機関銃 基本構造

機関銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/16 18:22 UTC 版)

基本構造

機関銃の代表的な基本構造は、尾筒部に銃身部、遊底・揺底部、撃発機構・銃尾部および照準具を組み付ける構造である[12]

尾筒部・銃尾部

自動機構

機関銃では、引金を引くことで送弾から撃発、撃発準備に至るまでの一連の作動工程が自動的に行われる。このための機構(自動機構)には下記のようなものがあり[13]、特に反動利用式とガス利用式が多く用いられる[12]。またオープンボルトクローズドボルトの選択がある。

反動利用式
発射時に銃に作用する反動力を用いて、まず遊底と銃身とが結合した状態で一定距離だけ後座させたのちに、遊底と銃身との結合を解き、遊底のみを更に動かすことによって、薬室開放の遅延と銃尾機構を作動させる方式[14]
ガス利用式
銃身にガス漏孔を設けて、発射薬ガスの一部を取り出し、その圧力によって銃尾機構を作動させる方式[14]
ブローバック
薬莢に加わるガス圧(包底圧)によって、直接に遊底を後退させ、銃尾機構を作動させる方式[14]。機関銃で使用する場合、強力な小銃弾を使用する必要上、遊底の開放時期を遅らせるための遅延機構を組み込んだ方式となる[14]
外部動力利用式
銃尾機構を作動させるためのエネルギーを外部から取り入れる方式であり、電気モータまたは油圧モータによって駆動される例が多い[14]。代表的な方式としてはガトリング式チェーン駆動式がある[14]

送弾機構

M13 リンクの弾帯を装着したM60機関銃

機関銃はリンクベルト付弾薬(弾帯)を射撃するものが多いが、小銃用と同様の弾倉を使用できるものもある[12]

撃発機構

通常の機関銃では、銃把・引金とともに、肩付射撃のための銃床を備える事が多い[15]。一方、車載機関銃やドアガンでは、これらの代わりに握把のみを有する物が多い[12]。握りによって射撃方向の操作を行い、引金を引くのではなく押金を押すことによって撃発させるものである[12]

銃身部

機関銃では連射を多用することから、銃身の加熱が問題になる。このため、第一次世界大戦以前の機関銃は水冷化されているものが多かったが、重量がかさむために、後には空冷が主流となった[16]

一般に、発射弾数が増えると銃身内面の摩耗が進行して銃腔などの寸法が大きくなり、初速が低下するため、その進行を抑制する手段として、銃身内面にクロムメッキを施すなどの対策が用いられている[12]。機関銃では特に連射性能を高めるために他の小火器よりも厚肉の銃身を使用する事が多く、また放熱フィンなどの構造を有する場合もある[12]

また予備銃身と交換可能な構造になっていることも多く[12]、200-500発程度の連射で交換するのが目安とされている[17]

照準具

機関銃(特に軽機関銃)では目標を直接捕捉して照準することが多いため、標準的には照門照星式照準器が装備されている。汎用機関銃の場合、軽機関銃として使用するときには近距離射撃のために照門を倒し、重機関銃として使用するときには遠距離射撃のために照門を立てて使用する[18]。また遠距離射撃のために望遠機能全天候での交戦のために暗視機能を備えた光学照準器が用いられることもある[19]

重機関銃(あるいは汎用機関銃を重機関銃として使用しているとき)であれば間接射撃も可能であり[19]迫撃砲で使うのと同じ照準器を使うことで、目標を直接視認できなくとも、所定の地域に対する射撃を行うことができる[18]。一方、対空機関銃として直接照準を行うために、環型照準具が装着されることもある[12]

脚架

軽機関銃や汎用機関銃などでは、尾筒部の前方などに二脚が組み込まれており、必要に応じてこれを使用して射撃時の姿勢を安定させる[12]。二脚には高さ調整ができるものが多い[12]

一方、重機関銃や、汎用機関銃をこれに準じて使用する場合には、三脚が使用される[12]。これには射角および射向を調整する機能を有するものもある[12]。例えばMG42を重機関銃として運用する場合に用いられたラフェッテ42では、射撃時の反動による銃の後退を利用して銃身を上下に振る機構が組み込まれており、前後に弾着をばらまくことで、縦深が深い扇型弾幕地帯を形成して、疎開隊形をとる敵歩兵をその弾幕に捕捉できるようにした[20]


注釈

  1. ^ Ellis 2008, pp. 18–36では「実際に製造されることはなかった」と述べているが、少数が製作されたともいわれ、北京市故宮博物院サンクトペテルブルク砲兵博物館で保管されている[24][25]

出典

  1. ^ 機関銃と機関砲はなにが違うの? 射撃の様子を口径順に並べてみた”. 乗りものニュース (2018年9月25日). 2021年7月3日閲覧。
  2. ^ 機関砲と機関銃の称呼区分廃止の件」 アジア歴史資料センター Ref.C01005020700 
  3. ^ 高須 1992.
  4. ^ 高須 1979.
  5. ^ 防衛省 2009, p. 21.
  6. ^ 床井雅美. "機関銃". 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2023年10月13日閲覧
  7. ^ 大波 2008, p. 78.
  8. ^ Manual of the Automatic Rifle (Chauchat), Drill – Combat – Mechanism”. War Department. 2015年11月17日閲覧。
  9. ^ Firearms - Guides - Importation & Verification of Firearms - National Firearms Act Definitions - Machinegun”. ATF. 2021年4月24日閲覧。
  10. ^ 令和2年版密輸入の動向(白い粉・黒い武器レポート) 参考資料” (PDF). 税関. 2021年5月6日閲覧。
  11. ^ MCWP 3-15.1 Machine Guns and Machine Gun Gunnery”. U.S. Marine Corps. 2021年4月24日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m 弾道学研究会 2012, pp. 791–799.
  13. ^ 弾道学研究会 2012, p. 760.
  14. ^ a b c d e f 弾道学研究会 2012, pp. 773–784.
  15. ^ 弾道学研究会 2012, pp. 771–772.
  16. ^ a b c d 床井 2006, pp. 18–21.
  17. ^ 大波 2008.
  18. ^ a b McNab & Fowler 2003, pp. 81–89.
  19. ^ a b McNab 2018, pp. 51–56.
  20. ^ a b c d e f g h i 樋口 2008.
  21. ^ a b c d e f g h 床井 2006, pp. 8–16.
  22. ^ a b c d e f Ellis 2008, pp. 18–36.
  23. ^ www.LeonardoDaVinci.net.. “Machine Gun by Leonardo Da Vinci”. 2021年5月25日閲覧。
  24. ^ 从前膛炮、子母炮到轮子炮” [From breech cannons, sub-cannons to wheeled cannons] (中国語). Palace Museum. 2024年6月16日閲覧。
  25. ^ Yefimov, Sergey Vladimirovich (2019). “Скорострельные Артиллерийские Орудия Первой Половины XVIII Века в Собрании Военно-Исторического Музея Артиллерии, Инженерных Войск и Войск Связи [Rapid-Fire Artillery Guns of the First Half of the 18th Century in the Collection of the Military Historical Museum of Artillery, Engineering and Signals Corps]” (ロシア語). Military-Historical Journal (2). https://cyberleninka.ru/article/n/skorostrelnye-artilleriyskie-orudiya-pervoy-poloviny-xviii-veka-v-sobranii-voenno-istoricheskogo-muzeya-artillerii-inzhenernyh/viewer. 
  26. ^ a b c Ellis 2008, pp. 45–57.
  27. ^ a b c d Ellis 2008, pp. 111–138.
  28. ^ Ellis 2008, pp. 57–74.
  29. ^ 岩堂 1995, pp. 783–789.
  30. ^ a b 岩堂 1995, pp. 796–811.
  31. ^ 加藤 2008.
  32. ^ Ellis 2008, pp. 141–192.
  33. ^ a b 金子 2013, pp. 154–159.
  34. ^ Ellis 2008, pp. 197–216.
  35. ^ a b 阿部 2015.
  36. ^ Ellis 2008, pp. 216–228.
  37. ^ 田村 2008.
  38. ^ a b ワールドフォトプレス 1986, pp. 70–77.
  39. ^ Ellis 2008, pp. 229–252.
  40. ^ 床井 2006, pp. 113–115.
  41. ^ a b Grant 2013, pp. 77–78.
  42. ^ McNab 2020, pp. 182–184.
  43. ^ 床井 2006, p. 293.
  44. ^ a b 床井 2006, p. 76.
  45. ^ 防衛研究所戦史研究センター 2014, pp. 299–318.


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