上総堀りの用具とは? わかりやすく解説

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上総堀りの用具

名称: 上総堀りの用具
ふりがな かずさぼりのようぐ
種別 生産生業用いられるもの
員数 258
指定年月日 1960.06.09(昭和35.06.09)
所有者 千葉県千葉県立上博物館保管
所有者住所 千葉県千葉市
管理団体名:
備考
解説文: 昭和三十五年六月九日指定の「上総井戸用具」(昭和三十五年文化財保護委員会告示第二十七号)は、掘抜き井戸工法代表的なものとされる上総井戸掘り技術用具を、巨細にわたりとりまとめたもので、手突き段階用具一式九九点が収集されている。この資料は、上総の旧君津地方明治中期考案され掘抜き井戸掘さく技術用いられ用具で、その技術道具立てが簡単で操業安全性にも富んでおり、また技術習得比較容易なことなどから、従来掘抜き井戸掘さくの技術に代わって短期間わが国のみならず近隣諸国まで普及した。この技術上総地方職人によって各地広められたところから、一般に上総掘りよばれている。
 今回追加する物件は、その後千葉県立上博物館袖ヶ浦市阿部親子二代にわたり上総掘り職人として活躍した、故近藤晴次氏の遺族から寄贈受けた用具一式一七三点である。この資料は、第二次世界大戦前後に、従来の手突き掘抜き井戸掘さく技術をもとに、掘さく用の鉄管突き上げ突き下ろしヒゴ巻き取り作業発動機動力利用した工法変えたいわゆる機械掘り段階用具一式である。今回は、水神講関係用具加えこれを追加することにより、既指定文化財内容をさらに補強充実しようとするものであり、あわせて指定資料整理統合行い名称の変更一部分替え行って指定文化財性格明確化を図ることとした。
 上総掘り以前わが国掘抜き井戸掘さくの技術は、長くい鉄棒を繋ぎ合わせ梃子などを使って引き上げた後に急激に落下させ、その衝撃で井孔を掘るというものであった上総掘りの技術はこの衝撃法によるボーリング技術改良したもので、鉄棒替えて鉄管割竹製のヒゴ使用する。掘さくは鉄管先に鑿を付け鉄管繋いだヒゴ握ってもっぱら人力をたよりに地面突いて細い竪孔掘ってゆくものである。掘さくには粘土用いられる。これは地面柔らかにし、掘さく時の先の熱を冷やしたり、掘り屑を溶かしてその回収容易にするとともに加圧することによって粘土粒子が孔壁に付着して膜を作り周囲からの浸透押さえて孔壁の保護役目を果たす。この粘土水の利用によって、上総掘り一つ特長である裸孔のままの掘進が可能となったまた、粘土に溶かした掘り屑回収のために、鉄管先端にはコシタという弁の装置付け鉄管上部水抜き用の小孔設ける。掘進中この弁の働きによって掘り屑鉄管中に取り込まれ管内掘り屑一杯になると鉄管地上引き上げて管内掘り屑捨てる。掘進はこの掘さくのための突き下ろしと、掘り屑排出仕事交互に行うこととなる。この掘り屑排出のために軽量化したスイコとよぶ専用ブリキ製の筒が用いられる。このスイコ鉄管同じくコシタ水抜き孔が設けられている。
 上総掘り特長づけるもう一つ要素は、割竹製のヒゴである。孟宗竹を幅二センチほどに割って鉄管繋ぎ掘り進む長さ合わせ次々と繋いで延長してゆく。竹は剛性柔軟性とを併せ持っており、突き下ろす力を直接先に伝えとともに掘り屑排出時には長いヒゴ巻き取って収納することができる。また、繋ぎ合わせるための加工が容易であり、軽量なためにたくさん繋ぎ合わせて重量増加にはつながらず、作業時の安全が確保されることとなる。この竹ヒゴ特性生かして、ヒゴクルマというヒゴ巻き車が考案された。これは長さ三・六メートルほどの貫板六本交差させて車状とし、これを組み合わせて水車のように作ったもので、外周踏み板をわたしヒゴ巻き取るようにしたものである。作業は人がこの中入り車軸に掴まりながら踏み板踏んで廻し、その力でヒゴ巻き取って鉄管類の引き上げ容易にする。このほか、掘さく時の鉄管引き上げ助けハネギや、鉄管口径上の孔を掘るために付けられるツメ装置や、ヒゴの手がかりとするシュモクという把手、これらを設置する作業用などの周辺装置組み合わされ省力化が一層進み、手突き突き掘り技術としては最も発達した上総掘り技術体系完成する明治二十年代の後半のことであった
 上総地方岩盤含まない掘りやすい地質に、豊富な被圧地下水内蔵する自噴地帯であったが、この地方中流域河岸段丘発達し耕地分断されており、併せて近世における複雑な支配形態など影響もあって、有効な灌漑施設発達みられないまま慢性的な農業用水不足に悩む地域であった。ホンヌキなどとよばれる掘抜き井戸は、主としてこの豊富な被圧地下水農業用水として利用するため掘られ、そのなかから上総掘りの技術考案されのである



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