FA-200 開発

FA-200

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/03 12:34 UTC 版)

開発

富士重工業は、T-34A練習機をライセンス生産し、その改良型として連絡機LM-1、練習機KM-2を製作し、自衛隊に納入していた。こうした小型機の製造のノウハウを活かし、本格的な民間機として開発したのが本機である。また、一式戦闘機「隼」に代表される中島飛行機の流れも汲んでいる。原型機は1965年8月12日に初飛行した[1][2]

日本の航空法による小型飛行機の耐空類別3種(普通N、実用U、曲技A)を全てを取得した[1][2]

設計

ライカミング・エンジンズ製水平対向4気筒レシプロエンジン(160HP/120kWまたは180HP/135kW)単発、低翼、固定脚という保守的なレイアウトのプロペラ機である。機体は全金属製で、風防屋根などにアルミ合金を多用したほか、尾翼と舵面に波板を用い、計器板の上蓋が機体前部の構造材を兼ねるなど、艤装部材と構造部材を一体化させることによる重量軽減と部品点数削減がなされている[1][2]。手動式スロッテッド・フラップ、降着装置に3車輪式固定脚、操縦室にはスライド式キャノピーを採用し、容易な乗降を可能としている。主翼や尾翼、舵の大きさ、翼形、舵の断面、主翼と尾翼の位置関係、胴体線図等は、中島飛行機時代からの富士の過去のデータを元に決定し、絞り加工を必要としない円錐や円筒を多用した胴体、翼端まで同一断面の直線型の主翼や尾翼を用いるなど、価格低減の努力が行われた[1][2]。主翼は低翼配置の単桁構造で、前縁を大容量のセミ・インテグラルタンクにすることで、航続距離を1,000kmまで延長した[1]

良好な運動性と十分な航続距離を備えていたが[3]、キャビン後部が小さく居住性が悪いため旅客や遊覧飛行には適さず、積載スペースが小さく投下用のドアを備えていないため物資の運搬・投下など輸送業務にも向いていなかった。このため、主に練習機やスポーツ機として利用された。

製造・販売

オランダのSpecial Air Services社が所有する機体(2014年)

アクロバット飛行も可能な運動性能により評価は高く、1977年まで生産が続けられ、全日本空輸航空大学校をはじめ、飛行クラブ、個人の自家用などに276機を販売し、その内170機は西ドイツイギリスオーストラリア南アフリカギリシャと言った海外に輸出した[2]。以降は受注生産となり、1986年(昭和61年)の生産終了までに合計296機を売り上げたが、これは500機を超えて成功と言われる小型機業界で、予想された業績を大きく下回った。

練習機・スポーツ機としての購入が主流だったが、公共施設地図航空では遊覧用として3機を保有していた。日本の航空宇宙技術研究所(NAL)は1機を購入し、短距離離着陸(STOL)特性を研究する為の実験機として使用した。航空大学校でも、1971年(昭和46年)から1994年までパイロット養成訓練用機として使用された。

機体寿命により登録が廃止された機体は各地の航空専門学校へ整備訓練用機として売却されたが、近年では教材としても用途廃止されるようになり、空港などへ寄贈され展示品となっていることもある。

富士重工業はFA-200に続いて、アメリカロックウェル・インターナショナルと共同でビジネス用双発プロペラ機FA-300(富士700)を開発、発表したが、50機ほどの販売で生産中止となり、10億円もの損失を出してしまった。もともと航空産業を厄介に感じていた日本興業銀行出身の首脳は、これを機として民間小型機事業からの撤退を決めた。これ以降も自衛隊向けの練習機として小型機を製造している。


  1. ^ a b c d e f g h i j k 木村秀政・田中祥一『日本の名機100選』文春文庫 1997年 ISBN 4-16-810203-3 P.242-243
  2. ^ a b c d e f 日本の航空宇宙工業50年の歩み. 社団法人日本航空宇宙工業会. (2003年5月). p. 25. https://www.sjac.or.jp/common/pdf/toukei/50nennoayumi/4_2_nihonnokoukuki2.pdf 
  3. ^ 内藤子生, 石川登 (1967). “富士重工FA-200軽飛行機について”. 日本航空学会誌 15 (161): 203. doi:10.2322/jjsass1953.15.201. 
  4. ^ 小型機展示
  5. ^ 不明の軽飛行機発見 日光山中 四人とも遺体で『朝日新聞』1978年(昭和53年)8月18日朝刊、13版、23面
  6. ^ “有明海に小型機不時着 1人死亡、1人意識不明―佐賀県沖”. 時事通信社. (2022年4月19日). オリジナルの2022年4月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220418120700/https://www.jiji.com/jc/article?k=2022041800877&g=soc 2022年4月21日閲覧。 
  7. ^ a b 古畑航希 (2022年4月19日). “有明海の小型機事故、「燃料切れ」の連絡 熊本と宮崎の男性2人死亡”. 朝日新聞社. オリジナルの2022年4月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220419023848/https://www.jiji.com/jc/article?k=2022041900349&g=soc 2022年4月21日閲覧。 
  8. ^ “小型機不時着、死者2人に 海底に機体か―佐賀沖”. 時事通信社. (2022年4月19日). オリジナルの2022年4月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220419023848/https://www.jiji.com/jc/article?k=2022041900349&g=soc 2022年4月21日閲覧。 






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