欧州連合域内排出量取引制度 フェーズII

欧州連合域内排出量取引制度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/01 20:05 UTC 版)

フェーズII

参加国 フェーズI
における
制限量
2005年に
修正された
排出量
2008年-
2012年の
制限量案
2008-
2012年の
許容量
 オーストリア 33.0 33.4 32.8 30.7
ベルギー 62.08 55.58 (a) 63.33 58.5
 チェコ 97.6 82.5 101.9 86.8
フランス 156.5 131.3 132.8 132.8
ドイツ 499 474 482 453.1
ギリシャ 74.4 71.3 75.5 69.1
アイルランド 22.3 22.4 22.6 21.15
 ラトビア 4.6 2.9 7.7 3.3
 リトアニア 12.3 6.6 16.6 8.8
ルクセンブルク 3.4 2.6 3.95 2.7
マルタ (d) 2.9 1.98 2.96 2.1
オランダ 95.3 80.35 (b) 90.4 85.8
ポーランド 239.1 203.1 284.6 208.5
スロバキア 30.5 25.2 41.3 30.9
スロベニア 8.8 8.7 8.3 8.3
スペイン 174.4 182.9 152.7 152.3
 スウェーデン 22.9 19.3 25.2 22.8
イギリス 245.3 242.4 (c) 246.2 246.2
合計 1784.38 1646.51 1790.84 1623.85
単位:100万トン


出典:EUプレスリリース IP/07/459 (2007年4月2日): "Emissions trading: Commission adopts decision on Austria's national allocation plan for 2008-2012"
この表ではフェーズ II で対象に追加された排出施設および排出量を含めていない

  • (a) 2005年に除外された排出施設を含む。
  • (b) 2005年の修正排出量には同年に除外された施設を含んでいない。ただし2008年から2012年の期間ではこれらの施設が再び対象となり、その排出量はおよそ600万トンと見込まれている。
  • (c) 2005年の修正排出量には同年に除外された施設を含んでいない。ただし2008年から2012年の期間ではこれらの施設が再び対象となり、その排出量はおよそ3000万トンと見込まれている。
  • (d) キプロスおよびマルタは2004年5月にEUに加盟し、第1付帯議定書の対象に含まれていないが、独自にNAPを策定し、フェーズ II からEU ETSに参加している。

2008年から2012年のフェーズ II ではその領域が拡大されている。

航空部門を対象に加えることは、航空部門での排出量の規模とその急速な拡大ということから大きな変更点として捉えられており、これによってフェーズ II で1年あたりの二酸化炭素排出許容量の需要が1000万から1200万トンほど増加すると見込まれている。この需要増加については同時に、ロシアウクライナにおけるプロジェクトで共同実施クレジットの使用が増加することにつながると見込まれ、このため価格の上昇を抑制し、結果として1年を通しての二酸化炭素排出量の平均価格には大きな影響をもたらさないということになる[15]

欧州委員会は2012年以降の排出量取引制度について、すべての温室効果ガスを対象にし、また航空、海運、林業にも適用させたいとしている[16]。運輸部門において個人ユーザの数が多いということが複雑さをもたらすことにはなるが、燃料販売店に対するキャップ・アンド・トレード制か自動車メーカに対するベースライン・アンド・クレジット制での導入が見込まれている。

フェーズ II でのNAPは、その第1弾が2006年11月29日に発表され、2005年の排出水準と比べて平均でおよそ7%削減したものとなっている[17]

欧州委員会は、加盟国自身が提出していたNAP通りに削減が進んでいないとして、オーストリア、チェコ、デンマーク、ハンガリー、イタリア、スペインに対して調査手続きを開始した[18]

航空業界への影響

2012年より欧州に乗り入れる各航空会社へ適用する計画だが、各航空会社及びアメリカ、中国、インド、ロシアなどの各国政府も反発しており、新たな国際間の摩擦となりつつある。

  • 2011年6月に規制を巡り、アメリカ航空輸送協会とユナイテッド航空アメリカン航空などが不服をイギリスの裁判所に提訴し、同裁判所は欧州司法裁判所へ法解釈上の意見に当たる「先決裁定」を求めていたが2011年12月22日に同司法裁判所は2012年からの同制度の適用について違法性はないと判断。
  • 2012年1月にドイツのルフトハンザ航空は同制度による航空券の値上げを燃油サーチャージ追加して徴収する計画を発表。アメリカではデルタ航空が追加サーチャージを徴収し、他の米国航空会社も数社追随している。マレーシアのエアアジア Xは2012年3月末から順次、欧州線を休止することを発表。
  • 2012年2月に中国政府・民用航空局は中国大陸の各航空会社に欧州連合(EU)が行う温室効果ガスの排出権取引について「政府が許可しないかぎり、取引に参加することを禁止する」との通達を出した。
  • 2012年2月21日にロシアのモスクワで規制に反対している中国、米国、ロシア、インド、サウジアラビア、UAE、シンガポール、南アフリカ、ブラジル、アルゼンチン、日本を含む32カ国は協議を持ち、今回の規制に対し報復措置として欧州各国との航空協議の停止や欧州の航空各社に追徴課金、シカゴ条約第84条に基づきICAO規則による紛争解決の申立を行うなどを検討した模様でロシアは個別に欧州の航空各社のシベリア上空の飛行を制限することも検討していると発表。
  • 2012年3月には中国当局は欧州製エアバス機の購入を控えるよう各航空会社に働きかけていて45機程度差し止められたことが判明し、エアバス及びヨーロッパの主要航空会社、航空関連企業が連名でイギリス、フランス、ドイツなどの欧州各国政府首脳へ書簡を送付し、排出規制をめぐる対立の解決を求めた。
  • 2012年3月にインド政府は同国の航空会社に中国と同様に欧州連合(EU)が行う温室効果ガスの排出権取引について参加しないように要請する予定であることが判明。
  • 2012年11月12日 EUのコニー・ヘデゴー欧州委員(気候変動担当)は2012年1月にEUが一方的に導入し、アメリカ、中国、インド、ロシアなどの各国政府が反発し、EUの国際的孤立を深めた航空機の温室効果ガス排出規制措置を次期ICAO年次総会が行われる2013年秋まで一年間、一時凍結すると発表した。

  1. ^ Ellerman, Denny; Buchner, Barbara (2007). “The European Union Emissions Trading Scheme: Origins, Allocation, and Early Results”. Review of Environmental Economics and Policy 1 (1): pp. 66-87. doi:10.1093/reep/rem003. ISSN 1750-6824 (Online), ISSN 1750-6816 (Print). http://reep.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/1/1/66 2008年4月19日閲覧。. The European Union Emissions Trading Scheme Review of Environmental Economics and Policy 2007
  2. ^ a b Questions and Answers on the Commission's proposal to revise the EU Emissions Trading System EUプレスリリース MEMO/08/35, Brussels 2008年1月23日
  3. ^ UK Emissions Trading Scheme イギリス環境・食糧・地方省(英語)
  4. ^ ITL link, EU ETS review key for 2008 prices Carbon Finance 2008年1月9日
  5. ^ Directive 2003/87/EC of the European Parliament and of the Council OJ L 275, 25.10.2003, p. 32-46
  6. ^ Questions and Answers on Emissions Trading and National Allocation Plans for 2008 to 2012 欧州委員会プレスリリース MEMO/08/35, Brussels 2006年11月29日 (PDF形式)
  7. ^ Öko-Institut report: "The environmental effectiveness and economic efficiency of the EU ETS 世界自然保護基金 2005年11月9日 (英語)
  8. ^ a b NAPs 2005-7: Do they deliver? 欧州気候行動ネットワーク 2006年 (英語、PDF形式)
  9. ^ Q&A: Europe's carbon trading scheme 英国放送協会 2006年12月20日 (英語)
  10. ^ Carbon 2006 market survey ポイントカーボン 2006年2月28日 (英語、PDF形式)
  11. ^ a b c Analyse van de CO2-markt Emissierechten 2007年11月 (オランダ語)
  12. ^ Directive 2004/101/EC of the European Parliament and of the Council OJ L 338, 13.11.2004, p. 18-23
  13. ^ Questions & Answers on Aviation & Climate Change EUプレスリリース MEMO/05/341, Brussels 2005年9月27日
  14. ^ Iceland, Norway, Liechtenstein to join EU emissions trading system EU Business (フランス通信社配信) 2007年10月27日 (英語)
  15. ^ Including Aviation into the EU ETS: Impact on EU allowance prices ICFコンサルティングによるイギリス環境・食料・地方省および運輸省への報告書 2006年2月1日 (英語、PDF形式)
  16. ^ イギリス庶民院における欧州委員会環境担当委員スタブロス・ディマスの演説 EUプレスリリース SPEECH/05/712 2005年11月21日
  17. ^ a b Emissions trading: Commission decides on first set of national allocation plans for the 2008-2012 trading period EUプレスリリース 2006年11月29日
  18. ^ Member States' compliance with the Emissions Trading Scheme 欧州議会環境委員会 2006年11月27日 (英語、PDF形式)
  19. ^ Analysis of NAPs for the EU ETS Ecofys August 2004
  20. ^ Hotspot newsletter 気候行動ネットワーク 2006年3月 (英語、PDF形式)






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