ブロウンディフューザー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 13:57 UTC 版)
「ディフューザー (自動車)」の記事における「ブロウンディフューザー」の解説
エンジンから排出された排気ガスは高温・高速の状態にあるため、ディフューザー周辺に吹き付ける「エグゾースト・ブローイング」を行うと、ディフューザーの排出効果を高めることができる。 この「ブロウンデュフューザー (Blown Diffuser) 」はルノー・RE40(1983年)で採用され、1990年代まで多く見られた。当時はディフューザー内に直接排気ガスを放出していたが、アクセル操作に応じてダウンフォース量が増減し、マシンの挙動が不安定になるという課題があった。2000年代には上方排気方式の流行により一旦姿を消したが、レッドブル・RB6(2010年)が採用して再び脚光を浴びた。 レッドブルの新方式はリアサスペンションのロアアーム手前に排気口を設け、ディフューザー上面に排気ガスを吹き付ける。さらにレッドブル・RB7(2011年)の仕様では排気管を延長し、リアタイヤの内側付近を狙って吹き付け、リアタイヤの後方乱流を吹き流す役割を持たせた。逆に、ルノー・R31 (2011年)はサイドポンツーン前端下部に排気口を設け、床下に吹き付ける独自の「前方排気」方式を採用した。 排気の量に関しては、エンジンの電子制御プログラムを調節して、アクセルを緩めた状態でも大量の排気を供給し続けるオフスロットル・ブローイングを行っている。これを活用すると、ハードブレーキングによって荷重が前掛かりになっても、リアタイヤのスタビリティ(安定性)を保持することができる。2011年のレースでは、マシンがコーナーにアプローチする際、炸裂音の様なエグゾーストノートを響かせているのを聴くことができる。 排気の質にも2種類あり、空気のみを排出するときは「コールドブローイング」、燃料を混合して高温・高速流のガスを供給するときは「ホットブローイング」と呼ばれる。ホットブローイングはエンジンのシリンダー内に燃料を噴射するが、プラグの点火タイミングを意図的にずらすことで、不要なトルクの発生を回避する。ホットブローイングの方がより効果的だが、燃費(燃料搭載量)に支障があるため、予選と決勝ではエンジンマッピングを変更して使い分ける。 このシステムの影響力は、予選において1周あたり0.5秒から1秒にも達するといわれる。しかし、エンジンの制御を精密に行えなければ、逆にマシンバランスを崩す結果となり、チーム・エンジンメーカーによって開発力の差が生じた。 FIAはドライバーのアクセル操作が空力的特性の変更手段となることを禁じる規定(第3条15項)に抵触するとの懸念を示し、ヨーロッパGPより予選と決勝のエンジンマッピングの変更を禁止した。次戦イギリスGPではオフスロットル時の排気を12,000rpmでは全開時の10%、18,000rpmでは20%に制限し、空力的作用を禁止した。しかし、ルノーとメルセデスエンジンへの特例措置を巡ってレース前に紛糾し、公平を期すためドイツGPよりヨーロッパGP時点の規制に戻し、シーズン中はオフスロットル・ブローイングの使用を認めることになった。 2012年からは排気口の位置,角度,形状,エンジンマッピングが厳密に管理され、結果エキゾーストブローイングは不可能になったと思われたが、排気口からボディ後方に溝を設けその排気がディフューザーへ向かうようにするコアンダエキゾーストが登場した。しかし2014年には排気口はディフューザーの効果に影響しない規定された後方の1か所集約となり、今度こそ不可能となった。 当時は排気をディフューザーに吹き付けるという手法以外、明確な内容は公開されていなかった。しかし現在はその詳細が徐々に明らかにされてきている。その一つに、ウイングカーでいう「サイドスカート」を、ディフューザーの左右に排気を使って作り出し、ディフューザーの負圧を排気の壁で仕切る事でその性能を大幅に引き上げていたという手法である。
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ブロウン・ディフューザー
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「レッドブル・RB6」の記事における「ブロウン・ディフューザー」の解説
RB6にはブロウン・ディフューザー(吹き付けディフューザー)という方式が採用されている。これは排気口をディフューザー付近の非常に低い位置に設け、エンジンの排気をディフューザーに直接吹きかけることでディフューザー周辺の空気の流れを高速化し、ダウンフォースを増加させるものである。 この方式自体は目新しいものではなく、ニューウェイの前任チームであるマクラーレンで2001年まで採用されていたものである。 オフシーズンのテストでは、チームはブロウン・ディフューザーの存在を隠すため、本来の排気口の上方に排気口を模したステッカーを貼り、排気口の位置を偽装していた。シーズン開幕後も、レーススタート前にダミーグリッド上にマシンを停めると、車体後方にメカニック数人が並んでディフューザーを隠すなど、機密管理に神経を遣った。
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ブロウン・ディフューザー
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「エイドリアン・ニューウェイ」の記事における「ブロウン・ディフューザー」の解説
2010年のレッドブル・RB6より導入。高速のエンジン排気をリアタイヤ付近へ排出し、ディフューザーの効率を高める。2011年のRB7ではルノーと協力しエンジンの「オフスロットル・ブローイング」も開発し、使用禁止を巡り論争となった。
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