茂木健一郎 研究

茂木健一郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/16 07:47 UTC 版)

研究

エピソード

小学校5年生の頃にアインシュタインの伝記を読み、科学者を志す[28]。博士課程の頃、数学者ロジャー・ペンローズの『The Emperor's New Mind』を読み、脳科学の道へ進むことを決心する[28]。31歳の頃、電車の中で、周波数などの数値をいくら分析しても「ガタンゴトン」という音の質感にはたどりつけないことに気づき、『クオリア』の研究を決意する[29]。普段は脳科学やそれに関連するテーマである人工知能などを研究している。現在の研究のメインテーマは『意識クオリア)』であり、最終的には意識の謎を解明したいと考えている[28]

博士論文

博士論文は『Mathematical Model of Muscle Contraction(筋収縮の数理的モデル)』(東京大学より学位取得)[30][31]。博士論文は、「グラフ変換法」によって、反応ネットワークの性質を解析したもの。その後、グラフ変換法は非対称結合神経回路網の解析に応用される。クオリアも含んだすべての現象を扱いうる「拡張された物理学」を志向している。

意識研究

概要

「今、ここ」の意識は、「今、ここ」の体験から生まれると考えることが重要だとしている。たとえば、色の知覚についての科学的知識をいくら集めても、色を経験するという直接的な体験には至れないのである。よって、統計的手段では本質的な意識の解明にはつながらないとしている。また、従来の意味での自然科学のみでは解明できず、全ての人類の営みを総合した総合的文化運動の結果としてのみ解明が可能だとしている[32]

詳細

神経科学における事実上の「セントラル・ドグマ」である「反応選択性」の概念では心脳問題を解決するには不十分だと主張し、「認識におけるマッハの原理」や「相互作用同時性」といった概念を提案している。両眼視野闘争、マガーク効果、神経細胞の自発的活動についてのモデル、身体イメージ、不確実性の存在下での選択などに関する論文を発表している。

現在

意識研究はしているものの、その「本当の本チャンの部分」については約20年間に渡って進化が無いため、1997年からは「長期休暇中」であると2016年12月に述べている[33]。16年ぶりの書き下ろしで『クオリアと人工意識』(講談社現代新書)を書いた。

アハ体験

アハ体験 (a-ha! experience) とは、「わかったぞ」という体験を表す、英語圏で広く使われている言葉であるとともに、人間の脳の不思議な能力を表すキーワードである。類似の言葉として、「ひらめき」や「創造性」がある。アハ体験により、0.1秒という短時間で脳の神経細胞がいっせいに活動し、世界の見方が変わってしまう。[34]

アハ体験をするためのPlayStation Portable向けゲームソフト『ソニーコンピュータサイエンス研究所 茂木健一郎博士監修 脳に快感 アハ体験』(茂木が監修)が2006年6月22日にセガから発売され[35]、同年11月30日には続編の『ソニーコンピュータサイエンス研究所 茂木健一郎博士監修 脳に快感 みんなでアハ体験!』も発売された[36]

セキュア・ベース

茂木は、著書『プロフェッショナルたちの脳活用法 (生活人新書)』において、NHK のテレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』などにおける多くのプロフェッショナルとの対話から、彼らの成功の一因として「セキュア・ベース」を紹介している。日本語に訳せば「安全基地」となり、悩んだり迷ったりしたときに避難できる場所という意味であり、これが人間のやる気と深く関わっているという。


注釈

  1. ^ The Physiological Societyにおける学会発表のプロシーディングである。PubMedにも記述あり。また、Werner, JS & Chalupa, LM (2003), The Visual Neurosciences, MIT Press. (ISBN 0262033089)に引用されている。
  2. ^ 番組が協賛していたアートイベント『TOKYO DESIGN WEEK』において2016年11月6日に発生した、死傷者が出た火災事故のために翌日放送予定分が休止され、以降も放送されないまま打ち切りとなった。

出典

  1. ^ 茂木健一郎 『脳はもっとあそんでくれる』 中央公論新社〈中公新書ラクレ〉、2008年12月、63頁。
  2. ^ 脳なんでも相談室。法学部に所属していた頃に学んだこと 茂木健一郎オフィシャルブログ LINE BLOG
  3. ^ 茂木健一郎、『結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方』、学研パブリッシング、2015年、203ページ、ISBN 978-4-05-406259-7
  4. ^ 【無料放送・5金スペシャルPart2】クズのコスパ野郎にならないために生きがいを見つけよう. 30 March 2019. 2019年6月19日閲覧56分05秒頃から。
  5. ^ 茂木健一郎 クオリア日記: 母親が居間で叫んで教えてくれて、ぼくが二階から戦闘機のスクランブル発進のように駆け下りてくる。”. 茂木健一郎. 2016年8月2日閲覧。
  6. ^ 茂木健一郎 クオリア日記: 良かったですね、有吉さん”. 茂木健一郎. 2016年8月2日閲覧。
  7. ^ kenichiromogiのツイート(829814876289658880)
  8. ^ kenichiromogiのツイート(689981177671868421)
  9. ^ kenichiromogiのツイート(837607041526947841)
  10. ^ 茂木健一郎 『脳を最高に活かせる人の朝時間 頭も心もポジティブに』 すばる舎、2013年。ISBN 978-4799102022
  11. ^ Ken Mogi - YouTube
  12. ^ Ken Mogi - YouTubeチャンネル
  13. ^ Ken Mogi - YouTube”. 2018年10月26日閲覧。
  14. ^ クレイジーなプロフェッサーへの道: 茂木健一郎 プロフェッショナル日記
  15. ^ ハードトーク・知と愛、series 1, episode 32 『初めて自分で髪の毛を切った日のこと』. 2018年10月26日閲覧
  16. ^ a b c 春日部市. “かすかべ親善大使 茂木 健一郎さん/春日部市公式ホームページ”. 2018年10月26日閲覧。
  17. ^ 表参道カレッジ よくあるご質問, 学長からのメッセージ - 表参道カレッジホームページ
  18. ^ 一般財団 東アジア共同体研究所”. 一般財団 東アジア共同体研究所. 2016年7月24日閲覧。
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  23. ^ 2014年1月のツイート
  24. ^ 慶應SDM公開講座「脳とビッグデータ」 茂木健一郎特別招聘教授講演 | SDM|慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 2017年8月5日参照
  25. ^ 「東京デザインウィークでの火災について。」公式ブログ、2016年11月7日
  26. ^ 脳科学者の茂木健一郎氏がゲスト登壇 最新のニューロリサーチ事例が聞ける無料セミナー開催|マクロミル 2017年8月5日参照
  27. ^ 校長室より”. 通信制高校の屋久島おおぞら高等学校. 2022年2月23日閲覧。
  28. ^ a b c Ken Mogi - YouTube
  29. ^ ウィンウィン対談 茂木 健一郎さん 「もっと人間の脳って自由で可能性がある」”. 株式会社 イー・ウーマン. 2018年10月26日閲覧。
  30. ^ 博士論文書誌データベース”. 2015年9月8日閲覧。[出典無効]
  31. ^ CiNii 博士論文 - Mathematical model of muscle contraction”. 国立情報学研究所. 2016年7月24日閲覧。
  32. ^ クオリア・マニフェスト”. 茂木健一郎. 2018年10月26日閲覧。
  33. ^ 茂木健一郎『フランシス・クリック、そして脳と意識の関係。』(日本分子生物学会)の9分55秒以降の発言。
  34. ^ アハ!体験とは何か?|アハ!体験|ソニー”. ソニー. 2018年10月26日閲覧。
  35. ^ 脳に快感アハ体験! (セガ): 2006|書誌詳細|国立国会図書館サーチ”. 国立国会図書館. 2018年10月26日閲覧。
  36. ^ PSP用ゲームソフト「脳に快感 アハ体験!」のDL版が8月9日に登場 - 4Gamer.net”. Aetas. 2018年10月26日閲覧。
  37. ^ a b mogilab”. 茂木健一郎. 2017年10月29日閲覧。
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  39. ^ 茂木健一郎『東京藝大物語』講談社〈講談社文庫〉、2017年。ISBN 978-4062936095
  40. ^ 『東京藝大物語』、ついに完成! 感動の表参道。. 茂木健一郎. 2018年10月26日閲覧
  41. ^ 『茂木健一郎監修 脳が元気になるダイアリー』TOKYO FM、2013年。ASIN B00FML9OM2
  42. ^ 『ヤセないのは脳のせい』新潮新書、2017年。ISBN 978-4106107153
  43. ^ 脳と創造性|gacco”. 2017年10月29日閲覧。
  44. ^ a b kenichiromogiのツイート(51202856904179712)
  45. ^ 脳とコンピュータはどう違うか―究極のコンピュータは意識をもつか(ブルーバックス)、2003年。ISBN 978-4062574129
  46. ^ 論理と感性の先端的教育研究拠点 慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 人文科学分野 HOME > 組織 > 脳と進化班 > 田谷 文彦”. 慶應義塾大学. 2017年10月29日閲覧。
  47. ^ a b 研究者の作法”. 瀬名NEWS (2007年4月17日). 2007年4月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月6日閲覧。
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  50. ^ a b c d e f いまやオカルト研究者?!脳科学者・茂木健一郎へ噴出した「批判」(月刊『テーミス』2008年6月号)
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  52. ^ 【茂木健一郎と池田大作の往復書簡】: 大槻義彦のページ”. 大槻義彦公式ブログ (2010年4月5日). 2010年4月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月30日閲覧。
  53. ^ a b c d “茂木健一郎氏、所得4億無申告…印税や出演料など”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社): p. 13S版39面. (2009年11月10日). オリジナルの2013年8月28日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/Ulu8a 
  54. ^ a b c “「仕事に追われ暇なかった」…茂木氏一問一答”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2009年11月10日). オリジナルの2014年6月15日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/iXRC 
  55. ^ お詫び:茂木健一郎クオリア日記”. 茂木健一郎 (2009年11月11日). 2012年12月22日閲覧。
  56. ^ 野口悠紀雄 『日本を破滅から救うための経済学』 ダイヤモンド社、2010年、125-126頁。ISBN 978-4478014073
  57. ^ 小林秀雄賞”. 2016年7月23日閲覧。
  58. ^ 潮出版社 USIO【桑原武夫学芸賞・過去の受賞作】”. 2016年7月23日閲覧。
  59. ^ 学⽣論⽂昭和池⽥賞 | 公益財団法人 昭和池田記念財団”. www.showaikedakinen-zaidan.or.jp. 2024年3月24日閲覧。
  60. ^ 過去のMen of the Year受賞者たち【国内編】”. GQ JAPAN. 2014年11月21日閲覧。
  61. ^ 新パーソナリティ・茂木健一郎氏 - Dream Heart(ドリームハート) - 茂木健一郎 - TOKYO FM 80.0MHz”. TOKYO FM. 2018年10月26日閲覧。
  62. ^ Dream Heart(ドリームハート) - 茂木健一郎 - TOKYO FM 80.0MHz”. TOKYO FM. 2018年1月29日閲覧。


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