沖縄そば
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/16 03:36 UTC 版)
「沖縄そば」という名称について
上記の通り、沖縄県では沖縄そばは伝統的に食べられてきた食品であり、単に「そば」と言えば沖縄そばをさすことがほとんどである。
1976年に公正取引委員会が「生めん類の表示に関する公正競争規約」の「『そば』とは、そば粉30%以上、小麦粉70%以下の割合で混合したものを主たる原料とする」という定義に抵触するとして、「沖縄そば」の名称の使用に問題があるとする指摘を行った。なお、「公正競争規約」自体は法律ではないが、景品表示法の規定に基づく業界団体等による自主規制ルールであり一定の拘束力を持つ[13][14][15][16]。
しかし県内で一貫して「そば」と呼ばれてきた慣習を変えることは困難として、沖縄生麺協同組合等が中央と粘り強い交渉を行った。これにより1977年には通称としての「沖縄そば」が県内のみの使用に限り許可された。その後、1978年10月17日に全国生めん類公正取引協議会の「生めん類の表示に関する公正競争施行規則」別表の「名産・特産・本場等の表示」に「本場 沖縄そば」が追加承認され、「沖縄県内で生産」「仕上げに油処理を行うこと」などのいくつかの条件の下に特殊名称として認可された。これ記念して沖縄生麺協同組合が10月17日を「沖縄そばの日」とした[17][18][19][20]。1976年の通達から実に2年8ヶ月を要しての正式承認だった[21]。
沖縄そばの定義
このときに定められた「本場 沖縄そば」の定義は以下の通りである[22]。
- 沖縄県内で製造されたもの
- 手打式(風)のもの
- 原料小麦粉中のタンパク質含有量は11%以上かつ灰分は0.42%以下
- 加水量 小麦粉重量に対し34%以上~36%以下
- かんすい 2Bh~4Bh
- 食塩 5Bh~10Bh
- 熟成時間 30分以内
- めん線 めんの厚さ1.5mm~1.7mm 切刃番手 薄刃10番~12番。
- 手もみ 裁断されためん線は、ゆでる前に必ず手もみ(工程)を行う。
- ゆで水のPHは8から9であること。
- ゆで時間 約2分以内で十分可食状態であること。
- 仕上げに油処理が施されていること。
なお、1978年10月17日に許可されたのは「本場 沖縄そば」という特殊名称のみであり、「沖縄そば」という呼称が県外でも使用可能な一般名称として認められたわけではなかった。「沖縄そば」の県外への移出は、少し遅れて1987年4月5日に認可されたが、名称問題については不透明な部分が残り、1995年に設立された沖縄県物産公社のアンテナショップにおいても、沖縄そばという名称を避けて「沖縄ラーメン」というメニュー表記で提供されていた例がある。
現在では「生めん類の表示に関する公正競争規約」において「中華めん」の一名称として認められており、かんすい(唐あくを含む)を用いた麺に対しては、産地や製法などの制約なく沖縄そばの名称を使用してよいことになっている(つまり、現在は「ラーメン」や「中華そば」「ちゃんぽん麺」等と「沖縄そば」の間に定義上の違いは存在しない)。
2006年には地域団体商標として「沖縄そば」が認定された。指定商品は「小麦粉を使用した沖縄県産のそばのめん」である。よって原則として[注釈 4]、商標権者である沖縄生麺協同組合の許可を得ずに「沖縄そば」の名称は使用できない。
注釈
出典
- ^ “農山漁村の郷土料理百選 沖縄”. 一般財団法人農村開発企画委員会. 2013年10月2日閲覧。
- ^ “沖縄そばの日 パンフレット”. 沖縄県生麺協同組合. 2024年1月14日閲覧。
- ^ “最多333杯 高橋信哉さんを「親方」に認定。県外からの参加者も入賞”. (2017年4月11日)
- ^ “「沖縄そば」のルーツ(由来)を知りたい。”. レファレンス協同データベース (2016年9月2日). 2018年9月1日閲覧。
- ^ “「沖縄そば」について、そば屋の始まりを知りたい。”. レファレンス協同データベース (2016年8月31日). 2018年9月1日閲覧。
- ^ “ところで、沖縄の年越しそばはやっぱり「沖縄そば」なの?|”. @DIME アットダイム. (2018年12月30日). オリジナルの2020年12月31日時点におけるアーカイブ。
- ^ “地域食品ブランド表示基準 沖縄そば(茹麺)(おきなわそば・ゆでめん)” (PDF). 食品産業センター. 2018年9月1日閲覧。
- ^ “豚のあばら肉がつんと盛り付け 定番そばの考案者、92歳現役 きょう沖縄そばの日”. 沖縄タイムス. (2021年10月17日) 2021年10月17日閲覧。
- ^ “すばの細道”. さとなお. 2019年10月15日閲覧。
- ^ “~沖縄焼きそば~沖縄料理”. アジア料理を楽しむ会. 2018年9月1日閲覧。
- ^ “グスーヨー”. 千歳沖縄クラブ. 2006年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月22日閲覧。
- ^ “沖縄の焼きそばは少し違う”. デイリーポータルZ (2018年7月13日). 2018年9月1日閲覧。
- ^ “沖縄そばの日”. 沖縄生麺協同組合. 2013年10月2日閲覧。
- ^ “あの日の沖縄 1978年10月17日 「沖縄そばの日」の由来”. 沖縄県公文書館. 2018年9月1日閲覧。
- ^ “そば粉ゼロでも「沖縄そば」? 名称死守に秘話も”. NIKKEI STYLE. (2014年6月14日) 2018年9月1日閲覧。
- ^ “沖縄のソウルフード、消滅の危機だった…復帰で直面した本土ルール”. 読売新聞. (2022年5月15日). オリジナルの2022年5月15日時点におけるアーカイブ。
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- ^ モモト編集室(2017)p32
- ^ “本場沖縄そばの定義”. 沖縄生麺協同組合. 2013年10月2日閲覧。
- ^ a b 安井大輔 (2012年9月21日). “カンポ・グランデの沖縄そばについて”. サンパウロ人文科学研究所. 2021年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月1日閲覧。
- ^ a b “VI-2 Feira Central – 沖縄ソバ” (pt,ja). Terra de Esperança – Kibo no Daitsi – 希望の大地. Campo Grande, Brasil: ブラジル国マットグロッソドスール州カンポグランデ市沖縄県人会. (2019). pp. 558–560. オリジナルの2021-07-27時点におけるアーカイブ。 (ホームページ)
- ^ 松本, 浩治 (2006年7月5日). “沖縄そば”. みんなでつくる移民百年祭. 2021年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月27日閲覧。 “2001年9月サンパウロ新聞掲載”
- ^ イゲット千恵子 (2017年6月20日). “徒手空拳のハワイ起業から製麺一筋で全米進出を果たす ゲスト -夘木栄人(サン・ヌードル社長)前編”. 経済界. 2018年9月1日閲覧。
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