独自の価値はなく、たいてい偽物、まがい物として扱われる。 2素材を組み合わせる技術及びその組み合わせた石をダブレット、3素材のそれをトリプレットと呼ぶ。 ダブレットはふつう、画像上図に示した構造を持つ。図中のトップ(宝石のカットの用語で言うところのクラウン)とベース(同じくカット用語でパビリオン)でその使用する素材が分かれていて、a. トップもベースも同種の天然石どうし b. トップに天然石、ベースに合成石もしくはイミテーション c. トップに無色の天然石、ベースに色ガラス d. トップもベースも色ガラス といった組み合わせがある。このうち多いのはb,cであり、aなどはあまり見かけずむしろ珍しい部類に入る。 なかでもcに類したダブレットで、トップの頂上部のごく薄い部分のみをアルマディン・ガーネットで、それより下のベースまで含んだ全てに色ガラスを用いたダブレットを特にガーネット・トップ・ダブレットと云うが、そのほとんどが高価な天然石に見せることを目的としており、それを意図して詐欺に頻繁に用いられる。 トリプレットも通例画像下図に示した構造を持ち、宝石を真上から見た時、面積が最も広くなる(カット用語の「ガードル」)部分のみ天然石の薄片を用い、その上下の部分はガラスや水晶で形だけを真似て、薄片をサンドイッチのように挟んだものが多い。さらにひどいのには、真ん中の薄片すら単なる色ガラスやフィルムを用いたものがある。オパールやエメラルドにこうしたトリプレット手法を用いた模造石がよく見つかる。
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