陸奥圓明流外伝 修羅の刻 源義経編

陸奥圓明流外伝 修羅の刻

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/20 05:57 UTC 版)

源義経編

『月刊少年マガジン』1997年1月号から12月号に掛けて、「修羅の門」第四部終了と「海皇紀」の開始の間に掲載。単行本の七巻から拾巻に収録されている。1年に渡って連載され、単行本も4冊と最長の作品となっている。

平安時代末期を舞台に、陸奥鬼一と源義経の交流を描く。

あらすじ(源義経編)

源氏平氏の2つの武家平治の乱の平氏の勝利により、誰もが源氏の滅亡を考えていた。そんな中、源氏勢の若武者「牛若丸」は、平氏勢から追われ逃げ惑っていた。五条大橋(作者によれば現在の五条大橋ではなく、京の北東賀茂川を渡って下鴨神社に向かう為の橋、現在の松原橋付近)の下へ逃げ込んだ所で、彼は巨躯を誇る僧兵・武蔵坊弁慶に出会う。牛若丸は弁慶に平氏を討つ大望を打ち明ける。そこへ大橋に夜な夜な現れ、数多くの武士を打ち倒していた為『鬼』と恐れられていた陸奥鬼一が現れ、弁慶と闘う。弁慶は敗れたものの、牛若は自らの命を差し出して弁慶を救おうとする。そこへ平氏の配下の者が牛若を捕らえる為に現れる。牛若は平氏の者共の前で自ら元服を宣言し義経を名乗る。そこで『鬼』の幼女である静が一括すると平氏の配下の者共は逃げ出した。平氏の者の軟弱振りを見た弁慶は平氏を討つ事が万に一つは起こり得ると考えを改め、義経と主従を結ぶ。鬼一から金璽を借り受け、義経と弁慶は奥州平泉へと身を寄せる。

時は流れて、治承4年。兄・源頼朝が挙兵した事を知った義経は、藤原秀衡に迷惑が掛からぬ様に自身と弁慶、平泉に来る途中で配下となった伊勢三郎義盛の3人のみで頼朝に合流しようとするが、秀衡からの命(兄弟本人達の意思もあった)を受けた、義経を慕う佐藤兄弟も行動を共にする事になる。

頼朝は既に一度敗れ、富士川の戦いは後が無い状態だった。そんな中、頼朝の陣に合流した義経らは、鬼一とも再開する。鬼一は「頼朝の運を見る」として、富士川の水面に掌を打ち、寝ていた水鳥の大群が一斉に飛び立たせた。翌朝、源氏の軍はどうにか体裁を整えていたものの、平氏の軍は水鳥に驚いで姿を消していた。

木曾義仲との戦も制し、義経は平氏を討つ為に一ノ谷の戦いに挑む。鬼一が提案した作戦は一ノ谷の裏手の断崖絶壁からの逆落としであったが、義経はこれを遂行する。しかし、その後の屋島の戦い佐藤三郎嗣信が義経を庇って討死する。

海上へと逃れた平氏を討つ為、熊野水軍の長・熊野別当を鬼一と静が誘拐して来て、義経が口説き落とし味方に付けた。そして壇ノ浦の戦い。義経は勝利を得るものの、鬼一は平氏の強者・平教経と闘い、共に海中へと消えた。

平氏を討つという願いは叶ったものの、大きすぎる義経の功績に頼朝とその妻・北条政子は危惧を抱く。頼朝の許可を得ずに後白河法皇から判官の位を授かったと、義経に追討の命を下した。逃避行の中、義経を庇って佐藤四郎忠信と伊勢三郎義盛が討死し、静は義経の子を身籠っていた事で逃避行の足手纏いとならない様鎌倉幕府に捕まる事を選ぶ。

義経と弁慶は再び藤原秀衡を頼って奥州へと逃れた。息子・虎若を産んだ静も鬼一に合流し、奥州へとやって来る。藤原秀衡が亡くなり藤原泰衡が跡を継いだが、鎌倉幕府からの圧力に耐えられなくなり、義経を討つ事を決意する。衣川館を護る為、弁慶は立ち往生。弁慶との再戦の約が果たされない事を知った鬼一は義経の身代わりとして自らの首を斬った。義経と静、虎若は鬼一に言われた通り、陸奥の隠れ里へと逃げ延びた。時が流れ、虎若が陸奥の名を継いで虎一となった。

登場人物(源義経編)

陸奥一族

陸奥 鬼一(むつ きいち)
115?年生まれ。武蔵坊弁慶と闘い勝利した後に、その場に居合わせた牛若丸(源義経)の人を惹き付ける魅力と、その正直さから来る危うさに好感を持つ。
陸奥に伝わる金璽を授け義経に奥州へ行くように助言し、義経が奥州藤原家と強い繋がりを持つ切っ掛けを作る。義経が挙兵した後も、度々義経の前に現れ、助言をしたり、時には自ら戦ったりする等、軍師・戦力として義経が数々の戦に勝利する切っ掛けを与える。
その後、頼朝に処刑されかけた甥・虎若を救い合流、共に平泉へ。だが、鎌倉の強大な圧力に屈した藤原泰衡の命で館を襲撃された際に、妹・静に「源氏では無く陸奥として育てろ」と後事を託し、自身は義経の身代わりとなり、再戦の約条を果たす事無く逝った弁慶との勝負を望んで壮絶な最期を遂げる。
(しずか)
静御前として知られる実在の人物。本作では陸奥鬼一の妹として陸奥の一族に連なる人物とされている。舞いの名手で絶世の美女。義経と両思いになり虎若(後の虎一)を産む。
陸奥 虎一(むつ こいち)
幼名・虎若(とらわか)。1186年生まれ。義経と静の息子。生後間もなく砂浜に埋められながらも強靭な生命力で生き延び、鬼一に助けられる。その後祖父によって陸奥として育てられ、母から鬼一の刀と陸奥の名を継ぎ、「虎一」の名を与えられた。生まれ落ちたその瞬間から修練を積む陸奥や不破に置いて、約三歳から修練を始めて陸奥の名を継いだ例外的な人物。もっとも、数え三歳にして鬼一の脚に蹴りを入れて伯父の欲目もあったのだろうが「いい蹴りだ」と褒められていた。
鬼一の父
名前・生没年不明。鬼一・静の父で、鬼一、そして虎一を鍛える。

義経の仲間

源 九郎 義経(みなもと の くろう よしつね)
力もなく武士らしからぬ容貌でよく泣くが、真っ直ぐな瞳で人を惹き付ける魅力は抜群にあり、用兵や統率力に優れ大将の器を持つ若武者。また、しばしば鬼一の助言に従い戦をする。陸奥鬼一をして「誰よりも丈夫(ますらお)の心を魅く丈夫だ」と言わしめる程の実直な人柄は、弁慶や鬼一を始めとする多くの者達に慕われた。
武蔵坊 弁慶(むさしぼう べんけい)
義経四天王。薙刀を得物とし、怪力無双の巨体を持つ僧兵。その強さ故に昔からの様だと言われているが(義経は鬼は鬼でも善鬼と呼ぶ)普段は穏やかで礼儀があり、鬼の様になるのは丈夫と戦う時だけである。
伊勢 三郎 義盛(いせ さぶろう よしもり)
義経四天王。坂東の武士だったが、平治の乱で平氏に源氏が敗れた事により野盗になる。その後、奥州まで逃げる時に捕まりそうになった所を義経一行に助けられる。義経の真っ直ぐさに魅せられ、また、真っ直ぐなだけでは世の中は渡れぬと義経の供をする。吉野山で追っ手に囲まれた時に義経の影武者となった忠信の付き人として戦い、囲みを破って逃走した後、伊勢で守護を襲い奮戦の後、自害する。
佐藤 三郎 嗣信(さとう さぶろう つぐのぶ)
奥州藤原氏に仕える佐藤兄弟の兄。後に義経に惚れ込み、義経四天王として付き添う。
短気でせっかちな性格。屋島の戦いで義経が自分の落とした弱弓が平氏の手に渡ると馬鹿にされて味方の士気が下がるからと、落とした弓を拾おうとした際、義経を狙った教経の矢から身を挺して庇い死亡。
佐藤 四郎 忠信(さとう しろう ただのぶ)
佐藤兄弟の弟。後に義経四天王。
嗣信と対照的に温和で、冷静な性格。兄と同様に義経に付き添う。吉野山で追っ手に囲まれた時に影武者として義経を逃がす為の囮となり死亡。

源氏勢

源 頼朝(みなもと の よりとも)
源氏の棟梁として平家打倒に立ち上がる。義経の兄だが源氏の棟梁が2人になることを恐れ、出来のいい弟を疎んでいる。知盛曰く、猜疑心が異常な程強く、哀れな程奥州藤原氏を恐れている。北条家を後ろ盾としており、妻・政子には頭が上がらない。
その人の目を見て「善き人」であるか判断する義経であったが、富士川の戦いの後に再開した際には義経は感涙で頼朝の目を見る事は叶わなかった。
北条 政子(ほうじょう まさこ)
源頼朝の妻。別名「尼将軍」。頼朝は側室も作れない程彼女を恐れている。かなりの権力を持ち、実質的に鎌倉を動かしていると言っても過言ではない。時に、頼朝も戸惑う程非情な手段を用い、義経達を苦しめる。頼朝の死後、待っていたかの様に牙を剥き、瞬く間に幕府を乗っ取る。
梶原 景時(かじわら かげとき)
頼朝が源氏の棟梁を2人と作らない為に義経の軍監として功を立てさせない様に付けた、いわゆる「梶原の讒言(ざんげん)状」で有名な人物。しかし、義経一行には軽くあしらわれ、頼朝への報告に事実を曲げ義経の功を伏せる事しか出来ない。しかし、それが頼朝の猜疑心によって功を奏し、義経追討の引き金となった。
畠山 平次郎 重忠(はたけやま へいじろう しげただ)
坂東一の武士。元は平氏の出。頼朝には疑問を抱きつつも、忠実に従う家臣。鬼一と勝負するが、自分には鬼一と戦った弁慶、教経のような「鬼」は備わっていないと悟り、自ら敗北を認める。
土肥 実平(といの さねひら)
平家討伐の際に範頼の軍監として加わる。義経にも協力的。
土佐坊 昌俊(とさのぼう しょうしゅん)
頼朝の命で義経の館を襲ったが為に鬼一に殺される。
木曽 義仲(きそ よしなか)
入京した後の我が物顔の振舞いが法皇の怒りに触れ、義仲追討の命が出される。義経はその討伐に向かい、義仲に降伏するか、それが叶わぬなら木曽に逃げる様に言う。本来、義経の勝ち戦にも関わらず逃げる様に言った、その人柄に感服して木曽に帰る。その間際、鎌倉と法皇には心を許すなと告げる。
巴御前(ともえ ごぜん)
女武者だが強い、義仲と愛し合っている人物。

平氏勢

平 宗盛(たいら の むねもり)
清盛亡き後の暗愚な大将。負けそうになると一番に逃げ出し、他の親族からの信頼は薄い。
平 教経(たいら の のりつね)
平氏の勇将。鬼一も認める実力者で戦には欠かせない人物。知盛の知略に全幅の信頼を置いており、また、知盛からもその勇猛さに絶対の信頼を置かれている。壇ノ浦の戦いでは鬼一との死闘の果てに負けを悟り、義経を道連れに海へ身を投じようとするが、またも鬼一に阻止され、鬼一と共に海中に消える(鬼一はその後、海から生還する)。
平 知盛(たいら の とももり)
惰弱な大将の宗盛を補佐する実質的な平氏の指導者。手練の兵法家であり智謀知略に富んでいる。陣立てや戦況、人相を見る観察眼はかなりのもので、他の親族からの信頼は厚い。壇ノ浦の戦いで完璧と思われた陣立て、戦法をとるが、教経が鬼一に敗れるという計算外の事態が起こり、また、そうしている内に潮の流れが変わった為に敗北。鎧を二領装着して海へ身を投げ死亡。

奥州藤原氏

藤原 秀衡(ふじわら の ひでひら)
奥州17万騎を擁し、唯一平氏から独立している武家集団の長。かなりの老人だが王者の風格を備える名君。奥州は昔、陸奥一族により守られた過去があるので奥州は陸奥と共にあり、陸奥は奥州の守護神という言い伝えから鬼一の金璽を事の外重んじる。
藤原 泰衡(ふじわら の やすひら)
秀衡の亡き後に家督を継ぎ、義経と国衡で3人で力を合わせて奥州藤原氏を守る事を誓う。しかし、鎌倉の強大な圧力に屈してしまい、義経の館を襲撃する。
藤原 国衡(ふじわら の くにひら)
秀衡の長男。

その他(源義経編)

湛増(たんぞう)
21代熊野別当。兵2000、船200艘を率いる熊野水軍の長。
鬼一と静の仲介で義経と会い、「馬鹿は嫌いだが、大馬鹿なら話は別」と、その真っ直ぐな人柄に魅せられ源氏に味方する事を決める。
後白河法皇(ごしらかわほうおう)
義経と頼朝を仲間割れさせて、権力を取り戻そうと企む。

注釈

  1. ^ 武蔵は八雲の無空波を受け、倒れる寸前に自分の負けを告げ、寛永御前試合編に於いても、幕府の使者に対して「無敗ではござらん」と無敗である事を否定する等、武蔵自身は八雲に負けたと思っている。
  2. ^ 辰巳が欲しかったのは琥珀の持っていた握り飯だったので、琥珀を貰い受ける事を拒否するが、琥珀の意思もあって結局琥珀を貰い受ける事になる
  3. ^ 本人は力士になるつもりは無かったが、「そんな奴に殺されたのでは親父が哀れすぎる。力士になって自分より強い奴と戦って殺されろ」と言われて力士になる事を決意した。
  4. ^ また一族屈指の頑丈さと回復力があると自称しており、あまり似てない父子である現から九十九に受け継がれた数少ない特徴。

出典

  1. ^ 修羅の刻 (1)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  2. ^ 修羅の刻 (2)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  3. ^ 修羅の刻 (3)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  4. ^ 修羅の刻 (4)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  5. ^ 修羅の刻 (5)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  6. ^ 修羅の刻 (6)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
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  8. ^ 修羅の刻 (8)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  9. ^ 修羅の刻 (9)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  10. ^ 修羅の刻 (10)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  11. ^ 修羅の刻 (11)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  12. ^ 修羅の刻 (12)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  13. ^ 修羅の刻 (13)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  14. ^ 修羅の刻 (13) 裏|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
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  16. ^ 修羅の刻 (15)|作品紹介” (n.d.). 2011年9月19日閲覧。
  17. ^ 修羅の刻 (16)|作品紹介”. 2016年1月15日閲覧。
  18. ^ 修羅の刻 (17)|作品紹介”. 2016年4月15日閲覧。
  19. ^ 修羅の刻 (18)|作品紹介”. 2019年8月16日閲覧。
  20. ^ 修羅の刻 (19)|作品紹介”. 2024年4月17日閲覧。
  21. ^ 修羅の刻 (20)|作品紹介”. 2024年4月17日閲覧。
  22. ^ 修羅の刻 (21)|作品紹介”. 2024年5月16日閲覧。
  23. ^ 修羅の刻〈壱〉陸奥円明流外伝(小説)”. 講談社. 2022年3月18日閲覧。






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