猩猩 民俗芸能

猩猩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/09 07:08 UTC 版)

民俗芸能

鳥取県境港市水木しげるロードに設置されている「麒麟獅子と猩猩」のブロンズ像
有松天満社例祭に登場する猩々(愛知県名古屋市緑区、2009年(平成21年))。子供の頭を撫でている。

特に日本では、各種の説話や芸能によってさまざまなイメージが付託されて現在に及んでいる。しかし、伝説のため、さまざまな説がある。七福神の一人として寿老人の代わりに入れられた時代もある[11]

地方色

宮城県岩手県山梨県富山県兵庫県和歌山県鳥取県山口県[要出典]など各地の伝説昔話に登場する。江戸中期に甲府勤番士の著した地誌書『裏見寒話』では、山梨県の西地蔵岳で猟師が猩猩に遭って銃で撃った話があるが、そのほかの地域では猩猩はほとんど海に現れている。

富山県の氷見市新湊市(現・射水市)の海に現れるという猩猩は、身長1メートルほどで、船に上がってきて舳先に腰をかけるという。ときには6、7匹も乗り込んでくるが、船乗りが驚いて騒いだりすると猩猩は船をひっくり返してしまうため、船乗りは黙って船底に打ち伏したという。

山口県屋代島(周防大島)でいう猩猩は船幽霊のように語られており、船に対して海底から「樽をくれ」と声をかけ、樽を投げ込まないと祟りがあるが、樽を投げ入れると船に水を入れられて沈められてしまうため、樽の底を抜いて投げ込んでやるという[51]

猩々祭り

猩々祭りは旧東海道鳴海宿を中心とした地域で行われる。猩々人形が子供達を追いかけ、大きな赤い手でお尻を叩こうとする。叩かれた子は夏病にかからないという。こういった風習は愛知県名古屋市緑区を中心とする地域(名古屋市南区東海市大府市豊明市など)に見られ、この地域の祭礼には、猩猩が欠かせなものとなっている。最近はお尻を叩かず、頭を撫でる。猩々人形は赤い顔の面と上半身分の竹枠組みで出来ておりその上から衣装で覆うもので、大人がこれをかぶると身長2メートル以上の巨人となる。


注釈

  1. ^ [1]『本草綱目』(p.448)にも本(もと)は「狌」と書き音は「セイ」であるとするが、特に「猩々(セイセイ)」などとまでは表記しない、一方、 Unschuld訳 2021 p. 920 は本来の字が「狌」で、読みが sheng であるという李時珍の註にしたがい、猩々を"sheng sheng"と読ませる(通常は xing xing)。
  2. ^ ちなみに日本でも猿を二足の観点から、古くは木の実を取る「このみどり」、高く声上げる様を呼んでいると「呼子鳥」(よぶこどり)と、鳥類のように呼び表すことがあった。[要出典]
  3. ^ 今の日本の一斗(18リットル)でなく、晋代の一斗であれば2リットル量。
  4. ^ ラテン語原文は chinchin で[34]妹尾は「チンチン」と訳すが、フランス読みは「シンシン」であり、猩々の中国読み(ウェード・ジャイルズ式表記)hsing-hsing[29] とも近い。

出典

  1. ^ 鈴木訳 1931.
  2. ^ a b c 李時珍 1782『本草綱目 (四庫全書本)』「巻51 =獸之四, 猩猩」; 鈴木訳 1931, pp. 448–451
  3. ^ a b c d e f g 李時珍 1596『本草綱目』「獸之四 猩猩」、英訳Unschuld訳 2021, pp. 920–922
  4. ^ "猩々(動物)". 日本大百科全書. コトバンクより2021年1月31日閲覧
  5. ^ a b "猩猩". 世界大百科事典. コトバンクより2021年1月31日閲覧。世界大百科事典 第2版、平凡社
  6. ^ Unschuld英訳では"orangutan"[3]、鈴木訳では旧学名Simia satyrus, Linneを併記(ただし"l"で誤記)[2]
  7. ^ 王冬蘭 2005, p. 148.
  8. ^ 『禮記』:"鸚鵡能言、不離飛鳥、猩猩能言、不離禽獣 (鸚鵡は能く言して飛鳥を離れず、猩々は能く言して禽獣を離れず)"
  9. ^ 『十誦律』第1巻、動物を二足・四足・多足・無足・と種類分け。第19巻に猩々の分類。
  10. ^ a b 鈴木訳 1931, pp. 448–449.
  11. ^ a b c 喜田貞吉福神研究』日本学術普及会、2010 3、1935頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1452499/135  p. 80:"元禄の合類節用には、寿老人の代りに猩々"、p. 83 :対照表、pp. 261–264 「福神としての猩々」の章; 「七福神の成立」 『民族と歴史』三巻一号、1920年1月
  12. ^ 「和名抄」、「爾雅」注を引き"能言獣也"とする[11]
  13. ^ 『淮南子』氾論訓。「猩猩知往而不知来」
  14. ^ 大槻磐水蘭畹摘芳』《巻三》河内屋太助、大阪、1817年、21葉裏–28葉表頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2555532/23 
  15. ^ 附属図書館 > コレクション > 特別展示会 > 2011年:総合図書館貴重書展 > 展示資料一覧 > 動物”. 東京大学 (2011年). 2022年9月16日閲覧。
  16. ^ 山田勝美論衡』《上》明治書院〈新釈漢文大系 68〉、1976年、374頁https://books.google.com/books?id=tBMYAQAAMAAJ&q=猩々 
  17. ^ 『淮南子』高誘注:"猩猩北方(南方の誤り)獣名、人面獣身黄色、禮記曰、猩猩能言不離禽獣、見人往走、則知人姓字、又嗜酒"[16]
  18. ^ 王冬蘭 2005, p. 132.
  19. ^ 植木 1983, p. 148.
  20. ^ 木村晟『塵芥』における『下学集』の享受について (下)」『駒澤國文』第42号、駒澤大学文学部国文学研究室、119頁、2005年2月http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/17660/ 
  21. ^ 『唐国史補』では屐(木靴)であるが、本来は靴の木底の意だったと説かれる[19]。『本草綱目』では草屐とつくり、サンダル(sandal)と英訳されている[3]。室町時代の『下学集』には「履」の字で伝わる[11][20]
  22. ^ 唐国史補”. 中國哲學書電子化計劃. 2022年8月30日閲覧。 “猩猩者好酒與屐,人有取之者,置二物以誘之。猩猩始見,必大罵曰:「誘我也!」乃絕走遠去,久而復來,稍稍相勸,俄頃俱醉,其足皆絆於屐,因遂獲之”
  23. ^ 王冬蘭 2005, p. 134.
  24. ^ 植木 1983, p. 306.
  25. ^ Zheng, Jinsheng; Kirk, Nalini; Buell, Paul D. et al., eds. (2018), Dictionary of the Ben Cao Gang Mu, Volume 3: Persons and Literary Sources, University of California Press, p. 375, ISBN 9780520291973, https://books.google.com/books?id=DeNDDwAAQBAJ&pg=PA375 
  26. ^ 松浦静山巻四 〇前編第廿一巻に..」『甲子夜話』《続篇第一》國書刊行會、1911年、60–63頁https://books.google.com/books?id=CRmDAezl_cYC&pg=PP77 。寛政四年 (1792年)、オランダ船が献上した「ヲランウータン」
  27. ^ 大林太良日本文化の五つの源流.-日本民族起源論と岡正雄学説」『歴史と人物』通号70:特集 日本人はどこから来たか、中央公論社、1977年6月、169頁。 
  28. ^ 榎 1992, p. 297.
  29. ^ a b Guillaume de Rubrouck (1900), The Journey of William of Rubruck to the Eastern Parts of the World, 1253-55.. with two accounts of the earlier journey of John of Pian de Carpine, Hakluyt Society, pp. 199–200, https://books.google.com/books?id=1Vo_AQAAMAAJ&pg=PA200 
  30. ^ 常璩『華陽国志』巻四南中志永昌郡の条[28]。ロックヒル訳註(『リュブルック東遊記』)も言及[29]
  31. ^ a b c リュブルックリュブルック東遊記妹尾韶夫 (訳)、文松堂書店、1944  7、177–179頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1916671/95 
  32. ^ 馬端臨三二九巻。妹尾の註256による[31]
  33. ^ 妹尾の註254[31]
  34. ^ Michel, Francisque; Wright, Thomas, eds (1839). Voyage en Orient du Frère Guillaume de Rubruk. 4. Arthus-Bertramd (Société de Geographie). p. 328. https://archive.org/details/recueildevoyages04soci/page/328/mode/2up 
  35. ^ a b c 狂言「猩々」。和泉流三宅派南大路家旧蔵本(江戸末期)、『狂言集成』(1931年)所収[37]
  36. ^ a b 飯塚恵理人<翻刻>筑波大学附属図書館所蔵 西村本『間之本』(A冊)」『椙山国文学』第18号、椙山女学園大学、1994年、71-118頁、CRID 1050001202952499840ISSN 0385-9614 
  37. ^ 王冬蘭 2005, pp. 149–150.
  38. ^ 狂言「猩々」。大蔵流西村本『間之本』(江戸初期)[36]
  39. ^ 寺島良安「四十 寓類・怪類:猩猩」『和漢三才図会 : 105巻首1巻尾1巻』《(全81冊中)第27冊》1712年、巻之40、13葉表-13葉裏https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2596374/16 
  40. ^ 寺島良安「猩猩」『和漢三才図会』 6巻、島田勇雄; 樋口元巳; 竹島淳夫(訳注)、平凡社、1985年、148–149頁https://books.google.com/books?id=2aZIAAAAMAAJ&q=猩々。"(本文に)黄毛といって赤髪とはいっていないのに、今もっぱら紅髪としている。また猩猩緋という毛織物があるが、これと偽って称しているのであろうか。"。 
  41. ^ 杤尾武「日本における山海経図―山海経絵と山海異物」『東洋学報』第91巻、第4号、535–539頁、2010年https://toyo-bunko.repo.nii.ac.jp/records/6251 
  42. ^ a b c 松田存能・狂言』(3版)ぎょうせい、1990年、237–238頁。ISBN 9784324018149https://books.google.com/books?id=EMg1AQAAIAAJ&q=猩々 
  43. ^ 山口.
  44. ^ 山中 1999, p. 99.
  45. ^ 小山 & 佐藤 1987, p. 204.
  46. ^ 喜田 1920, pp. 262–263.
  47. ^ 山田安栄、伊藤千可良、文伝正興 編『宴曲十七帖: 附謡曲末百番吉田東伍; 野村八良 (校訂)、国書刊行会出版会、1912年、460–461頁https://books.google.com/books?id=kYdDAAAAIAAJ&pg=PP494 
  48. ^ 真壁仁黒川能: 農民の生活と芸術』日本放送出版協会、1971年、91–95頁https://books.google.com/books?id=4t8sAAAAMAAJ&q=猩々 
  49. ^ 真壁 1971, p. 29.
  50. ^ 真壁 1971, p. 32.
  51. ^ 村上健司編著 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、189頁。ISBN 978-4-620-31428-0


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