熱重量分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/10 21:23 UTC 版)
熱安定性
TGAは材料の熱安定性評価に使用できる。所望する温度範囲で、もし熱的に安定であれば、重量変化は観測されない。TGAの測定チャートに勾配がほとんどないか、全く無い場合は、重量減少は無視できるとみなされる。 TGAにより材料の使用上限温度が示され、その温度を越えるとその材料は分解し始める。
TGAは、セラミックおよび熱的に安定なポリマーの分析を含む幅広い用途に適用できる。セラミックは通常、高い温度域まで熱的に安定であるため、分解する前に溶融する、このため、TGAは主にポリマーの熱安定性を調べるために使用される。ほとんどのポリマーは200 ℃より低い温度で溶融または分解する。しかし、構造変化または強度低下せず、空気中で少なくとも300 ℃、また不活性ガス中で500 ℃の温度に耐えられる熱安定性ポリマーがあり、これらはTGAで分析できる[6]。例えば、ポリイミドのカプトンは、400 ℃の空気中で100時間保持したときの重量減少は、10%未満である[6]。
TGAを使って、高性能繊維の熱安定性の評価をすることができる。TGA分析では、ポリベンゾオキサゾール(PBO)が、4種の繊維の中で(訳注:原文には2種の繊維しか示されていない)、500 ℃までの最も高い熱安定性を示す。超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)は熱安定性が最も低く、200 ℃で分解し始める。重量減少の開始点は、重量減少曲線に一次微分曲線をプロットするとよりはっきり見出される。防弾ベストで使用される高性能繊維は、弾丸からベスト着用者を保護するために機械的に充分に強くなければならない。繊維の熱的および光化学的劣化は、ベストの機械的特性を低下させ、防護機能を失わせる。従って、熱安定性はベストを設計する際の重要な特性である[7]。
加熱による物質の重量減少には次のように3通りある、化学反応、吸着物質の放出、分解である。 これらの全ての現象は、その材料がもはや熱的に安定でないことを示している。 前の例で示した4種の繊維(訳注:原文には2種の繊維しか示されていない)のほかに、Terlonは吸着物質の減少のみを示すが、100 ℃を超えてから減少するので、その減少はほとんど水分とみられる。TGA分析は空気中で行われるので、酸素は有機繊維と反応し、最終的に完全に分解され、100%の重量減少を示す。TGA分析で使用される気体と試料の熱安定性は密接に関係している。 PBOは空気中で加熱すると完全に分解し、窒素中で加熱すると約60%の質量を保持する[8]。このように、PBOは、窒素中では630 ℃まで熱的に安定であるのに対し、空気中ではほぼ完全に分解される。
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