茂木健一郎
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研究
エピソード
小学校5年生の頃にアインシュタインの伝記を読み、科学者を志す[28]。博士課程の頃、数学者ロジャー・ペンローズの『The Emperor's New Mind』を読み、脳科学の道へ進むことを決心する[28]。31歳の頃、電車の中で、周波数などの数値をいくら分析しても「ガタンゴトン」という音の質感にはたどりつけないことに気づき、『クオリア』の研究を決意する[29]。普段は脳科学やそれに関連するテーマである人工知能などを研究している。現在の研究のメインテーマは『意識(クオリア)』であり、最終的には意識の謎を解明したいと考えている[28]。
博士論文
博士論文は『Mathematical Model of Muscle Contraction(筋収縮の数理的モデル)』(東京大学より学位取得)[30][31]。博士論文は、「グラフ変換法」によって、反応ネットワークの性質を解析したもの。その後、グラフ変換法は非対称結合神経回路網の解析に応用される。クオリアも含んだすべての現象を扱いうる「拡張された物理学」を志向している。
意識研究
概要
「今、ここ」の意識は、「今、ここ」の体験から生まれると考えることが重要だとしている。たとえば、色の知覚についての科学的知識をいくら集めても、色を経験するという直接的な体験には至れないのである。よって、統計的手段では本質的な意識の解明にはつながらないとしている。また、従来の意味での自然科学のみでは解明できず、全ての人類の営みを総合した総合的文化運動の結果としてのみ解明が可能だとしている[32]。
詳細
神経科学における事実上の「セントラル・ドグマ」である「反応選択性」の概念では心脳問題を解決するには不十分だと主張し、「認識におけるマッハの原理」や「相互作用同時性」といった概念を提案している。両眼視野闘争、マガーク効果、神経細胞の自発的活動についてのモデル、身体イメージ、不確実性の存在下での選択などに関する論文を発表している。
現在
意識研究はしているものの、その「本当の本チャンの部分」については約20年間に渡って進化が無いため、1997年からは「長期休暇中」であると2016年12月に述べている[33]。16年ぶりの書き下ろしで『クオリアと人工意識』(講談社現代新書)を書いた。
アハ体験
アハ体験 (a-ha! experience) とは、「わかったぞ」という体験を表す、英語圏で広く使われている言葉であるとともに、人間の脳の不思議な能力を表すキーワードである。類似の言葉として、「ひらめき」や「創造性」がある。アハ体験により、0.1秒という短時間で脳の神経細胞がいっせいに活動し、世界の見方が変わってしまう。[34]
アハ体験をするためのPlayStation Portable向けゲームソフト『ソニーコンピュータサイエンス研究所 茂木健一郎博士監修 脳に快感 アハ体験』(茂木が監修)が2006年6月22日にセガから発売され[35]、同年11月30日には続編の『ソニーコンピュータサイエンス研究所 茂木健一郎博士監修 脳に快感 みんなでアハ体験!』も発売された[36]
セキュア・ベース
茂木は、著書『プロフェッショナルたちの脳活用法 (生活人新書)』において、NHK のテレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』などにおける多くのプロフェッショナルとの対話から、彼らの成功の一因として「セキュア・ベース」を紹介している。日本語に訳せば「安全基地」となり、悩んだり迷ったりしたときに避難できる場所という意味であり、これが人間のやる気と深く関わっているという。
注釈
- ^ The Physiological Societyにおける学会発表のプロシーディングである。PubMedにも記述あり。また、Werner, JS & Chalupa, LM (2003), The Visual Neurosciences, MIT Press. (ISBN 0262033089)に引用されている。
- ^ 番組が協賛していたアートイベント『TOKYO DESIGN WEEK』において2016年11月6日に発生した、死傷者が出た火災事故のために翌日放送予定分が休止され、以降も放送されないまま打ち切りとなった。
出典
- ^ 茂木健一郎 『脳はもっとあそんでくれる』 中央公論新社〈中公新書ラクレ〉、2008年12月、63頁。
- ^ 脳なんでも相談室。法学部に所属していた頃に学んだこと 茂木健一郎オフィシャルブログ LINE BLOG
- ^ 茂木健一郎、『結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方』、学研パブリッシング、2015年、203ページ、ISBN 978-4-05-406259-7。
- ^ 【無料放送・5金スペシャルPart2】クズのコスパ野郎にならないために生きがいを見つけよう. 30 March 2019. 2019年6月19日閲覧。56分05秒頃から。
- ^ “茂木健一郎 クオリア日記: 母親が居間で叫んで教えてくれて、ぼくが二階から戦闘機のスクランブル発進のように駆け下りてくる。”. 茂木健一郎. 2016年8月2日閲覧。
- ^ “茂木健一郎 クオリア日記: 良かったですね、有吉さん”. 茂木健一郎. 2016年8月2日閲覧。
- ^ kenichiromogiのツイート(829814876289658880)
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- ^ 茂木健一郎 『脳を最高に活かせる人の朝時間 頭も心もポジティブに』 すばる舎、2013年。ISBN 978-4799102022。
- ^ Ken Mogi - YouTube
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- ^ クレイジーなプロフェッサーへの道: 茂木健一郎 プロフェッショナル日記
- ^ ハードトーク・知と愛、series 1, episode 32 『初めて自分で髪の毛を切った日のこと』. 2018年10月26日閲覧。
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- ^ 2014年1月のツイート
- ^ 慶應SDM公開講座「脳とビッグデータ」 茂木健一郎特別招聘教授講演 | SDM|慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 2017年8月5日参照
- ^ 「東京デザインウィークでの火災について。」公式ブログ、2016年11月7日
- ^ 脳科学者の茂木健一郎氏がゲスト登壇 最新のニューロリサーチ事例が聞ける無料セミナー開催|マクロミル 2017年8月5日参照
- ^ “校長室より”. 通信制高校の屋久島おおぞら高等学校. 2022年2月23日閲覧。
- ^ a b c Ken Mogi - YouTube
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- ^ 茂木健一郎『東京藝大物語』講談社〈講談社文庫〉、2017年。ISBN 978-4062936095
- ^ 『東京藝大物語』、ついに完成! 感動の表参道。. 茂木健一郎. 2018年10月26日閲覧。
- ^ 『茂木健一郎監修 脳が元気になるダイアリー』TOKYO FM、2013年。ASIN B00FML9OM2
- ^ 『ヤセないのは脳のせい』新潮新書、2017年。ISBN 978-4106107153
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- ^ 脳とコンピュータはどう違うか―究極のコンピュータは意識をもつか(ブルーバックス)、2003年。ISBN 978-4062574129
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- ^ “過去のMen of the Year受賞者たち【国内編】”. GQ JAPAN. 2014年11月21日閲覧。
- ^ “新パーソナリティ・茂木健一郎氏 - Dream Heart(ドリームハート) - 茂木健一郎 - TOKYO FM 80.0MHz”. TOKYO FM. 2018年10月26日閲覧。
- ^ “Dream Heart(ドリームハート) - 茂木健一郎 - TOKYO FM 80.0MHz”. TOKYO FM. 2018年1月29日閲覧。
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