産業技術短期大学 概観

産業技術短期大学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/11 08:24 UTC 版)

概観

正門前

大学全体

  • 産業技術短期大学は、兵庫県尼崎市内にある日本の私立短期大学技術者育成をねらいに1962年昭和37年)一般社団法人日本鉄鋼連盟(鉄鋼業界[1])の発起により開学。
  • 産業界との熱い信頼関係により、新時代に対応した「量より質の教育を推し進める技術者育成」を重要視している[2]
  • 全国で唯一4つの工学科を備えた総合技術系短期大学であり、兵庫県で唯一の工科系短期大学である[3]
  • 4年制大学(専門分野の知識を学問的に習得)と専門学校(職業に必要な技術を習得)の両方の特徴をあわせ持ち、短期間で知識と技術をバランス良く身につけることを狙いとしている[4]
  • 大阪神戸間にある都市型学園として、広大で敷地全体が豊かな緑に包まれたゆとりのあるキャンパスを持ち、心も豊かで、広い視野を持ったエンジニアを育成している[5]
  • 2017年3月に一般財団法人短期大学基準協会における第三者評価の結果、「適格」認定を受けている[6]財務状況も良好である[7]

建学の精神(校訓・理念・学是)

  • 建学の精神
産業技術短期大学における建学の精神は「鉄鋼業並びにその関連産業はもとより、広くその他の産業界等の将来を担いうる学力と識見を備えた技術者を育成する」となっている[2]
  • 設立の根本理念
「企業は人なり」といわれるように、企業経営にはヒューマンリレーション[8]が最も大切であり、従業員の資質を高めるには、企業内訓練(OJT)と共々高度な学校教育が必要である。そこで、産業界(鉄鋼業)自らが大学を設置して、業界の中堅技術者を育成すると共に、一般社会の優秀な青年の教育にも貢献していくことが、産業界(鉄鋼業)の繁栄にも繋がるものと確信した。この信念が設立の根本理念である[9]
  • 大学名称の由来(使命)
産業技術短期大学という名称は、「産業」を支える根幹となる「技術」を身につけた人材を短期間で育成し、広く社会に供給する使命を担っている、という観点からつけられた[5]
  • 大学名称に込められた理念
大学名称の「産業」部分には「産業社会のなかの豊富な経験と深い英知を教授」するという理念が、「技術」部分には「心豊かな人間形成と新時代の技術者の育成」を行うという理念が込められている[10]
  • 教育のねらい(教育理念)[2]
建学の精神から導き出された教育姿勢として、次の3つの教育理念を定めている。
ものづくりを中心として、科学技術立国をめざす我が国産業界の要望に対応した技術者教育」
「基礎学力の充実と実学重視の工学教育」
教養豊かで、視野の広い社会人としての人間形成教育」

学風および特色

社会人学生との共学

  • 産業界(鉄鋼業界)が設立
産業技術短期大学は、1962年(昭和37年)に産業界(鉄鋼業界)が創った、企業派遣の社会人学生と共に学ぶ大学である[2]
鉄鋼業界(一般社団法人日本鉄鋼連盟)により設立されたため、主に日本製鉄JFEスチール神戸製鋼所等の鉄鋼会社をはじめとする産業界から派遣された若手・中堅層[11]社会人(企業派遣)学生が全学生の約2割の規模で在学している[12][13]
社会人学生は、キャリア形成のために、充実したOFF-JTを受けることを目的として派遣されている[14]
  • 人間性豊かな人材を育成
「社会人学生の人生経験や企業経験と、高校卒業後すぐに入学した新卒学生の柔軟な発想の相乗効果により、お互いが人間性豊かな技術者に成長すること」を教育目標の一つとしている[15][16][17]。一度社会を経験した者は、学ぶことがいかに大切であるかということを身にしみて感じており、知識を得ることに対して意欲的である。また、勉学だけでなく、学生の自主活動である「体育祭」「飛翔祭(大学祭)」「クラブ活動」なども、企業派遣の社会人学生が在学することで一層充実したものとなり、学生生活を豊かに彩っている。
社会人学生との共学により、「授業中はクラスメイト、授業が終われば人生の先輩後輩」となり、語らいを通じてお互いに、知識、協調性、責任感、人格を育み、学びあえる環境である[2]
このような全国各地から多数集結する企業派遣の社会人学生と、高校から進学した学生とが同じ机で学ぶ姿は、全国でも本学だけといえる[2]ほど珍しい、産業技術短期大学ならではの特色である。
  • 産業技術短期大学への社会人学生派遣企業(建学の精神・設立の根本理念への賛同企業)
日本製鉄JFEスチール神戸製鋼所日鉄日新製鋼日立金属大同特殊鋼日本製鋼所愛知製鋼東洋鋼鈑中山製鋼所山陽特殊製鋼トピー工業日本冶金工業淀川製鋼所三菱製鋼クボタ不二越大平洋金属中央電気工業日本高周波鋼業新日本電工住友電気工業住友精密工業大阪製鐵川崎重工業共英製鋼合同製鐵新関西製鐵神鋼電機JFEプラントエンジコベルコ建機ダイキン工業中部鋼鈑日鐵鉱業日鉄建材日立造船大阪チタニウムテクノロジーズ東洋製罐ポスコ中国鋼鉄 他多数。

  1. ^ 従業員数約19万6千人・粗鋼生産量1.04憶トン。『日本の鉄鋼業』(日本鉄鋼連盟、2019年)による。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 『産業技術短期大学大学案内2021』(産業技術短期大学、2020年)
  3. ^ 『兵庫県唯一の工科系短期大学』兵庫県教育新聞記事(2007.6.11)
  4. ^ a b c 『産業技術短期大学大学案内2018』(産業技術短期大学、2017年)
  5. ^ a b c d e 『産業技術短期大学大学案内2020』(産業技術短期大学、2019年)
  6. ^ 『平成28年度第三者評価』財団法人短期大学基準協会(2017.3)
  7. ^ 『私立大財務ランキング』週刊東洋経済記事、東洋経済新報社(2012.10.27) 全国597の私立大学法人財務力ランキングによると、産業技術短期大学は総合11位。
  8. ^ =human relations・企業組織において人と人との間に働く関係。
  9. ^ a b c d e f g h i j 『令和元年度産業技術短期大学自己点検・評価報告書』(産業技術短期大学、2019年)
  10. ^ 『産業技術短期大学大学案内2010』(産業技術短期大学、2009年)
  11. ^ 『日本の鉄鋼業』(日本鉄鋼連盟、2016年)
  12. ^ a b c 『産業技術短期大学大学案内2019』(産業技術短期大学、2018年)
  13. ^ 『実践経営哲学』(PHP研究所、1978年) 業界挙げての人材育成の必要性について、本著では、「事業は人なり」、「経営においては、まず何よりも人を育てていかなければならない。単に仕事ができ、技術が優れている人ではだめで、『人間として社会人として立派な人』を育てなければ企業として発展しない」という考え方が述べられている。
  14. ^ 『経営労働政策特別委員会報告』(日本経済団体連合会、2020年) 本報告では、日本における社員のキャリア形成のためのOFF-JTについて、(鉄鋼業界と産業技術短期大学の取り組みのように)産学が連携し、「OJTとの連動性を重視した多様なプログラムを用意し、自己に最も適したメニューを社員自らが選択できるようにする必要がある」また、「学び直すことで新たな知識やスキルを身につけるリカレント教育が重要となる。」と指摘している。
  15. ^ a b c d 『進学辞典2010』(リクルート、2010年)
  16. ^ 『産業技術短期大学年次報告書』(産業技術短期大学、2009年)
  17. ^ 『産業技術短期大学大学案内2017』(産業技術短期大学、2016年)
  18. ^ 『メイド・イン・ジャパン-日本製造業変革への指針-』ダイヤモンド社(日本インダストリアルパフォーマンス委員会編、1994) 本著では、製造現場における知識創造と人材の多機能育成政策・綿密な能力開発策のひとつとして、「企業内選抜を経て中堅技術者への昇進に結びつく産業技術短大への派遣」が採りあげられている(=オフ・ザ・ジョブ・トレーニング・OFF-JT)。
  19. ^ a b 『産業技術短期大学五十年のあゆみ』(学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学、2012.4.25)
  20. ^ 同著では、「鉄鋼業自らが大学を設立して業界の技術者を養成するとともに、一般社会の優秀な青年の教育にも貢献していくことで、社会とともに鉄鋼業の繁栄を目指す」という高い志と壮大な根本理念が明らかにされている。
  21. ^ 50周年記念式典は、2012年10月27日に尼崎市総合文化センター(アルカイックホールオクト)及び都ホテルニューアルカイックにおいて、約400名の関係者を招いて行われた。
  22. ^ a b 「ものづくり創造工学科」の学生募集停止について | お知らせ | 産業技術短期大学”. www.sangitan.ac.jp. 2022年8月4日閲覧。
  23. ^ a b c d e f 出典:『全国学校総覧
  24. ^ a b c 昭和38年度版p30
  25. ^ 昭和47年度版p43
  26. ^ 昭和61年度版p65
  27. ^ 昭和63年度版p67
  28. ^ 1994年度版p79
  29. ^ a b 『尼崎経済白書(平成28年度版)』尼崎市(2017.3)
  30. ^ 『蚕業技術短期大学 新日鐵住金・和歌山で製鉄所見学を実施』産業新聞記事(2017.6.16)
  31. ^ 電気電子工学科では、卒業後に実務経験をつめば第二種および第三種電気主任技術者が取得できる。第二種電気工事士の筆記試験および各種工事担任者の一部筆記試験が免除される。第二級陸上特殊無線技士および第三級海上特殊無線技士が卒業後に申請のみで免許される。
  32. ^ 一例として、『JFE21世紀財団 大学助成の贈呈式開催』鉄鋼新聞記事(2018.12.6)
  33. ^ 『空飛ぶ円盤 人命救え』神戸新聞記事(2013.1.12)
  34. ^ 『名車ロータス EVに変身 産業技術短大生ら』産経新聞記事(2013.12.11)
  35. ^ 『米軍断念 飛んでみせます』読売新聞記事(2013.12.11)
  36. ^ 『空飛べ 命の円盤 災害時 フワリ救援 産業技術短大』毎日新聞記事(2013.12.13)
  37. ^ 『英国の名車 EVに改造 産業技術短大生ら』読売新聞記事(2013.12.18)
  38. ^ 『災害救助舞い上がれ 産業技術短期大学 垂直離着陸機 進む開発』産経新聞記事(2014.3.9)
  39. ^ 一例としては、「Ene-1 GP SUZUKA」(鈴鹿サーキット)に参加し、大学・高専・専門学校部門で優勝している(2011.8.7)。ソーラーラジコンカー耐久レース(サンシャイン松山)に参加し、一般部門で優勝している(2011.8.20)。サイエンス・インカレ(千葉)に参加し、空飛ぶ絨毯(じゅうたん)プロジェクトが特別賞を受賞している(2013.3.2)
  40. ^ 『尼崎・産業技術短大生 世界初ガソリン車再現』読売新聞記事(2015.12.4)
  41. ^ 「ヒト型ロボットコンテスト」では、学生が奨励賞を受賞している(2011.11.6)。
  42. ^ 一例として、『阪大研究インターンシップ発表会開催 産業技術短大』産業新聞記事(2017.9.19)
  43. ^ 一例として、『産業技術短期大学 ものづくりシンポ開催』産業新聞記事(2018.10.23)・『3Dプリンター活用シンポ開く 産業技術短期大学』日刊工業新聞記事(2019.11.8)
  44. ^ 『大阪大学大学院研究インターンシップ 産業技術短大発表会を開催』産業新聞記事(2018.10.3)
  45. ^ 2009年9月13日には、同窓会45周年記念祝賀会が、大学講堂において開催された。
  46. ^ 『尼崎観光ガイド』尼崎市(2012)
  47. ^ 『尼崎担う人材を 産業技術短期大学』毎日新聞記事(2009.3.29)
  48. ^ 『産業技術短大 卒業生に無償授業』毎日新聞記事(2010.5.7)
  49. ^ 『産業技術短大 地元OB無償再教育』日刊工業新聞記事(2010.5.11)
  50. ^ 『新型風車を開発-産業技術短期大学 新型風車の試作機を公開』朝日新聞記事(2002.2.16)
  51. ^ 『都市型の風力発電機開発-尼崎工業会と産業技術短期大学』神戸新聞記事(2002.2.16)
  52. ^ 『風力発電システム 産業技術短期大学 尼崎市役所で実証』日刊工業新聞記事(2009.7.14)
  53. ^ 『産業技術短期大学 尼崎経営者協会と連携企画』産業新聞記事(2017.6.15)
  54. ^ 『小学生殺到 産業技術短期大学が工作教室』日刊工業新聞記事(2009.7.24)
  55. ^ 『夏休みものづくり体験』読売新聞記事(2015.7.15)
  56. ^ a b 『産業技術短期大学大学案内2016』(産業技術短期大学、2015年)
  57. ^ 『産業技術短期大学年次報告書』産業技術短期大学(2011)
  58. ^ 『村野工高と産技短大連携』読売新聞記事(2010.6.30)
  59. ^ 『「高大一貫」で技術者養成』神戸新聞記事(2010.6.30)
  60. ^ 『鉄鋼学園 産業技術短期大学 創立50周年』鉄鋼新聞記事(2012.10.26)






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