BlackBerry
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/28 03:08 UTC 版)
さまざまなBlackBerry端末 | |
開発元 |
現在 TCL集団(ワールドワイド) BB Merah Putih(インドネシア) Optiemus Infracom(インド) 以前 BlackBerry社 |
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製造元 |
現在 TCL集団(ワールドワイド) BB Merah Putih(インドネシア) Optiemus Infracom(インド) 以前 BlackBerry社 |
種別 | 携帯機器 |
発売日 | 1999年1月19日 |
OS | Android, QNX (as BlackBerry 10), BlackBerry OS |
オンラインサービス | BlackBerry World, Google Play Store, BlackBerry Messenger |
ウェブサイト |
www |
概要
1996年に発売された携帯情報端末を起源とし、2002年より音声通話やウェブサイトの閲覧に対応した。2007年にiPhoneが発売される前から存在しており、スマートフォンの元祖ともいえる存在である。
当初は法人向けのビジネスソリューションとして販売されたシリーズで、ネットワークサービスと連携することでモバイル環境下でもオフィスなどと同等のメールやブラウザを利用できる環境を実現できることがコンセプトに置かれた[2]。iPhoneが発売される以前は一般層にスマートフォンが全く普及しておらず、また、BlackBerry端末はセキュリティが高かったことから、主に欧米のビジネスマンの間で使われていた。日本でも約4,000社が導入をしていた。BlackBerry端末を利用したインターネットサービスは、法人向けサービスのBlackBerry Enterprise Service(BES)と、個人・中小企業向けサービスのBlackBerry Internet Service(BIS)の2種類があった。
2010年第1四半期は、BlackBerry端末の全盛期であり、スマートフォン市場における、当時のリサーチ・イン・モーション社のシェアはノキアに次ぐ世界2位だった。携帯電話業界全体におけるベンダー別のシェアでもノキア・サムスン・LGに次ぐ4位だった[3]。アメリカでの全盛期となる2010年9月には、当時のアメリカのスマホ利用者の37%にあたる約2200万人のユーザーがいたという[4]。しかし、それ以降はiPhoneとAndroidの急激なシェア拡大に押されてBlackberry端末のシェアは低下。2011年にはAndroid端末とiPhoneのユーザー数がどちらもBlackberry端末のユーザー数を追い抜く。BlackBerry端末のユーザー数のピークとなる2013年9月には世界で8,500万人が利用していたが、この頃は既にBlackBerry端末のシェアは1.0%であった。
発売当初はBlackBerry端末のOSとしてBlackBerry OSを使用していたが、2013年度をもってBlackBerry OSの開発を終了し、以降のBlackBerry端末のOSはAndroidとなった。ブラックベリー社は2014年より2015年にかけてセキュリティ企業のM&Aを重ね、主な事業はBlackBerry端末の事業から、企業向けのセキュリティソリューションとなった。その後、2016年9月には、中国のTCL集団に「BlackBerry Mobile」の名前でグローバルライセンスを与え、自らはハードウェアの開発・製造から撤退すると発表した。また、2016年時点でもBlackBerryが未だに強いブランド力を持つ一部のローカル市場においては、現地企業とも提携し、インド市場においてはOptiemus Infracom社に「BlackBerry India」の名義によるBlackberry端末の展開のライセンスを与え、インドネシアにおいてはBB Merah Putih社にBlackberryブランドのライセンスを提供した。
TCL集団は2017年から2020年にかけて、日本を含むグローバル市場においてBlackBerry KEYOne、BlackBerry Motion、BlackBerry KEY2などの製品を展開した。TCL集団の製品は日本においては株式会社FOXやKDDIグループ(au)などから販売されている。また、インドネシア市場においてBB Merah Putih社が2017年にBlackBerry Auroraを発売し、インド市場においてBlackBerry Indiaが2018年にBlackBerry Evolve XおよびBlackBerry Evolveを発売した。
2020年2月、TCL集団によるBlackberry端末の製造・販売が2020年8月31日をもって終了するとBlackBerryの公式Twitterが発表した[5]。サポートは2022年8月31日まで継続される。
2020年8月19日、アメリカ合衆国のスタートアップ・オンワードモビリティは、BlackBerryブランドの5G端末を設計・開発・販売する権利をブラックベリーより取得したことを発表した[6]。ブラックベリーと台湾の鴻海精密工業と共同で5G対応の新規製品を開発し、2021年にも発売される予定となっている[7]。
2021年12月、ブラックベリーは独自OSのサポートを2022年1月4日から順次打ち切ると発表した。これにより、同日からAndroid搭載機種を除くBlackBerry端末が正常に作動しなくなる可能性がある[8]。
2022年1月、オンワードモビリティは2021年登場予定だった5G対応BlackBerry端末を発売できなかったことに対し、プロジェクトが生きていることを報告した[9]。
2022年2月、オンワードモビリティの閉鎖とともに5G対応BlackBerryの開発中止を公表した。
歴史
世界展開
1996年に「Inter@ctive」の名称で発売されたものが、シリーズで最初の製品である。発売当初は、「電子メールの使えるキーボード付き"双方向ポケットベル"」とでもいうべきものであった。
1999年には端末「RIM 850 Wireless Handheld」とともに「BlackBerry Wireless Solution/Enterprise Server software for Microsoft Exchange」を発表。初めてBlackBerryの名称が公に現れる。
2002年には、PDAに小型のキーボードを備え付けた形態となり、端末として初めて「BlackBerry」の名称で発売される。通常のPDAに含まれる住所録やPIM(スケジュール管理)といった機能に加えて、音声通話機能やインターネット上のウェブサイトの閲覧、プッシュ型電子メールやインスタントメッセンジャーにも対応。多機能ではあるが他の携帯電話と違い、端末自体で複雑な設定(接続設定やメール設定、プロキシ設定、トンネリング設定など)をしなくても、社内ネットワークへのセキュアなアクセスやメールの送受信、Webの閲覧、メッセンジャーを使った文字メッセージのやりとり、PIMの同期などが出来る。こうした多機能ながら手軽さが受けた事と、Push型のメールが外出先や自宅での電子メール確認等を容易にしたことなどにより、2004年ユーザー数が200万人を突破するなど、アメリカで急速に普及した。
2007年にはiPhoneシリーズが発売され、この頃よりスマートフォン同士の競争が激化する。BlackBerry端末は他のスマートフォンと違ってQWERTY配列キーボードを搭載した機種が中心であるが、2008年にBlackBerry史上初の折り畳みタイプの機種である「Pearl Flip 8220」を発表[10]、2010年にはQWERTY配列のキーボードとタッチスクリーンが両方搭載された「BlackBerry Torch」を発表するなど、様々なタイプの端末を開発して対抗した。
2009年に第44代アメリカ合衆国大統領に就任するバラク・オバマは、2008年の選挙戦の頃からBlackBerry端末を愛用していた姿で知られた。
2010年代にはビジネスだけでなくコミュニケーションにも力点を置き、TwitterやFacebook、MySpace、mixiといったSNSやGoogleクラウドとの連携なども高めていた。
2013年9月がBlackBerry端末のユーザー数のピークであり、当時世界で8,500万人のBlackBerryユーザーがいた。しかしiPhoneやAndroidなどのシェア拡大に押され、2013年第3四半期の世界シェアは1.0%であった。ただし、同時期のインドネシアでは絶大な人気があり、出荷ベースでの同時期のシェアはサムスン、Smartfrenに続く3位、利用者ベースではインドネシア最大の通信業者Telkomselにおけるスマホ利用者のうち66%にあたる890万人がブラックベリー利用者だった[11]。
2013年1月発売のBlackBerry 10がBlackBerry OSを採用した最後の機種で、2013年度をもってBlackBerry OSの開発を終了。2015年発売のBlackBerry PrivからAndroidをOSとする端末に移行し、日本でもU-mobileから販売開始した[12]。
2016年9月をもってBlackberry端末の開発・製造から撤退。以降は他社が開発した製品のODMをBlackBerryの名義で販売する形式となっている。日本を含む世界市場向けの端末は、中国のTCL集団が製造[13][14]。またBlackBerry端末が世界で唯一売れているインドネシア市場向けには、同国の端末メーカーBB Merah Putih社と提携し、2017年に「BlackBerry Aurora」を発売している。2018年には、2022年5月現在において最後のBlackBerryである「BlackBerry Key2」が発売された。
年表
- 1999年1月19日 - キーボード付き双方向ポケットベルとして発売
- 2002年 - 携帯電話や電子メール、ウェブブラウジング機能などが付いた機種が発売
- 2008年8月 - BlackBerry Bold販売開始
- 2008年9月 - BlackBerry初の折りたたみタイプBlackBerry Pear Flips発売開始
- 2008年10月 欧米向けにタッチスクリーン搭載モデルBlackberry Stormの発売を発表
- 2009年4月1日 - RIM、BlackBerry用アプリ販売/配布サイト「BlackBerry App World」をオープン。
- 2009年6月 - BlackBerry Tour発売
- 2009年10月 - BlackBerry 9700 onix発表
- 2010年8月3日 -タッチパネル+QWERTYキーボード搭載 縦型スライドBlackBerry Torch 9800発表
- 2010年9月27日 - タブレット型端末、PlayBook発表
- 2010年10月18日 - 折りたたみ型QWERTYキー搭載のBlackBerry Style 9670発表
- 2011年4月19日 - BlackBerry タブレット OSを搭載した7インチタブレット端末 PlayBook発売開始
- 2011年8月4日 - BlackBerry OS 7を搭載したBlackBerry Bold 9900/9930、BlackBerry Torch 9810、BlackBerry Torch 9850/9860を発表
- 2011年8月25日 - BlackBerry OS 7を搭載したBlackBerry Curve 9350/9360/9370を発表
- 2013年10月10日 - BlackBerry Messenger(BBM)がAndroidとiPhoneに対応
- ^ “5G対応の新型BlackBerryは「幻」に。事業会社が廃業とプロジェクトの中止を正式に発表”. SIM太郎. 2022年5月21日閲覧。
- ^ 『できるポケット+ BlackBerry Bold 9900』インプレス、2012年、11頁
- ^ 世界第2位のスマートフォンシェアを誇る「BlackBerry」の歴史を振り返る (1) RIMの歴史は1984年にスタート | マイナビニュース
- ^ “comScore Reports September 2010 U.S. Mobile Subscriber Market Share” (2010年11月3日). 2022年1月6日閲覧。
- ^ TCLがBlackberry端末の製造・販売を終了へ、2020年8月に - ケータイ Watch
- ^ “BlackBerry、新たなライセンス先と物理キーボード搭載5Gスマートフォン開発”. ITmedia. (2020年8月20日) 2021年2月12日閲覧。
- ^ “米スタートアップが挑む「ブラックベリー」復活”. 日本経済新聞. (2021年2月11日) 2021年2月12日閲覧。
- ^ “ブラックベリー、旧モデル使用不可に サポート終了で”. AFP通信 (2022年1月5日). 2022年1月5日閲覧。
- ^ “2021年OnwardMobilityで復活予定だった元祖スマートフォン「BlackBerry」OnwardMobilityのサイトが更新!”. Saiga NAK (2022年1月10日). 2022年1月10日閲覧。
- ^ BlackBerry Pearl Flip 8220を発表
- ^ BlackBerry「Jakarta」はインドネシアで起死回生できるか - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)
- ^ a b U-mobile、物理キー搭載Androidスマホ『BlackBerry PRIV』を販売開始 - Engadget日本版
- ^ BlackBerry Secures Global Smart Phone Software and Brand Licensing Agreement with TCL Communication - MarketWired (英文)
- ^ BlackBerry、ソフトウェアおよびブランド・ライセンスでTCL Communicationと合意 - <2016年12月19日>エキサイトニュース
- ^ NTTドコモBIS報道発表
- ^ 「spモード」は年内対応:ITメディア2010年09月02日
- ^ BlackBerry® Boldのバージョンアップ情報 NTTドコモ
- ^ a b BlackBerry UEM: Securing Your Enterprise from a Single Console <2016年12月8日>BlackBerry
- ^ BlackBerry UEM Architecture and data flows BlackBerry
- ^ NTTドコモBlaciBerry開始プレスリリース
- ^ NTTドコモサイトブラックベリーインターネットサービス
- ^ ドコモUSAによる携帯電話取次販売サービス報道発表
- ^ BlackBerry向けに有料アプリケーションを提供開始(NTTドコモ報道発表資料)
- ^ 公衆無線LAN無料キャンペーンの実施について(NTTドコモ報道発表資料)
- ^ BalckBerry Bold 新色(白)発売開始
- ^ ドコモ スマートフォン BalckBerry Bold 9700
- ^ BlackBerry Enterprise Server Express を無償で入手しよう
- ^ 米国MDM大手が日本法人設立、NTTドコモが販売代理店に 日経ITPro
- ^ BLACKBERRY CLASSSIC | エックスモバイル株式会社
- ^ BlackBerry、過去の訴訟相手を買収へ 法人モバイル管理を強化 -<2015年9月7日>日経ITPro
- ^ Good Work - NTTドコモ法人向けサイト
- ^ BlackBerry、日本で法人向けソフトウェア事業を再始動 -<2016年7月27日>ビジネスネットワーク.jp
- ^ 「ブラックベリーサービス」の新規受付停止及びサービス終了について
- ^ 「Good Work」 ドコモの法人向けサイト docomo Business Online
- ^ “強固なセキュリティ機能を持ったBlackBerry最新デバイス「BlackBerry(R)KEYone」 純正アクセサリーと併せて、6月29日より販売開始! | FOX.INC”. foxinc.jp. 2019年4月11日閲覧。
- ^ “BlackBerry最新端末「BlackBerry(R)KEY2」が今夏発売! 世界で唯一のバンド18対応の日本国内モデルとして、国内初の3大キャリアSIMの利用が可能に! | FOX.INC”. foxinc.jp. 2019年4月11日閲覧。
- ^ “「au +1 collection」からBlackBerry最新端末「BlackBerry® KEY2 Black」を9月7日より発売! | スマートフォン・携帯電話 | au”. www.au.com. 2019年4月11日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2018年8月31日). “au、物理キーボード搭載の「BlackBerry KEY2」をSIMフリーで発売”. ケータイ Watch. 2019年4月11日閲覧。
- ^ BlackBerryアプリ開発サポート
- ^ RIM,BlackBerry用アプリ販売/配布サイト「BlackBerry App World」をオープン |IT-Pro
- ^ BlackBerry Appworld
- ^ 日本版BlackBerry App World
- ^ 「BlackBerry App World 2.0」が登場、ID機能など追加(ケータイWatch)
- ^ ベリーストアβ版
- ^ デスクトップソフトウェアRIMサイト
- ^ デスクトップマネージャー対応オーガナイザー(Windows)
- ^ デスクトップマネージャー対応オーガナイザー(MAC)
- ^ BlackBerryセキュリティーに関するニュース記事
- ^ UAE、ブラックベリー使用禁止へ 「通信監視難しい」(毎日新聞社)
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