JR東日本251系電車 JR東日本251系電車の概要

JR東日本251系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/08 04:34 UTC 版)

JR東日本251系電車
251系「スーパービュー踊り子
(2001年11月 新子安駅
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
製造所 川崎重工業近畿車輛
製造年 1990年 - 1992年
製造数 4編成40両
運用開始 1990年4月28日
運用終了 2020年3月13日
投入先 スーパービュー踊り子
東海道本線
主要諸元
編成 10両編成 (6M4T)
軌間 1,067 mm (3 ft 6 in) (狭軌
電気方式 直流1,500 V
最高運転速度 120 km/h
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 2.5 km/h/s[1]
減速度(常用) 3.5 km/h/s[1]
減速度(非常) 4.2 km/h/s[1]
編成定員 530(リニューアル後)
編成重量 358.1 t
全長 20,000 mm(先頭車)
19,500 mm(中間車)
全幅 2,950 mm
全高 4,070 mm
車体 普通鋼
台車 ロールゴム式ボルスタレス台車
DT56・TE241
主電動機 直流直巻電動機 MT61形
主電動機出力 120 kW
駆動方式 中空軸平行カルダンたわみ板継手方式
歯車比 1:4.82
編成出力 2,880 kW (6M4T)
制御方式 界磁添加励磁制御
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置 ATS-SNATS-P
第31回(1991年
ローレル賞受賞車両
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概要

伊豆方面への特急列車は1981年(昭和56年)に登場した185系が担っていたが、同形式は普通列車にも運用されることを想定していたため内装面で若干見劣りしていたことから、伊豆半島へのリゾートアクセス専用車両として開発され[2]、10両編成4本(計40両)が導入された。

デザインコンセプトは「列車に乗ったらそこは伊豆[2]。同じ伊豆半島を走る伊豆急行2100系電車(リゾート21)に触発される形で設計・製造したとされることもある[3]。デザインは剣持デザイン研究所が担当した[4]1991年(平成3年)鉄道友の会ローレル賞受賞[5]

構造

本項では、落成時の仕様について述べる。

車体

10両編成のうち3両が2階建車両、7両が平屋のハイデッカーで構成される。

車体は普通鋼製で、屋根および床の一部にステンレス鋼を採用している[2]。10両編成での重量は358.1 tと185系(10両)の402 tよりも軽量化を実現した[2]。塗装は伊豆の海を連想させるアジュールブルー、フューチュアグレーのツートンで、車体中央部に白い細帯が入る。

各車の乗降口には外開き式のプラグドアを採用し、2両に1箇所の割合で通常の乗降を行うという方式を採用した[2]。これは2両で「ひとつの空間」という意味合いからである[2]。2・3・5・7・10号車の、窓が設置されているドアのみがメインエントランス(通常の乗降口)(開口幅1,006 mm、有効開口800 mm)で、普通車はモハ250形とクハ251形、グリーン車はサロ251形がこれに該当する。1・4・6・8・9号車の、モハ251形、サハ251形、クロ250形に設置のサブエントランス(補助出入口・窓のないドア)は終点まで開かない。ただし、「ホームライナー」として運行する場合は「おはようライナー新宿」での小田原駅、「ホームライナー小田原」での新宿駅渋谷駅を除く全駅で全部のドアを使用していた。

車内

グリーンユニット(1・2号車)

グリーン車は2 + 1アブレストで、1人掛席はクロ250形が山側、サロ251形が海側に配置されている。これは、サロ251形には4人用個室を3室設けており、個室を海側に設定すると1階の通路高さの確保が難しくなるためであり、2階席の座席のハイデッキ構造の部分に1階通路を設定することで通路高さを確保した。この際に、幅に余裕のある2人掛の席の下を通路に設定したため、海側を1人掛にせざるを得なかったものである[6]。座席間隔は1,300 mm(展望席は1,000 mm、レッグレストなし)で、レッグレストとインアームテーブルを備える[2]

カスタムユニット(3 - 8号車)

個人から団体に対応する設備を備えており、すべてハイデッカー構造、座席は2+2の配置で回転式クロスシート(リクライニング機構なし)となっている[2]。荷棚はハットラック式(収納式)である[2]

グループユニット(9・10号車)

家族連れ向けの9・10号車は4人がけのセミコンパートメントを配置したグループユニットとなっている[2]。10号車の展望席はフランス製の固定式座席を750 mm間隔、4人×4列の配置としている[2]

グリーン席・普通車とも、座席にはオーディオユニットが内蔵されていたが、のちに撤去された。

便所は、クハ251(10号車)を除いた各車両に設置している。大便所1か所(洋式便器洗面所1か所という構成である。奇数号車のみ、さらに小便所1か所が加わる。

機器

主回路は先に常磐線特急「スーパーひたち」用として登場した651系に続いて界磁添加励磁制御を採用し、定速制御機能も付加している。台車も651系に準じたボルスタレス式のDT56形・TR241形でヨーダンパ付である[7]。ただし、最高速度は651系の130 km/hに対し本系列は120 km/hであり、歯車比は185系と同一の4.82である。主電動機は界磁添加励磁制御車に共通のMT61形であるが、冷却ファン構造を変更し、高速域での騒音を低減した「内扇形」を搭載する。制動方式は回生併用電気指令式空気ブレーキで、伊東線伊豆急行線に存在する連続急勾配に対応して抑速ブレーキも装備する。

集電装置(パンタグラフ)は車体断面が大きく、また専有面積を小さくして客室スペースを拡大させることから、JR東日本の在来線電車では初めて下枠交差式のPS27形を採用した[7]

空調装置は、インバータ式集約分散形で、ハイデッカー車は床下設置のAU301形(容量 37.21 kW(32,000kcal/h))を1台搭載する[7]。2階建て車は中間車が床置形のAU401形を2台、先頭車はAU401形と床中形のAU402形を各1台搭載する[7]。1台あたりの容量は、20.93 kW(18,000kcal/h)で、1車両では41.86 kW・36,000kcal/hである[7]。これらの空調装置はすべて三菱電機製である[8]。運転室には専用の冷房装置4.65 kW(4,000kcal/h)を備えている[7]

1次車(右)と2次車(左)。

2次車

1992年製の2次車では、1次車の使用状況を踏まえて仕様が変更された[9]

  • 展望拡大のため、前面ガラスの横ハリを小断面化してフロントガラスを拡大。乗務員室と客室の仕切り扉をガラスだけの構造に変更
  • カーテンのない展望席の窓ガラス(温度上昇対策)と、1階個室部の窓ガラスを外部から のぞき見防止のため、熱線反射ガラスに変更
  • 雨天時の視界確保のため、1次車の3連式ワイパーを2連式ワイパーに変更
  • 各座席の座面を、前方へスライドするリクライニング機構を追加
  • 操作性向上のため、ハットラック式荷棚のダンパーを改良品に変更
  • 4人掛け個室のテレビを薄型液晶テレビに変更。個室の出入口にカーテンを設置
  • 各デッキにあるごみ箱の容積を拡大
  • 貫通扉のなかった一部連結面に扉を新設
  • 9号車多目的室に空調の整備など
  • 10号車クハ251形の展望席座席を改良
  • 車内アテンダントの業務用設備の改良
  • 乗り心地向上のため、連結間に車端ダンパを設置
  • 保安装置にATS-P形を設置

形式

モハ251形

0番台

パンタグラフ・主制御器・主抵抗器を装備するハイデッカー構造の中間電動車で普通車。定員64名。6号車と8号車に連結され、6号車はモハ250形100番台・8号車はモハ250形0番台とユニットを構成する。トイレ・洗面所を設置。

100番台

パンタグラフ・主制御器・主抵抗器を装備するハイデッカー構造の中間電動車で普通車。定員64名。モハ250形0番台とユニットを構成する。東京方の連結器は検査時の編成分割に対応した密着連結器を装備する。4号車である。トイレ・洗面所を設置。

モハ250形

0番台

電動発電機 (MG) ・空気圧縮機 (CP) を装備するハイデッカー構造の中間電動車で普通車。定員56名。3号車と7号車に連結され、3号車はモハ251形100番台・7号車はモハ251形0番台とユニットを構成し、3号車・7号車だがうち7号車は2007年3月17日までは喫煙車であった。トイレ・洗面所・ミニロビー(7号車は喫煙コーナーを兼ねていた)を設置。通常、3号車(普通車)と2号車(グリーン車)の間の乗客の通り抜けは不可能となっている。

100番台

モハ251形0番台とユニットを構成するハイデッカー構造の中間電動車で普通車。定員48名。本番台は0番台と異なり、MG・CPは装備しない。伊豆急下田方の連結器は、モハ251形100番台に対応した密着連結器を装備する。5号車である。サービスカウンター兼売店、テレホンカード式公衆電話を設置。

クハ251形

東京方先頭車(制御車)でダブルデッカー構造の普通車。定員52名(登場時)。運転室後部に展望席(登場時16席)を備え、2階が登場時36席の普通席で、1階が子供用の遊戯ルームになっている[2]。乗務員室、荷物置場を設置。かつてはテレホンカード式公衆電話も設置されていたが、後に撤去されている。

クロ250形

伊豆急下田方先頭車でダブルデッカー構造のグリーン車。運転室後部に展望席を備え、2階が定員14名のグリーン席、1階がグリーン車利用客専用のラウンジ(サロン室)と売店である[2]。1階と2階を往来できる階段は展望席後ろの海側にらせん階段が設けられているほか、非常用乗降扉の横にも1階と2階に繋がっている直線階段が設けられている。トイレ・洗面所、荷物置場を設置。かつてはクハ251形同様テレホンカード式公衆電話も設置されていたが、のちに撤去されている。

サハ251形

ハイデッカー構造の中間付随車で普通車。定員64名。トイレは車椅子対応となっているが、車椅子対応座席は客室に設置されておらず、デッキに設置の多目的室を利用する事としている。

サロ251形

中間付随車でダブルデッカー構造のグリーン車。2階が定員25名のグリーン席、1階が定員4名のグリーン個室が3室である[2]。個室の座席は電動リクライニングシートである[2]。なお、1階は1号車寄りのみ階段が設けられているため、1階から3号車への通り抜けはできない。2007年3月18日までは喫煙車であった。トイレ・サービスカウンター・荷物置場を設置。


  1. ^ a b c 川崎重工業「川崎重工技報」第107号(1990年10月)「東日本旅客鉄道株式会社向け251系直流特急電車(スーパービュー踊り子)」 pp.106–107。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 交友社『鉄道ファン』1990年6月号新車ガイド「JR東日本"スーパービュー踊り子"」pp.9 - 19。
  3. ^ 「特急踊り子&JR東日本の新型特急電車」〈名列車列伝シリーズ〉、イカロス出版、2000年。
  4. ^ KDA 剣持デザイン研究所 作品年表(インターネットアーカイブ)。
  5. ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '92年版』ジェー・アール・アール、1992年7月1日、181頁。ISBN 4-88283-113-9 
  6. ^ 鉄道ダイヤ情報』76号「251系設計日誌」より。
  7. ^ a b c d e f 交友社『鉄道ファン』1990年6月号新車ガイド「JR東日本"スーパービュー踊り子"」」pp.17 - 19。
  8. ^ 三菱電機『三菱電機技報』1991年1月号 p.112。
  9. ^ 交友社「鉄道ファン」1992年5月号新車ガイド4「JR東日本251系2次車」 pp.26–27。
  10. ^ 鉄道ダイヤ情報 新型車両掲載コーナー 2007/03/14更新・4月号より
  11. ^ 2020年3月ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道株式会社、2019年12月13日、4頁。 オリジナルの2019年12月13日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20191213080612/https://www.jreast.co.jp/press/2019/20191213_ho01.pdf2020年1月12日閲覧 
  12. ^ 東海道線特急が新しく生まれ変わります』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2020年11月12日https://www.jreast.co.jp/press/2020/20201112_ho02.pdf2020年11月13日閲覧 
  13. ^ “スーパービュー踊り子、3月で幕 JR東、伊豆特急強化に世代交代”. 共同通信. (2019年12月4日). オリジナルの2019年12月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20191205235730/https://this.kiji.is/574839403994793057 2020年1月12日閲覧。 
  14. ^ 「スーパービュー踊り子」引退記念撮影会の「中止」について”. 東日本旅客鉄道 (2020年2月28日). 2020年2月29日閲覧。
  15. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2021冬 ジェー・アール・アール、交通新聞社、2020年、p.358。ISBN 9784330082202
  16. ^ 交友社鉄道ファン』1996年2月号 通巻418号 p.133


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