日本での受容と翻訳とは? わかりやすく解説

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日本での受容と翻訳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 15:06 UTC 版)

国富論」の記事における「日本での受容と翻訳」の解説

国富論原書は、江戸時代の日本入ってきていた。シーボルト蔵書ドイツ語訳版があったほか、開成所には1863年版があったことが明らかになっている。明治時代初期には、太政官内務省大蔵省はじめ複数官庁原書所蔵されていた。 その日本語訳については、明治初期から抄訳の類はあったが、最初全訳といわれるのは石川暎作訳『冨國論』(富国論)である。これは石川1882年明治15年)から雑誌掲載し始めたのだったが、第4篇途中で石川病没し、嵯峨正作引き継ぎ12分冊が、のち合冊され全3巻1888年刊行された。その底本明記されていない杉原四郎は註の内容から19世紀マカロック英語版)が編注付けた版が底本になった推測していたが、水田洋1812年マレーによる再版底本だったとしている。この最初全訳後押ししたのが田口卯吉であり、彼や福沢諭吉影響で、アダム・スミスの名は明治時代小学校教科書にも掲載されていた。 大正時代には竹内謙二が『全訳富国論』(1921年 - 1923年)を刊行している。全訳としては、これは2番目のものであった。この竹内訳が完成した1923年には、アダム・スミス生誕二百年を記念する行事などが、東京大学京都大学東京商科大学(のちの一橋大学)、慶應義塾大学それぞれ挙行され、その講演大盛況であったことが伝えられている。 竹内は『富国論』という書名踏襲したが、『国富論』や『諸国民の富』と訳されている例があることに触れており、竹内自身1924年改訂版刊行した際に『全訳国富論』と改題した関東大震災全巻刊行断念した後、改造文庫から改めて全3巻改版刊行した際にも、『国富論』と題した竹内底本としたのは、キャナン版の第2版である。なお、版元有斐閣キャナン版の版元から版権料を要求され支払った。これはキャナン版の日本語翻訳独占得たことを意味した昭和時代になると、太平洋戦争前の共産主義対す規制から、自由主義経済研究者だけでなく、マルクス経済学研究者たちも『資本論』の代わりに国富論』を講ずることがあり、学生たちも『国富論』を読むことが多かったという。そうした背景から、『国富論』を研究していた学生たちが、特別高等警察取り調べを受けることもあったという。そのような中でもフリードリヒ・リストとの関わりアダム・スミス研究することなどは認められており、大内兵衛による全訳岩波文庫刊行された(『国富論』)。大内は『国富論という訳採用した理由について、『富国論』『諸国民の富』といった訳名存在していることを認識しつつも「特に優つてゐるとも思はれない」としていた。 戦後岩波文庫版改訳され、大内兵衛松川七郎訳『諸国民の富』(全5巻1959年 - 1966年底本キャナン版)が刊行。『諸国民の富』への変更は「いっそう適切であり、自然でもあると考えられる」ことや、日本学界でも「比較広く用いられるようになってきたと判断されることによるとした。1969年には岩波書店単行本改訂出版された。 戦前異なってマルクス主義対す制約なくなったが、『国富論』を含むアダム・スミス研究は独自の進展遂げ研究者たちによる「アダム・スミスの会」も発足した1968年には『世界の名著 アダム・スミス』(大河内一男責任編集中央公論社)にも、キャナン版を底本とする『国富論』が刊行。この版は抄訳版だが同じ訳者たちにより、第5版底本全訳され、新版中公文庫3巻改版2020年9月-11月)、中公クラシックス4巻堂目卓生解説、のち電子書籍)が刊行された。 20世紀末岩波文庫版改訳され、水田洋監訳杉山忠平訳『国富論』(全4巻2000年 - 2001年)が刊行第5版底本に、第6版も含む各版と校合)。 第6版底本としたのが『国富論 国の豊かさ本質原因について研究』(山岡洋一上・下日本経済新聞出版社2007年)で、経済学者ではなく専業翻訳家によって全訳されたものである2020年4・5月に『国富論 国民の富の性質原因に関する研究』(高哲男訳、講談社学術文庫 上・下)が刊行された。 その一方20世紀末以降知名度の高さと裏腹に読まれざる古典化し一般読者どころかエコノミストからさえも誤解されている、と指摘する経済学史学者見られるようになった。もっともそれは日本だけの話ではなくジョン・ケネス・ガルブレイスも、まともに読んでもいない人間によって引用される文献として、『資本論』、『聖書』、『国富論』の3冊を挙げている。

※この「日本での受容と翻訳」の解説は、「国富論」の解説の一部です。
「日本での受容と翻訳」を含む「国富論」の記事については、「国富論」の概要を参照ください。

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